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XYZプリンティング、49,800円の3Dプリンタ「ダヴィンチ Jr.1.0」
~筐体サイズと重量がダヴィンチシリーズの約半分に、印刷品質は同等
(2015/4/17 13:17)
XYZプリンティングジャパン株式会社は4月16日、49,800円のパーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチ Jr.1.0」を発表した。
XYZプリンティングジャパンは、台湾XYZprintingの日本法人であり、2014年3月にパーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチ 1.0」を69,800円という低価格で販売を開始し、大きな話題となった。その後も、2色対応の「ダヴィンチ 2.0」や3Dスキャナ一体型の「ダヴィンチ 1.0 AiO」、PLA/ABS両対応の「ダヴィンチ 1.0A」、「ダヴィンチ 2.0A」、光造形方式の「ノーベル 1.0」と、次々に新製品を投入してきている。XYZprintingの3Dプリンタは、他社製品に比べて低価格かつ使い勝手が優れていることで定評があり、その主力製品であるダヴィンチシリーズは、個人ユースから大学や研究機関まで幅広く使われている。
ダヴィンチシリーズは、低価格かつ安定した造形が可能なことが魅力だが、筐体サイズが468×558×510mm(幅×奥行き×高さ)と、個人で使うにはやや大きいことが難点であった。今回登場したダヴィンチ Jr.1.0は、その名の通り、ダヴィンチシリーズの弟分にあたるパーソナル3Dプリンタであり、ダヴィンチシリーズの印刷品質や使い勝手のよさはそのままに、筐体サイズをコンパクトにした製品である。
1年以内に3Dスキャナや3Dペン、高級モデル、フードプリンタをリリースする予定
発表会ではまず、XYZprinting,Inc.会長兼XYZプリンティングジャパン株式会社代表取締役サイモン・シェン氏が登壇し、XYZprintingの2015年から2016年にかけての製品ロードマップを紹介。今回発表されたダヴィンチ Jr.1.0に続いて、今後1年以内に3Dスキャナや3Dペン、ダヴィンチの高級モデル、フードプリンタをリリースする予定を明らかにし、今後も積極的に製品開発を行なっていくことをアピールした。
また、先日開催されたボアオ・アジアフォーラム2015において、中国の主席や政府役人が中国での3Dプリンタ開発や活用の重要性について語ったと述べ、今後は中国でも3Dプリンタの普及が進むと指摘した。ガートナーによる2014年の3Dプリンタの出荷台数の調査結果は108,000台であり、XYZprintingのマーケットシェアは約30%になるとした。また、ガートナーは2015年の3Dプリンタの出荷台数予測は2014年の2倍の20万台になるとしているが、サイモン氏は、それはかなり控えめな予想であるとし、実際はもっと台数が増えるのではないかという見解を示した。
今回日本で正式に発表されたダヴィンチ Jr.1.0は、CES 2015で先行お披露目されていたのだが、XYZprintingはほかにも多数の新製品を発表し、さまざまなアワードを獲得している。サイモン氏は、ダヴィンチ Jr.1.0の登場により、3Dプリンタを誰もが簡単に楽しめる時代が来たと、力強く語った。
新たにSDカードスロットを搭載し、スタンドアロン動作が可能に
次に、XYZプリンティングジャパン株式会社ジェネラルマネージャー吉井宏之氏が、ダヴィンチ Jr.1.0の特長について、プレゼンテーションを行なった。まず、ダヴィンチ Jr.1.0の価格は49,800円であり、4月17日から予約販売を開始、正式販売は4月27日となる。
従来のダヴィンチシリーズは、フィラメントとしてABSまたはPLA(ダヴィンチ 1.0Aおよびダヴィンチ 2.0AがPLAにも対応)を利用していたが、ダヴィンチ Jr.1.0はPLA専用となる。フィラメントは従来のダヴィンチシリーズとは互換性がなく、600gで3,280円で販売される。なお、フィラメントカラーは、当初クリア、クリアイエロー、ブラックの3色が用意されるが、年内には12色までバリエーションを増やしていく予定だという。
フィラメントは、一般的なスプールに巻かれた状態となっているが、NFCチップが付属しており、これをフィラメントリールに装着することで、フィラメント情報を本体との間でやりとりする仕組みになっているため、サードパーティ製フィラメントは利用できず、専用フィラメントのみ利用可能だ。
ダヴィンチ Jr.1.0は、3Dプリンタの製品ポジショニングの中で最も下のカテゴリに属し、パーソナルやファミリーユーザーを対象とした製品であるが、積層ピッチを始めとする、基本的な性能はダヴィンチシリーズと同等である。本体のサイズは420×430×380mm(幅×奥行き×高さ)であり、従来のダヴィンチシリーズに比べて、容積はほぼ半分にまで削減されている。重量も12kgと、こちらも約半分になっており、1人でも簡単に設置できるサイズと重量になった。
積層ピッチは0.1/0.2/0.3/0.4mmで、最大造形サイズは150×150×150mm(幅×奥行き×高さ)である。ダヴィンチ 1.0の最大造形サイズは200×200×200mm(幅×奥行き×高さ)なので、一辺に付き50mm小さくなっているが、パーソナル3Dプリンタとしては十分な造形サイズである(100×100×100mm程度の製品も多い)。
ダヴィンチシリーズからの進化点としては、SDカードスロットを搭載したことが挙げられる。従来のダヴィンチシリーズは、PCとUSB経由で接続し、PCから出力用のスライスデータを本体に転送する必要があったが、ダヴィンチ Jr.1.0では、PC上のXYZwareを利用してSTLデータから変換したスライスデータをSDカードに保存し、そのSDカードを本体に装着することで、SDカードからデータを読み出して印刷することが可能になった。
ダヴィンチシリーズでも、スライスデータを全て転送した後は、PCの電源を落としたり、PCを外したりしてもそのまま印刷を行なうことができたのだが、ダヴィンチ Jr.1.0なら、PCと別の場所に本体を設置して使うことも簡単であり、より利便性が向上したと言える。
さらに、FDM方式の3Dプリンタの心臓部とも言えるエクストルーダが、簡単に着脱できる構造になったことも評価できる。エクストルーダは、工具を使わずに簡単に着脱できるため、ノズル詰まりなどのメンテナンスもしやすい。
ダヴィンチ Jr.1.0は、PLA専用になったためヒートベッドを搭載しておらず、消費電力も最大75Wと、ダヴィンチシリーズに比べて最大70%も削減されている。また、ヒートベッドがないので、火傷をする心配もほとんどなくなっている。また、ABSは融解時に多少嫌な臭いがするのだが、とうもろこしデンプンを原料とするPLAは嫌な臭いが出ず、生分解性も持つため、環境への負荷も小さく、家庭で使うにも適している。
PLAはABSに比べて、冷却時にも収縮が少なく、出力物が反ったり剥がれたりしにくいのだが、プラットフォームへの食いつきを高めるために、プラットフォームに貼る紙製テープが3枚付属する。テープがなくなったら、マスキングテープなどを貼ったり、スティック糊を塗ってもよいとのことだ。ダヴィンチシリーズも動作中の騒音は比較的小さい方だが、ダヴィンチ Jr.1.0はさらに騒音も低減されており、カバーを閉めれば、ほとんど気にならないレベルであった。
ダヴィンチ Jr.1.0は、従来のダヴィンチシリーズと同じく、ビックカメラやコジマ、ソフマップなどの家電量販店とAmazon.comや楽天などのECサイトを通じて販売される。完成品で5万円を切るというのは、低価格化が進むパーソナル3Dプリンタの中でもトップクラスの安さである。サイズもコンパクトになり、SDカードにも対応したことで、3Dプリンタがより身近になったと言えるだろう。