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AMDの14nmプロセッサがSamsungで製造される可能性

〜GLOBALFOUNDRIESがSamsungの14nmプロセスをライセンス

スブラマニ・ケンゲ氏
4月22日 開催

 GLOBALFOUNDRIESは22日(日本時間)、都内で記者会見を開き、来日したCTOオフィス アドバンスト・テクノロジー・アーキテクチャ バイスプレジデントを務めるスブラマニ・ケンゲリ(Subramani Kengeri)氏が、最新の動向について説明を行なった。

 発表会の冒頭では、GLOBALFOUNDRIESが抱える世界レベルの経営陣の人材や、米ニューヨーク、独ドレスデン、シンガポールの3カ所に分かれた製造拠点、年間最大800万枚のウェハ製造能力について紹介。顧客に近いところに事務所と製造拠点を置くことで、ファウンダリ専門企業としては初めて“真にグローバルで展開している”とアピールした。

 また、同社が2009年にAMDからスピンアウトした後、プロセスルールの開発を加速し、本来2年に1回となるプロセス刷新を1年に1回に縮めた。またパートナーを多く取り込んだり、Chartered Semiconductorを買収したりした結果、ファウンダリ業界のランキングで2009年当時の5位から、現在の2位まで上り詰めたことを紹介した。

GLOBALFOUNDRIESの経営陣。半導体業界を経験したベテランが集結している
GLOBALFOUNDRIESの拠点
ウェハ年間800万枚の製造能力
ファウンダリ業界のシェア
プロセスルールのロードマップ

モバイルが牽引する半導体業界

 半導体業界のトレンドについては、今後もやはりモバイルのSoCが牽引するとしている。特にハイエンドのスマートフォンの性能向上や64bitへの移行、メインストリームやエントリー向けでもクアッドコアへの移行、そしてWi-FiやBluetooth、NFCなどさまざまな接続方法の増加により、より複雑な半導体への需要が増加するという。

 例えばSynopsysの調査によると、各社が現在開発中のSoCで10億トランジスタを超えるものが10%、クロックドメインが90以上もあるものも50%を超えているとしており、これがSoC設計における複雑さを物語っている。

 2014年以降は、フィーチャーフォンに置き換わるエントリーレベルのスマートフォンや、ミドルレンジスマートフォンの拡大により大きく成長するとしており、こうしたトレンドの中、半導体に求められる要素としては、高密度化、低リーク電流、低アクティブ電力などがある。これらのニーズに合わせて、GLOBALFOUNDRIESはプロセスルールや技術の進化をさせていくとした。

 その答えの1つが、同社が現在用意している14nmプロセスルールのデザインである。同社はこの14nmプロセスから、ムーアの法則にある“トランジスタあたりのコスト”という概念を、“機能あたりのコスト”に改めて解釈し、ムーアの法則とコストの乖離を近づけさせるという。

 この解決方法にはトリックがある。単純にトランジスタを微細化していくだけでは、開発や製造にかかるコストが上がるだけだが、メモリキューブなどの3Dトランジスタ技術やTSVによる複数のダイのスタックによって、多機能化と低コスト化を両立させることで、ムーアの法則に近づけるという手法だ。

 また、これまで半導体の業界は技術(ファウンダリのプロセスルール)がリードしてきたが、これからはアプリケーション(エンドユーザーのニーズ)がリードしていくとし、それに見合った半導体を設計しなければならないとする。そのためにも、同社が提唱している、パートナー各社と緊密に提携した「Foundry 2.0」のモデルを推進していかなければならないとした。

半導体業界の牽引役、モバイルのニーズ
タイプ別のモバイル市場シェア
各社が現在開発中の半導体のプロセス
FinFETへの需要の高まり
半導体への要求
現在開発中の半導体のトランジスタ数
現在開発中の半導体の動作クロック
現在開発中の半導体のクロックドメイン
プロセスルールに応じた技術の進歩
EUV(極端紫外線リソグラフィ)技術は現在歩留まりが悪く、実用までにはまだ時間がかかるという
14nmプロセスからは“トランジスタあたりのコスト”ではなく“機能あたりのコスト”でムーアの法則を解釈、それに近づける努力をしていく
パッケージ技術の進化によってムーアの法則の継続させていく
TSVを応用したダイスタックなどで、SoCのニーズに応える
これまでの半導体開発と、これからの半導体開発
GLOBALFOUNDRIESが推進する「Foundry 2.0」モデル

GLOBALFOUNDRIESの14nmプロセスはSamsungからライセンス

 実はここからが本題だが、GLOBALFOUNDRIESとSamsungは17日(米国時間)に、14nm FinFETプロセス技術に関する戦略的提携に合意した。具体的には、Samsungが開発した14nmプロセスをGLOBALFOUNDRIESにライセンス提供し、GLOBALFOUNDRIESのニューヨークのファブでそれを製造可能にするものである。

 また、両社間でデザインの互換を確保し、マルチソースの供給体制を整える。つまり、GLOBALFOUNDRIESのニューヨーク工場で製造される14nmプロセスの製品は、Samsungの韓国・華城にあるファブと、米テキサス州オースティンにあるファブでも製造可能になる。

 具体的には、早期バージョンの「14LPE」と、より高性能と低消費電力を実現できる「14LPP」の2種類のプロセスとなる。いずれも14nmプロセスで、実現できるダイサイズや設計ルールは共通で、スムーズな移行が可能。後にリリースされる14LPPの方が性能が良くなるが、14LPEの方が早期に提供可能になるため、高性能を必要としない製品では量産品レベルでも適用できるという。

 GLOBALFOUNDRIESはこれまで、14nmプロセスについて独自の「14XM」を開発してきたが、ケンゲリ氏は「14XMについては、IBMやSamsungとこれまで協業して開発してきたので共通する部分が多くあり、Samsungからライセンスを受ける14LPE/14LPPでまったく活かされないわけではない。ただ大口顧客に耳を傾けたところ、Samsungが開発している14LPEおよび14LPPプロセスのほうにニーズがあったため、そちらに移行する」とした。

 14nm FinFETは、20nmプレナープロセスと比較すると性能が20%高く、消費電力が35%低減するという。また、ゲートのピッチをアグレッシブに設定したことで、他のファウンダリと比較してダイサイズを15%小型化できるとアピールした。

14nm FinFETプロセスをSamsungからライセンスを受ける
14nm FinFET技術の特徴
他社の同じプロセスルールと比較してダイサイズを15%小型化できるという
開発プラットフォームの共通化により、Samsungの工場でも製造可能
SamsungとGLOBALFOUNDRIESのファブでデザインやツール、製造材料、プロセスレシピを共通化し、相互運用を可能にする
14LPEと14LPPの2つを用意

AMDのプロセッサがSamsungで製造される?

 発表会で直接触れられなかったが、重要なことが2つある。1つ目はSamsungはこれまでIDM(垂直統合型)のファブであり、(Apple向けプロセッサなどはあったものの)ほぼ自社の製品しか製造してこなかったが、今回のGLOBALFOUNDRIESとの提携により、半導体製造の下請けビジネスを開始することを示した点だ。発表会のスライドでも、Samsungを含めたグローバルな生産能力で、14nm FinFETの需要を満たすことを示した。

 もう1つはこれに付随して、AMDの14nmプロセッサがSamsungで製造される可能性を示唆するものである。17日のリリースの中で、AMDのグローバルビジネスユニット ジェネラルマネージャーのリサ・スー氏が「今回の両社の協業は、AMDが低消費電力携帯機器から次世代高密度サーバー、さらには高性能組込みソリューションに至る各種最先端機器市場で要求される新しいレベルの処理能力および画像表示能力を備えた画期的な製品を提供するのに貢献してくれるでしょう」とコメントしている。また、GLOBALFOUNDRIESが示す“大口顧客”は他ならぬAMDである可能性が高い。

 やや穿った見方だが、AMDの14nmプロセッサがx86であれそうでなかれ、一定の量産を見込んでいるのならば、Samsungで製造されることになりそうだ。

(劉 尭)