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スリーディー・システムズ、Kinectを使った3Dプリンタ用データ制作などをデモ

~新オフィスとショールームを披露

スリーディー・システムズ・ジャパン代表取締役のケビン・マカレー氏
8月8日 実施

 3Dプリンタを手がける株式会社スリーディー・システムズ・ジャパンは、国内の本社を東京・恵比寿へ移転し、ショールームを開設。8月8日に報道機関、代理店などの関係者へお披露目した。

 米3D Systemsバイスプレジデント プロダクションシステムジェネラルマネージャー兼スリーディー・システムズ・ジャパン代表取締役のケビン・マカレー氏は「工業用製品だけを展開していた5年前と異なり、ホームプリンタからソフトウェアまで広範な製品を扱うようになり、ソフトウェアソリューションなども手がけている」と述べ、同社が持つ技術や近年の取り組みについて説明した。

 現在1,200の特許に基づいた7種類のプリントエンジンを用い、家庭用のものから工業用のものまで幅広く製品を展開。扱える素材は100種類以上。3Dプリンタのハードウェアだけでなく、3Dコンテンツを制作するツール、制作したものの検証ツール、eコマースでの3Dプリンティングサービスなども展開しているという。

 導入例も増加しており、「世界の製造業のほとんどは顧客になっていると思う」とマカレー氏が述べるほど。自動車、航空/防衛、ヘルスケア、CAD/建築、教育、アート/エンターテインメント、コンシューマと幅広い業界で活用されている。

移転した本社に設けられたショールーム。後述するGeomagicソリューションや家庭用3Dプリンタのデモ機、工業用3Dプリンタのデモ機などが並ぶ。それぞれのプリンタで製造されたさまざまなサンプルも展示されている
SLA(光造形)、SLM(レーザー金属造形法)など7種類のプリントエンジンを用いて製品展開をしている
コンテンツ制作から3Dプリンタによる出力まで全体をカバーするソリューションを提供
製品ポートフォリオは10万円台の家庭用機器から億クラスの工業用製品まで
対応するマテリアル(材料/素材)は100種類以上
多くの製造業で同社の3Dプリンタが使われているという

 また、7月には金属の3Dプリンティングに対応した「Phoenix Systems」を発表。スチール、チタン、アルミニウム、ニッケルなどを利用できる3Dプリンタで、飛行機の翼のキャスティングコア(溶解した金属を流し込んで製造する際の型)の製造、歯の詰め物、自動車用タイヤのトレッドパターンの設計などで活用されるという。

金属対応の3Dプリンタ「Phoenix Systems」の特徴。既存の金属対応製品に比べても精度、表面品質は高いとアピールする
サイズ、用途などに応じて複数の製品をラインナップしている

 今回の内覧会ではゲストとして、芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 生産システムデザイン分野の安齋正博教授、東京大学生産技術研究所 機械・生体系部門の新野俊樹教授もスピーチ。

 安齋氏は「3Dプリンタには良いところ、悪いところがある。良いところはどんな形でも具現化できるのが一番のメリット。例えばタイヤは削り出しだと5軸の加工が必要だが3Dプリンタなら簡単にできる。問題は材料だが、100種類以上となってきて、かなり良くなってきたと思っている」と述べる。また3Dプリンタは大量生産とは棲み分けられ、オーダーメイドのように個人に合わせたもの作りなどで日本独自のアイデアを生み出すツールとして使えるとし、「多くの人が取り組めば世界での売れ筋を作れる可能性が高まる。まずます3Dプリンタには期待している」と、独自のアイデアによるビジネス創出に期待を寄せた。

 新野氏は「3Dプリンタが流行っている理由は2つ。1つはオバマ大統領のスピーチに関するホワイトハウスからの発表に3Dプリンタという言葉があったこと。もう1つは3Dプリンタができはじめたのが20数年前で、ちょうど基本特許が切れ始めたことから低価格な製品が出てきたこと」と説明。また、「何ができるの?とよく質問されるが、今まで作れなかったものが作れると答える。どんなものが作れるの?と聞かれたら、今まで作ったことのないものを作れば良いと答える。大事なのはどう応用するかで、誰も思いつかなかったもの作ってビジネスを作るという方向で進んでほしい」と、安齋氏と同様に、新しいアイデアによるビジネスに期待を寄せている。

芝浦工業大学の安齋正博教授
東京大学の新野俊樹教授

3Dコンテンツ制作に関するソリューション

 このほか、3Dコンテンツの制作に関する同社のソリューション「Geomagic」についての説明も行なわれた。Geomagicは、同社が買収などにより取得したテクノロジ、アプリケーションを1つに集約してブランディングしたもので、CADソフトや検証ツール、リバースエンジニアリングのツールなどが用意される。これにより、製造現場における物作りの環境を改善、革新していくことを狙っている。

 Geomagic Solutions事業部長の並木隆生氏は、「7つのプリントエンジン、100の素材があっても、ソフトウェアがなければただの箱。コンテンツを作って3Dプリンタに繋げていく」と述べており、3D CADという難しいものを、もっと簡単で身近なものにしようと、ソフトウェア面にも力を入れていることを強調している。

 内覧会では、3Dスキャナを使って実際のマテリアルを取り込む例のほか、MicrosoftのKinectを使って顔をスキャンし、「Craytools」と呼ばれる3次元操作が可能なポインティングデバイスで編集し、家庭用3Dプリンタで出力する例も示された。

 Craytoolsは“触感型”デバイスとなっており、3D CAD上でポインタがオブジェクトに触ったことをフィードバックするので、例えば顔の凹凸に合わせてペンを動かすことなどができる。

コンテンツ制作関連ツールの「Geomagic」ソリューションは、同社の5番目の事業として位置付けられる
4つの企業が持つ技術をGeomagicブランドへ集約した
Geomagicソリューションに含まれるツールのラインナップ
3Dコンテンツを作成する手法の例。CADやCGを用いる以外に、3Dスキャナやコンテンツのダウンロードなどが挙げられている
3Dスキャナは「コピーするためのツールではない」としており、腐食した自動車パーツを3Dスキャナで取り込んで3D CAD上で修復。再生するという実例を提示した
Kinectと3次元ポインティングデバイス「Craytools」、個人向け3Dプリンタ「Cube」を組み合わせた例を提示。Kinectで顔をスキャンし、Craytoolsで編集、Cubeで出力するという流れ
3D Systemsは入力から出力までトータルでソリューションを提供することを目指しているという
Kinect、Craytools、Cubeを使った出力のデモコーナー
出力された顔のサンプル
こちらはNextEngine製の3Dスキャナで50万円程度のもの
【動画】Kinectを使って顔を3次元で取り込んでいるところ。取り込んだ状態ではなかなか完全な形にはならないため、変換して3D CADで編集する必要がある
【動画】3次元ポインティングデバイス「Craytools」の動き。オブジェクトがある部分でペンに抵抗が生まれ、現物に触っている感覚で操作できる

(多和田 新也)