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DMM、東京3Dプリンティングセンターを公開

〜7月3日から一般ユーザー向けに3Dプリント出力サービスを開始

 株式会社DMM.comが、7月3日から3Dプリント出力サービス「DMM 3Dプリント」の提供を開始した。

 3Dプリント出力サービスとは、ユーザーが作成/アップロードした3Dデータを、3Dプリンタで出力し、出力された造形物をユーザーに送ってくれるサービスである。3Dプリンタへの関心が高まるにつれ、3Dプリント出力サービスを行なう業者が続々と増えている。

 DMM.comは、元々はインターネット上での動画配信や通販、レンタルなどを手がける会社であったが、近年はFX事業や太陽光発電事業にも参入するなど、事業の多角化を図っている。3Dプリント出力サービスへの参入も、そうした戦略の一環だ。

 国内の3Dプリント出力サービスの中には、3Dデータは国内のサイト経由で受け付けるが、実際の3Dプリントは海外の3Dプリンティングセンターを利用しているものもある。DMM 3Dプリントは、納期と品質を重視し、国内に設置した3Dプリンティングセンターを利用していることが特徴だ。DMM 3Dプリントでは、現在、東京と大阪の2カ所にDMM 3Dプリンティングセンターを設置しているが、今回、東京のセンターが報道関係者向けに公開されたので、その様子を紹介する。

合計5台の最新業務用3Dプリンタを設置

 東京のDMM 3Dプリティングセンターは港区西麻布にあり、DMM.comと共同でDMM 3Dプリントを運営する株式会社nomadのコワーキングスペース「NEWS BASE N」の1Fで運営されている。

 フロアの広さは27坪ほどで、中には最新の業務用3Dプリンタが5台設置されている。設置されているのは、全て米3D Systemsの製品で、「ProJet 3500 CPXMax」が1台、「ProJet 3500 HDMax」が2台、「ProJet 660Pro」が2台である。

 3Dプリンタと一口にいっても、さまざまな造形方式があり、方式によって利用できる素材が異なる。ProJet 3500CPXMaxは、ワックスモデル造形用の3Dプリンタであり、そのワックスモデルを基に鋳型を作り、シルバーなどを鋳造するのに用いられる。ProJet 3500 HDMaxは、Multi Jet Modelingと呼ばれる方式の3Dプリンタで、半透明のアクリル樹脂を素材とする。Projet 660Proは石膏パウダーに色を付けながら出力が可能なことが特徴であり、フルカラーの造形が可能だ。これらの業務用3Dプリンタは、1台1,000万円を超えるものもあり、個人で気軽に導入できるようなものではない。

 現在、DMM 3Dプリントでは、造形可能な素材として「石膏フルカラー」、「アクリル樹脂」、「ナイロン」、「シルバー」、「チタン」の5種類から選べるが、東京の3Dプリンティングセンターでは、石膏フルカラーとアクリル樹脂、シルバー(前述したようにロストワックス法による鋳造)の造形を行ない、ナイロンとチタンは大阪の3Dプリンティングセンターで対応する。ナイロンおよびアクリル樹脂については、オプションで出力された造形物を染色することが可能であり、赤、青、ピンク、紫、黒の5色のカラーバリエーションが用意されている。

東京のDMM 3Dプリンティングセンターは港区西麻布にある。お洒落な建物で、中に最新の3Dプリンタが並んでいるとは思えない
DMM 3Dプリンティングセンターの中の様子。5台の3Dプリンタが一列に並んでいる
中央にあるのが、3D Systemsの「ProJet 3500 HDMax」。最高16μmピッチでの積層が可能だ。この3Dプリンタは、半透明のアクリル樹脂による造形に使われている
こちらは、3D Systemsの「ProJet 660Pro」。石膏パウダーに色を付けて造形を行なうため、フルカラー出力が可能。同じ機種が2台設置されている
DMM 3Dプリントの出力サンプル。現時点では、石膏フルカラー、アクリル樹脂、ナイロン、シルバー、チタンの5種類の素材を利用できる
シルバーは直接3Dプリンタで造形するのではなく、まず、3Dプリンタでワックスを造形し、そのワックスから作った鋳型で、鋳造して作られている。右が3Dプリンタで造形したワックスモデル(青色の部分がワックスで、白い部分はサポート材)、右がそのワックスモデルから鋳造で作られたシルバーモデル
こちらは、アクリル樹脂の出力サンプル。いわゆるモンキーレンチだが、ギヤなども可動するようにできており、手でネジの部分を動かすとレンチの間隔が変わる
石膏フルカラーの出力サンプル。CMYKインクによるフルカラー出力が可能なことが特徴。ただし、石膏の粉を固めて作っているため脆いことが欠点
こちらも石膏フルカラーの出力サンプル。石膏フルカラーの最大造形サイズは、200×380×250mmで、かなり大きなモデルも造形できる
3Dプリンタを使えば、従来の製造方法では困難だった、かごの中に物体が入っているような形状も容易に造形できる
ナイロンの出力サンプル。ナイロンは耐熱性と靱性に優れており、はめ込んで固定するスナップフィットにも適応可能
ナイロンとアクリル樹脂は出力後に染色することが可能で、赤、青、ピンク、紫、黒の5色が用意されている
手前はナイロン、奥はチタンの出力サンプル。チタンは、鋳造ではなく、大阪にある3Dプリンティングセンターの3Dプリンタで直接造形される
造形を開始する前に、専用ソフトウェアで3Dデータを変換し、造形方向などを指定する
造形物の表面に余計な石膏の粉が付着しているので、エアブローで吹き飛ばす
ProJet 3500 HDMaxの液晶画面。造形完了までの時間などが表示される。現在、積層ピッチ29μmのUHDモードで造形中であり、あと2時間54分で造形が完了すると表示されている
【動画】ProJet 660Proの造形中の様子。石膏の粉を積み重ねていき、造形物の部分だけをインクと溶浸剤で固めていく仕組みだ
【動画】ProJet 660Proでは、造形物が石膏の粉の中に埋まった形で造形されるので、造形が完了したら、周りの粉を吸い込んで造形物を取り出す
【動画】エアブローで、石膏の粉を吹き飛ばしているところ
【動画】アクリル樹脂タイプの造形中の様子

海外の3Dプリント出力サービスと同等の価格で短納期を実現

 DMM 3Dプリントの具体的な利用手順は、「ユーザーが作成した3Dデータをアップロード」→「3Dデータのチェック」→「造形可能な3Dデータなら価格見積もりが送られてくる」→「素材を選んで、支払い手続きをする」→「3Dプリントが行なわれ、造形物がユーザーに送られてくる」という流れになる。

 3Dプリンタは、立体としてきちんと成立する(ポリゴンなどがすべて閉じた)3Dデータでないと造形を行なうことができない。3D CADを使って3Dデータを作成した場合は、比較的問題は少ないが、3D CGソフトで3Dデータを作成した場合、画面上では立体物として見えていても、厚みがゼロになっているなど、そのままでは3Dプリンタで造形できない場合がある。

 DMM 3Dプリティングセンターの中には、アップロードされたデータの確認、修正をするためのデータセンターが設けられており、簡易なデータのエラーであれば、無料で修正してくれる。修正に手間がかかる場合は、有料でデータを修正するサービスも用意されている。もちろん、この場合は、修正費用の見積もりがメールで送られてくるので、それを見て修正を依頼するか判断すればよい。

 他の3Dプリント出力サービスと比べたときのDMM 3Dプリントの利点は、「お手頃価格」、「スピード配送」、「選べる素材」、「高性能」の4つだという。

 価格については、海外大手サービスはかなり安いのだが、それとほぼ同等の価格を実現しており、さらにDMM 3Dプリントは送料が無料なので、トータルでは海外大手サービスよりも安くなることも多い。例えば、今回展示されていたナイロンで造形したリンゴの場合、価格は2,000円程度になる。

 スピード配送については、3Dデータのアップロード後、最短7〜9日で配送されるという。例えば、海外大手のShapewaysの場合、配送まで8〜16営業日となっており、配送に必要な日数もあわせるとかなり納期が長くなってしまう。また、素材については、現時点で5種類から選べ、国内サービスとしては充実している。さらに、プロ仕様の3Dプリンタを複数台揃えることで、高い精度を実現していることも魅力だ。

 なお、今後も、DMM.comは3Dプリント出力サービスの拡充を行なう予定であり、まずは、8月か9月を目処に、さらに大きなサイズでの出力が可能な大型3Dプリンタを大阪の3Dプリンティングセンターに導入する。この大型3Dプリンタでは、最大700×380×500mm程度の出力が可能だという(素材はナイロン)。

 また、3Dプリント出力サービスを利用するには、3Dデータを用意しなくてはならないが、自分で一から3Dデータを作成するには、3D CADや3D CGに習熟する必要がある。現在、そこが一般ユーザーにとってハードルになっているが、今後は、簡易に3Dデータを作成できるようなソフトウェアの開発を支援したり、ユーザーが作成した3Dデータをネット上で流通させるような仕組みも考えていきたいとのことだ。

 筆者は、10万円〜40万円程度のいわゆるパーソナル3Dプリンタも、数機種使ってみたことがあるが、DMM 3Dプリントが利用している業務用機とパーソナル3Dプリンタでは、同じデータを出力させても、仕上がり精度や表面の滑らかさなどが大きく異なる。パーソナル3Dプリンタでは、造形に失敗することもしばしばあるのだが、DMM 3Dプリントを利用すれば、確実にユーザーが作成した3Dデータ通りの造形物が得られる。最近は、Autodesk 123D DesignやTinkercadといった無料で使える3D CADも増えているので、3Dプリンタに興味がある人や、具現化したい3Dデータを持っている人は、DMM 3Dプリントを利用してみてはいかがだろうか。

3Dプリンティングセンターの中には、ユーザーから送られた3Dデータの確認、修正をするためのデータセンターが設置されている
3次元触感デバイスモデラー「FreeForm」を利用して、3Dデータを編集しているところ
FreeFormは、ペン型インターフェイスを利用して、3Dモデリングを行なうことができ、フォースフィードバック機能があるため、ディスプレイ上の物体に「触れる」ことが可能だ

(石井 英男)