Intel Capital、デジタルドライブスピーカーを開発するTrigenceへ投資

インテルキャピタル ジャパン マネージング ディレクター 出川章理氏

5月29日 発表



 Intelの投資部門であるIntel Capitalは、株式会社Trigence Semiconductorに出資したことを発表した。投資額や投資時期など具体的な内容については公表していない。

 Intel Capitalは、Intelの投資部門として全世界51カ国、105億ドルを出資した実績を持つ。投資額以上の利益を490社以上であげた実績も持っている。

Intel Capitalの実績日本での投資実績

 「日本でも2000年以降に投資を開始し、30社以上、4億ドルの投資実績を持つ。日本での投資の方向性としては、大きく次の4つの方向性を持つ。1つは半導体製造技術を持つベンダーへの投資で、株式会社ニコン、株式会社トリケミカル研究所などへの投資がその代表的なものとなる。次に新しいIT産業の創出としてWiMAXサービスを提供するUQコミュニケーションズ株式会社、電子マネー、電子書籍分野などへの投資。3つ目はモバイル技術・サービス分野として2011年に投資を行なったセキュリティ分野のワンビ株式会社などがある。そして4つ目に新しいユーザー体験を提供する企業への投資があり、今回のTrigenceもこの分野にあたる。通常、投資に関しては詳細を明らかにしていないが、今回はオーディオという、実際に聞いてもらうことが必要な分野への投資ということで、発表会を開催することを決定した」(インテルキャピタル ジャパン マネージングディレクター・出川章理氏)。

 Trigence Semiconductorは2006年に設立。元々は東芝の技術者だった安田彰社長、岡村淳一取締役を中心にビジネスを展開しており、スピーカーをデジタル信号で直接駆動することができるデジタル信号処理技術「Dnote」を独自開発した。現在のデジタル信号からアナログ音声をスピーカーが合成する際、入力信号の大小に応じ、必要なコイル数を計算して最適化することで、アイドリング電力を低減し、コイルを並列駆動することで最大出力を得るために必要な電源電圧を下げることができる。

 「Dnoteの特徴は、現状では音声再生のデジタル化に必要となるアナログ回線が不要となる点だ。さらに、並列効果で低電圧でも大音量再生が可能となるため、携帯電話や携帯オーディオプレーヤーなどでの利用にも適している。この2つの特徴を併せ持つことで、低コスト、省電力の音声再生用LSIを実現させることが可能となる。当社としては、DnoteのIP提供、LSIの開発、販売、デジタルスピーカーモジュールの販売という3つのビジネスを行なうことを検討している」(Trigence Semiconductor・安田彰社長)。

Trigence Semiconductor代表取締役 安田彰氏「Dnote」ブランドのマークTrigence Semiconductor会社概要
デジタルドライブスピーカーの概要同社のデジタルドライブスピーカーが高効率の理由低電圧駆動が可能な理由
磁場でのD/A変換の様子デジタルドライブスピーカーのメリット量産用LSIチップ試作品
Trigence Semiconductor 岡村淳一取締役

 すでに複数のベンダーと取引がスタートしており、今回、Intelからの投資を受け入れたのは、「国内だけでなく、米国、ヨーロッパ、中国・アジアと世界での展開を検討している。その世界展開を行なうにあたり、Intelとの協業が大きな力となるのではないかと考えた」(Trigence Semiconductor・岡村淳一取締役)ことが理由だという。

 会場ではすでに発表されているオンキョーとの協業による試作品をはじめ、台湾ザイラックスとの協業の成果が展示された。屋外など電源をとれない場所への持ち出しを想定し、PCのUSBによる出力だけで大音量を出力するスピーカー、HOSIDENとの協業によるケータイ機器向けの試作品、エネループを電源とした小型スピーカーなどを公開した。

 Trigenceでは、「今回のIntel Capitalからの出資により、この1年から2年で現在6人の人員を20人弱の体制にまで拡大し、実ビジネス化へ加速していきたい」(安田社長)と話している。


Intel Capitalからの投資による展開台湾ザイラックスが試作したPCのUSB電源だけで動く外部持ち出し用スピーカー1セルのバッテリで駆動するオンキョーの試作品
試作のボードHOSIDENが試作したケータイ機向け試作品
小型スピーカーの試作品エネループで駆動する試作品

(2012年 5月 29日)

[Reported by 三浦 優子]