AR.Droneのプロダクトマネージャー、ジュリアン・ガロウ氏 |
仏Parrotは、1月にInternational CESで発表した同社製クアッドリコプターの新モデル「AR.Drone 2.0」の日本市場向け発表会を都内で開催した。Amazon及び大手家電量販店などで6月からの販売を予定している。価格は後日発表される。国内発表会には仏Parrot社からAR.Droneプロダクトマネージャのジュリアン・ガロウ氏が来日。AR.Drone 2.0の詳細説明を行ない、デモ飛行を披露した。
AR.Droneが初めて登場したのは2010年の1月で、やはりInternational CESで公開されている。4枚のローターを使ったクアッドリコプターをiPhoneで操縦するというプラットフォームに注目が集まった。同社が契約デベロッパに対してAPIを公開しSDKの提供を行なっていることから、同社によるスタンダードな操縦アプリやレースアプリのほかに、サードパーティからもアプリが発表されている。同年9月には日本市場向けにも販売を開始。さらに2011年6月にはAndroid向けの操縦アプリも公開され、現在はiOS、Androidという2つの環境で楽しむことができる。
【動画】AR.Drone 2.0の公式ムービー |
製品発表は1月に行なわれているが、ジュリアン・ガロウ氏の説明をもとに2.0における注目ポイントを改めて紹介しよう。同氏がまずポイントとしてあげたのが、カメラ機能の強化だ。Facebookでは20万人を超えるファンを抱え、YouTubeには5万本ものAR.Droneによって撮影された映像が投稿されている例を挙げ、前モデルがラジコンとしての楽しさに加えてカメラ機能に注目が集まっていることから、前方向けのカメラは前モデル(第1世代)のVGA解像度(640×480ドット)から、720pの1,280×720ドット(30fps)へと高画質化された。
正面に向けて設置されたこのカメラはパイロット視点としての映像を操作アプリに送ると同時に、任意に録画、撮影を行なうことができる。投稿・共有がしやすいように、操縦アプリにAR.Droneが撮影した写真や動画をPicasaやYouTubeへそのまま投稿できる機能も用意された。録画機能はこの操作アプリを使った録画のほか、機体本体から出ているUSBインターフェイスにフラッシュメモリを取り付けることで、直接USBメモリへの書き込みを行なう設定もできる。
飛ばすという点では飛行性能も前モデルに比べて向上している。こちらは安定性、操縦性にフォーカスしており、より広いユーザー層を見据える。新たに地磁気センサー(電子コンパス)を導入したことで、AR.Drone自身が機体の向いている向きを把握。前モデルでは操縦者がコントローラに送られている画像や機体の様子から判断して相対的に操作していた部分を、単純に左右に、前に、後ろにといったイメージだけで自在に操れるようになった。
また、従来から装備している超音波センサーに加えて、気圧センサーを導入することでホバリングの垂直安定性が向上したという。ホバリング状態では、コントローラから手を離しても現状を維持し続け、多少指先で機体を押した程度ではすぐに体勢を戻して元の状態を維持するように振る舞う。この機能により、操縦開始は以前にまして簡単になり、機体を接地させた状態で操縦アプリにある「Take Off」(離陸)ボタンをタップするだけで機体が浮上。目線よりやや低い位置でホバリングして次の操作を待つ体勢となる。下部に向けた超音波センサーは、想定外の飛行高度にならない役割があり、飛行高度が最大で約6m程度になるのは前モデルと同様。
なおInternational CESでも話題になった宙返りの操作は、画面をダブルタップすることで実行できる。機体は宙返りしたあと、前述の垂直安定機能を使って元の状態を維持し続ける仕組み。
【動画】ジュリアン・ガロウ氏による宙返りのデモ。コントローラーのダブルタップによりその場で宙返り |
【動画】本誌筆者の平澤寿康氏によるAR.Drone初飛行の様子 |
コントローラとなるスマートフォンとの接続は従来と同様にWi-Fiを利用する。IEEE 802.11b/g/nに対応。機体の操縦のほか、前述した前方向けカメラからの映像転送にも使われる。操縦範囲はWi-Fiの規格に準じて電波状態が良好であれば操縦者を中心に半径50m程度。操縦範囲を超えた場合は、その場でホバリング状態を可能な限り維持し、次の操作を待つという仕組みは前モデルと変わらない。
本体にはローターの露出した屋外用のハルと、ローターがガードされた屋内用のハルが同梱される。バッテリは充電式のリチウムポリマー。フル充電で約12分程度の飛行が可能だ。この点も従来と変わらないが、意外にバッテリは保たないものという点が使ってみたことのないユーザーには伝わりにくい。もちろんバッテリの容量は機体重量へと直結するので、1,000mAhでCPU、各種センサーそして4枚のローターを回転させているのだから致し方ない部分とも言える。個人的にも、AR.Droneの購入にあたっては予備バッテリの同時購入を強くおすすめしておきたい。
ジュリアン・ガロウ氏によれば、前モデルは世界で約25万台を出荷したという。国別のデータは明らかにしてはいないものの、37カ国におよぶ出荷国の中でも、日本は特に熱心なユーザーの多い市場と位置づけている。実際、International CESの会場で開催されたAR.Droneの世界大会にも日本人のパイロットは母国フランスと並ぶ最多の3名が出場。さらに優勝の栄誉にも輝いた実績をもつ。
前モデルはiPhoneをコントローラにするという特徴もあってか、ソフトバンクモバイルが流通経路の1つとなった。新モデル「AR.Drone 2.0」に関して取り扱いを行なうかどうかは、現在交渉の過程にあるとして国内発表会の時点では明確にはされなかった。発表にあったAmazonのほか、国内ラジコン大手の京商による取り扱いは継続する模様。
気になる価格は冒頭で触れたとおり、後日発表となる。米国における販売価格は、前モデル、新モデルともに299.99ドル(税別)が当初価格として設定されている。日本国内向けは、前モデルの市場想定価格が当初は43,800円とやや高めだったこともあり、「AR.Drone 2.0」ではより現実的な価格設定を望みたいところだ。ちなみに現時点で販売が継続されている前モデルのAmazonにおける価格は27,000円前後。
操縦アプリである「AR.Free Flight」はすでにVer.2.0としてiTunes Store、Google Playで配信されており、無料でダウンロード可能。前モデルでも利用できるほか、非ユーザーでもYouTubeへの投稿映像を閲覧することができる。
前モデルの発表時にはコントローラとしてiPhoneが利用されていたが、「AR.Drone 2.0」ではiPadであったことは印象的だ。Parrotによる公式のビデオでもやはりiPadが使われている。もちろんiOS、Androidのスマートフォンでの操縦は可能だが、高解像度化したパイロット視点の映像をみたり、さまざまな操作を行なう上では、このジャンルでのタブレットの優位性、可能性を垣間見ることができる。
(2012年 5月 22日)
[Reported by 矢作 晃]