石井英男のデジタル探検隊

Parrotの小型ドローン「Rolling Spider」と「Jumping Sumo」で遊んでみた

~安定した飛行とアクロバティックな動きに感動

 フランスのParrotは、iPhoneなどで操作できるクアッドコプター「Ar.Drone」シリーズで有名なベンチャーである。Parrotは、2014年1月のInternational CESで、新たなカテゴリである小型ドローンシリーズ「MiniDrones」として、「Rolling Spider」と「Jumping Sumo」の2つの新製品をお披露目。7月には日本で発表会を行ない、8月からRolling SpiderとJumping Sumoの2製品の国内での販売を開始することを発表した。

 Rolling Spiderの価格は12,800円、Jumping Sumoの価格は19,800円であり、あくまでオモチャとして位置付けられる製品だが、他社から発売されている数千円~1万円クラスのクアッドコプターやラジコンなどに比べると、その運動性能や機能は格段に上だ。大の大人(対象年齢は14歳以上)でも、つい時間を忘れて遊んでしまう、そんな魅力的な製品だ。奥さんを除く筆者の家族は、こうした動くオモチャが大好きであり、一刻も早く触ってみたいとワクワクしていていたのだが、今回、発売前の試作品を試遊する機会を得たので、早速紹介していきたい。

宙返り飛行も自由自在!クアッドコプター「Rolling Spider」

 最初に紹介するのが、4つのプロペラで自由に空を飛び回る「Rolling Spider」である。一般に、通常のヘリコプターよりもプロペラの数が多い飛行物体をマルチコプターと呼び、Rolling Spiderのような4つのプロペラを持つ飛行物体はクアッドコプターとも呼ばれる。マルチコプターは複数のプロペラを適切に制御することで、空中静止はもちろん、その場での旋回や360度宙返りなど、さまざまな動きを実現できることが魅力だ。安価なオモチャのラジコンヘリコプターは操縦の自由度が低く、操縦自体も難しい。Rolling Spiderは3軸ジャイロセンサーや3軸加速度センサーを始めとする多くのセンサーを搭載し、高度な制御を行なうことで、こうしたラジコン操作が苦手な人でも気軽に動かせる。

 Rolling Spiderのサイズは、140mm四方であり、手の平にちょうど載せられる程度だ。重量はバッテリ込みで公称55gと軽い。底面には、超音波センサーやカメラ、圧力センサーなどが搭載されている。超音波センサーは地面との距離を計測し高度4m以下の高度制御を行なう。カメラは画像を撮影できるだけでなく、速度の制御にも使われる。圧力センサーは高度4mを超えた場合の高度制御に使われる。

 ボディカラーは白、赤、青の3色が用意されており、好きな色を選べる。また、正面に貼るデザインシールが付属しており、シールによってカスタマイズも可能だ。

Rolling Spiderの上面。4つのプロペラを持つクアッドコプターである
Rolling Spiderの底面。超音波センサーやカメラが用意されている
マイクのように見えるのが超音波センサーで、高度4m以下の高度制御を行なう。超音波センサーの上にある小さな穴がカメラだ
Rolling Spiderの正面。顔のシールはさまざまなデザインのものが付属しており、好みのものを選べる

 バッテリには小型で軽いリチウムポリマーバッテリを採用。バッテリは、Rolling SpiderもJumping Spiderも共通で、3.7V/550mAhという仕様だ。15C連続放電可能とされているのも、大電流が必要な飛行トイにふさわしい。充電器などは付属せず、バッテリを本体に装着した状態で、USBケーブルを接続することでバッテリの充電を行なう。約90分で充電でき、フル充電で8分の飛行が可能だ(ホイール装着時は6分)。

Rolling Spider用リチウムポリマーバッテリ。3.7V/550mAh、15C連続放電可能という仕様で、Jumping Sumoも同じバッテリを利用する
リチウムポリマーバッテリの上面。この突起を利用して固定する
Rolling Spiderのバッテリ込みの重量は実測で57gであった

ホイール装着で初心者にも安心

 Rolling Spiderの最大の特徴は、“Rolling”という名称からも想像できるように、本体左右に装着するためのホイールが付属していることだ。ホイールは10g程度と軽く、Rolling Spiderへの着脱も簡単にできる。ホイールを装着することで、プロペラが直接障害物に当たることが少なくなり、プロペラなどの破損を防げる。万が一、プロペラが障害物に当たった場合は、安全のためにモーターが緊急停止し、プロペラも比較的簡単にモーターから外れるようになっているので、プロペラが破損してしまう可能性は低い。また、実際の動きについては後ほど動画で紹介するが、ホイールを装着すると、天井や壁を這わせるような動きも可能になる。これは普通のクアッドコプターではできない芸当であり、まさに“Spider(クモ)”を彷彿させる動きだ。

付属のホイール。サイズは大きいが軽い
ホイールのRolling Spider本体への着脱は簡単にできる
ホイールをRolling Spiderに装着したところ。ホイールはプロペラを保護する役割も持つ
ホイール装着時のRolling Spiderの重量は実測で68gであった
Rolling Spiderに付属する顔のシール。好きな顔にカスタマイズできる
Rolling Spiderのプロペラ。比較的簡単に外れるようなっており、破損しにくい

スマートフォンとはBluetooth経由で接続

 MiniDronesシリーズは、基本的にiPhoneやAndroidスマートフォンなどで操作を行なうように設計されている。iOS/Android用の操縦アプリ「FreeFlight 3」は、無料でダウンロードが可能だ。また、10月にはWindows 8.1/Windows Phone 8.1対応版が提供される予定だ。なお、今回筆者が試用したアプリはβ版であり、正式版とは機能や画面構成などが異なる可能性がある点はご了承いただきたい。

 Rolling Spiderは、スマートフォンとBluetooth経由で接続されるようになっている。バッテリを入れると、両目のLEDがまず赤色に点灯し、しばらくすると色が緑色になる。緑色になれば準備は完了なので、FreeFlight 3を起動すればよい。

 FreeFlight 3では、仮想ゲームパッドを使って、高度やその場回転などが可能なほか、アクションとして割り当てられている360度宙返りなども、ボタンをダブルタップすることが行なえる。さらに、画面に触れたまま、スマートフォンを傾けることで前後左右への移動が可能だ。何も操作しない場合はその場で静止しているので、初心者でも慌てずに操縦できる。対象年齢は14歳以上だが、小学生高学年でも、すぐに操縦できるようになりそうだ。

バッテリを入れると、両目のLEDがまず赤色に点灯する。USB経由で充電中も赤色に点灯する
起動準備が完了すると、両目のLEDの色が緑色に変わる
操縦用アプリケーション「FreeFlight 3」。アプリケーションも2製品で共通だ
FreeFlight 3の基本操縦画面。仮想ゲームパッドを使って高度やその場での回転などが可能なほか、画面を触ったまま、スマートフォンを傾けることで前後左右への移動が可能だ
右から2番目のアイコンには宙返りやその場回転など、さまざまなアクションが割り当てられている

360度宙返りがアクロバティック

 実際の飛行の様子は、下の動画が参考になるだろう。特に驚かされたのが、360度宙返りだ。ひらりと宙返りする様子には目を奪われる。また、ホイールを付けた状態で、天井や壁に沿って貼り付くように動かせることも面白い。挙動は多少異なるが、360度宙返りは、ホイールを付けた状態でも実行可能だ。

 電波到達範囲は最大20mとされており、部屋の中で飛ばすのはもちろん、外でも十分に遊べる。

 なお、上空からの写真撮影も可能なのだが、試用機では写真撮影機能がうまく動作しなかったので、ここでは省略する。

【動画】ホイールを付けた状態での飛行の様子。スマートフォンを傾けることで、自由に機体を操れる
【動画】飛行高度は最大20mだが、スマートフォン用アプリケーションで制限できる
【動画】その場で回転して向きを変えたり、回転しながら移動することもできる
【動画】ホイールを外して飛行させているところ。飛行は非常に安定している。最後の方で360度の宙返りを行なっている
【動画】ランディングを選択して、手のひらでキャッチすることもできる
【動画】ホイールを装着すると、このように天井に貼り付きながら移動させることも可能だ
【動画】室内で360度宙返りを行なっているところ。このようなアクロバティックな動きが誰でも簡単に行なえる
【動画】ホイールを付けたままでも宙返りが可能だ

カメラ映像をリアルタイムに確認できるJumping Sumo

 次は、2輪ラジコン「Jumping Sumo」を紹介しよう。こちらもユニークなネーミングだが、まさにジャンプする力士といった風情である。Jumping Sumoは黒、白、カーキの3色が用意されており、シールによってカスタマイズできるのもRolling Spiderと同じだ。

 Juping Sumoはホイール間隔を2段階に変更できることも特徴で、ホイール間隔を広げたクルーズモードと、ホール間隔を縮めたプレシジョンモードがある。クルーズモードは高速安定性が高く高速移動用に、プレシジョンモードはより小回りが効くので、狭い場所での探検に向いている。

 バッテリはUSB経由で充電可能で、充電には約90分が必要だが、フル充電なら約20分の稼動が可能だ。ホイールには柔らかくて軽い発泡素材が使われており、全体の重量も約180gと軽い。最高速度は時速7kmとのことだが、実際にはもっと速く感じられる。

 Jumping Sumoも、Rolling Spiderと同じく「FreeFlight 3」によって操縦できるが、無線LANを利用して接続されるため、まずスマートフォンの無線LAN設定で、Jumping Sumoに接続する必要がある。接続完了後、FreeFlight 3を起動すると、メインメニューの左上に搭載カメラの映像がリアルタイム表示される。Rolling Spiderとは異なり、カメラ映像が常に表示されるため、慣れればその映像だけを見て操縦を行なうことも可能だ。カメラ搭載オモチャには、遅延が大きかったり、フレームレートが低かったりして、カメラ映像だけでの操縦が難しいものもあるが、Jumping Sumoのカメラ映像は遅延も少なく、フレームレートも十分に高い。画質的にも満足できる。ジオラマやコースを作って、カメラ映像だけでゴールに到達できるか挑戦するというのも面白そうだ。無線LANを利用しているため、電波到達距離も最大50mと長い。

 操縦方法は、Rolling Spiderと似ており、仮想ゲームパッドの上下で前後に動き、画面を触ったまま、スマートフォンを傾けることで、左右のステアリング操作が可能だ。空を飛ばない分、こちらの方が操縦は簡単であり、小学4年生の娘もすぐに操作を覚えていた。

Jumping Sumoは、ホイール間隔を2段階に変更できる。こちらはホイール間隔を広げたクルーズモード
こちらはホイール間隔を狭めたプレシジョンモード
バッテリはUSB経由で充電する。充電が完了すると、充電状況を示すLEDの色が緑色になる
Jumping Sumoの特徴である、ジャンプはバネとアクチュエーターの組み合わせで実現している
【動画】ホイールとシャフトを繋いでいる部分は柔らかい材質でできており、このようにホイール間隔を変更できる
Jumping Sumoは、スマートフォンと無線LAN経由で接続されるため、まず、スマートフォン側で接続操作を行なう
JumpingSumoというアクセスポイント名に接続すればよい
Jumping Sumoに接続が完了すると、FreeFlight 3のメインメニュー左上に搭載カメラからの映像が表示される
Jumping Sumo操縦中の様子。カメラの映像は遅延が少なく、画質もかなりよい
【動画】Jumping Sumoの起動の様子。起動が完了すると電子音が鳴り、ホイールを左右に動かしたのち静止する
【動画】iPhone 5を利用してJumping Sumoを操縦している様子。iPhoneの画面には、Jumping Sumoのカメラからの映像がリアルタイムで表示される

高さ70cmのテーブルの上にも飛び乗れるジャンプ力

 Jumping Sumoは、その名の通り、お尻部分に強力なバネとアクチュエイターからなるキッカーを搭載しており、高さ80cmもの大ジャンプが可能なことがウリだ。Jumping Sumoのジャンプは、高さ重視と距離重視の2種類があり、高さ重視の方がより垂直に近い軌道を描く。高さ重視のジャンプを試したところ、高さ約70cmのテーブルの上に見事に飛び乗った。Jumping Sumoのジャンプは、アクチュエーターでバネを縮めていき、最も縮めたところでバネを解放して一気にジャンプする仕組みだ。そのため、ジャンプの前にバネを縮めていくタイムラグがある。

 また、「Animations」には、スピンやタップ、ウェーブといった、さまざまなアクションが登録されており、ワンタッチで実行できる。Rolling Spiderとは異なり、Jumping Sumoにはスピーカーが搭載されており、サウンドの再生が可能だ。アクション実行中にさまざまな効果音が再生されるのも楽しい。特にその場でくるくる高速スピンしてからジャンプをする“スピンジャンプ”は迫力があり、子ども達にも大受けであった。

【動画】Jumping Sumoの特徴である、ジャンプの様子。ジャンプは高さ重視と距離重視の2種類があり、こちらは高さ重視のジャンプ
【動画】こちらは角度をより低くジャンプする、距離重視のジャンプ
【動画】高さ重視のジャンプで、約70cmの高さのテーブルに飛び乗らせたところ
中央の「Animations」をタップすると、スピンやタップ、ウェーブなど、さまざまなアクションを実行できる
【動画】「Animations」のさまざまなアクションを実行したところ
【動画】大技スピンジャンプ。効果音と共に高速スピンし、最後にジャンプする
【動画】こちらはスラローム走行の様子

ロードマップを作成して自動走行も可能

 さらにJumping Sumoは、あらかじめ作成したロードマップに従って、自動走行を行なわせることも可能だ。ロードマップの作成は、1m前進、90度回転、0.5m前進、距離重視ジャンプといったように、順番にアイコンを並べていくだけなので簡単だ。想定される動きの軌跡も表示されるので、イメージがしやすい。簡単な迷路を作って、自動走行でゴールに到達できるまでの時間を競うのも面白いだろう。ホイール間隔を狭めたプレシジョンモードなら、狭い場所でも自由自在に走らせることができる。

【動画】ホイール間隔を狭めたプレシジョンモードでの走行の様子。小回りが効くので、狭い場所に向く
Jumping Sumoでは、FreeFlight 3のロードマップ作成機能を利用して、あらかじめ作成したロードマップ通りに自動走行させることが可能
【動画】あらかじめ作成したロードプランに基づいて、自動走行させているところ
【動画】カメラ映像は遅延が少なくフレームレートも高いため、高速スピンさせると目が回りそうだ

両製品ともオモチャとは思えない完成度

 今回は、Parrotの小型ドローンの新製品Rolling SpiderとJumping Sumoを試遊してみたが、どちらも非常に良くできた製品であり、こうしたオモチャが好きな人なら夢中になること請け合いだ。

 Rolling Spiderの方が、操縦がやや難しいので大人向けと言えるが、宙返りのアクロバティックな動きは、何度見ても驚異的だ。Jumping Sumoは、カメラ映像を見ながら操縦すれば、自分が小さな生物になったような気分になるのが楽しい。ただし、Rolling Spiderは飛行時間がかなり短いので、じっくり遊ぶには、予備バッテリが欲しくなる。スマートフォンやタブレットからアプリを使って操縦するため、アプリがバージョンアップすれば、新たな動きができるようになる可能性もある。両製品とも、オモチャとして子どもだけに遊ばせるにはもったいない逸品と言える。

(石井 英男)