BCN、ネットブック市場はUltrabookとタブレットが侵食

森英二氏

4月12日 発表



 BCN株式会社は12日、都内で記者会見を開催し、デジタル家電に関する2011年度の動向を取りまとめた。この中で同社アナリストの森英二氏は、PCやタブレット端末、スマートフォンに関する市場動向について説明した。

 同氏はまず、タイ洪水で影響の大きかったHDD市場について解説。2011年11月にHDDの平均単価が大幅上昇したのに合わせる形で、HDDの販売台数比は58.5%、販売金額比は65.7%と大幅に前年同期を下回った。しかし2月~3月以降は平均単価がやや下落したこともあり、徐々に回復しつつあるという。

 容量別販売台数構成をみると、価格が上昇する以前の2011年8月~10月では2TBが4割近くシェアを占めていたが、価格上昇後は1TBモデルとともに、2.5TB以上の容量帯の拡大が目立つ結果となった。

 平均単価の変動率を見ると、1TB/2TBモデルは2012年1月に入ってから下落が始まっているが、2.5TB以上のモデルは11月をピークに先行して下落する形となっている。結果として値ごろ感が強い2.5TB以上のモデルが構成を占める割合が高くなった。

HDDの販売台数/金額推移と容量別構成比HDDの平均単価の推移

 また、タイ洪水で特にキヤノンが影響を受けたインクジェットプリンタ市場については、年末にキヤノンが主力モデルである「MG6230」の数を確保できなかったこともあり、エプソンが市場を牽引する形となった。特に2011年11月の第2週は、エプソンがキヤノンに対し28.5%のシェア差を付けた(55.9%)。しかし2月以降はキヤノンがMG6230の数を確保し、CMで宣伝を開始した露出効果もあり、シェアは回復しつつあるという。

 インクジェットの販売台数/金額ともに堅調で推移し、長期にわたり台数比で約1割前後、前の年を上回る結果となった。

インクジェットの販売動向インクジェットのメーカー別シェア

 PC本体に関しては、単価下落が7万円台で一段落した。販売台数は堅調で前年同期を上回り、震災があった2012年3月と1年経った2011年3月で比較すると、販売台数で33.2%増、金額比で11.2%増。好調だった2010年3月と比較すると、金額比こそ1.7%減となったものの、台数比で27.8%増となった。

 メーカー別シェアでは、ノートではNECと富士通、東芝が1位グループにつける一方で、日本エイサーやASUSTeK、レノボ・ジャパンも食い込んできている。一方デスクトップではNECが圧倒的で、2位以下は富士通や日本エイサー、東芝などがひしめく形となっている。なお、BCNとしては今後もNECとレノボは別々に集計する方向を継続するという。

PCの販売実績の推移メーカー別シェアの推移

 ノートPCの構成比をみると、いわゆるA4ファイルサイズの「スタンダード」が9割のシェアを占める一方で、2011年11月以降はUltrabookの登場によりネットブックの市場が食われつつあり、2012年3月時点では2.8%対2.7%と、Ultrabookがネットブックを上回った。一方で平均単価の推移をカテゴリ別に見ると、スタンダードモバイルが比較的流動的と言える。

 重量と駆動時間の関係、そして記憶容量と画面サイズの関係を元に、各製品を位置づけてみると、Ultrabookとスタンダードモバイルはほぼ同じ立ち位置にある。今後はUltrabook市場の拡大により、スタンダードモバイル市場も侵食されていくだろうとした。

 一方、画面サイズ別にみると、8型未満ではタブレット端末がネットブックのシェアを押し下げた。また、ネットブック新製品がないことも影響しているが、8型~14型で見ても、タブレット端末がシェアを伸ばす形ネットブック市場が圧縮される形となった。

ノートPCの販売台数構成比や平均単価製品のカテゴリ別の分布タブレットとUltrabookによってネットブック市場が侵食

 そのタブレット端末であるが、iPadをはじめ各社が新製品を投入することにより、市場拡大に拍車がかかっている。メーカー別ではアップルが圧倒的で、ソニーやレノボ、日本エイサー、富士通、東芝、ASUSTeK、Samsungなどが1桁のシェア争いとなっている。

 とはいえ、Retinaディスプレイを採用した新型iPadは、従来のiPad初代やiPad 2と比較するとやや苦戦しており、累計販売台数の伸びは緩やかなものとなっている。初代のiPadはWi-Fi+3Gモデル、64GBモデルなど、比較的ハイエンドモデルが選ばれる傾向だが、iPad 2や新型iPadでは、Wi-Fiモバイルルーターやクラウドサービスの普及により、16GBモデルやWi-Fiのみモデルが選ばれるようになっているという。

タブレット端末の販売台数推移タブレット端末のメーカー別販売台数シェア
iPad初代、iPad 2、新型iPadの立ち上がりの比較iPadの売上構成比の比較

 スマートフォン市場は好調であり、2012年3月末では、市場のうち8割近いシェアをスマートフォンが占めるようになった(残りはフィーチャーフォン)。メーカー別に見ると、アップルが依然として強いが、2012年3月はソニーモバイルの「Xperia arco HD」がAndroid市場全体を牽引する結果となった。

 キャリア別にみると、2011年11月以降はNTTドコモがシェアを高めた。また、2012年3月はNTTドコモ/au/ソフトバンクの3キャリアともに、スマートフォンの販売台数構成比が7割を超えた。キャリアごとのスマートフォンメーカー別台数シェアでは、ソフトバンクがApple(iPhone)に約8割と依存度が高いが、NTTドコモやauではシャープや富士通、ソニーモバイルコミュニケーションズに牽引される形となっている。

スマートフォンのメーカー別販売台数シェアとOS搭載構成比キャリア別のスマートフォン比率キャリア別の製造メーカー別シェア

 無線LANの親機の販売台数は、プリンタやデスクトップの対応度の高まりに合わせる形で、前年比2割強で推移。Wi-Fiルーターなどのデータ通信機器もメーカーの多様化により急激に増加している。データ通信機器キャリア別ではイー・モバイルやau/WiMAXなどが牽引している。また、データ通信機器自体も、(USBドングルなどから)Wi-Fiルーターへ急速にシフトしつつあるとした。

無線LAN親機の販売台数比較や対応製品構成比の推移データ通信機器のキャリア別の販売台数シェアとメーカー別シェアモバイルWi-Fiルーターが占める割合

(2012年 4月 12日)

[Reported by 劉 尭]