BCN、震災によるPC市場への影響は軽微

道越一郎氏

4月7日 発表



 株式会社BCNは7日、「PC・デジタル家電の震災インパクト」と題した記者会見を都内で開催した。

 BCNは、全国大手家電量販店のPOSデータを日時で収集し、商品カテゴリごとに集計した情報を配信しながら、売上動向などを分析している。今回、3月11日に起きた東日本大震災で、PCやデジタル家電市場に影響があったかどうか分析し、取りまとめた。

 なお、現時点では大震災が起きた3月11日~13日の販売データの一部が欠落している。そのため前年比などの絶対比較データについては、欠落部分を推計して算出。そのほかの相対比較のデータに関しては暫定値として算出。そのため、今後数値に若干のブレが生じる可能性があるとしている。本稿では、PCとスマートフォンの動向を中心に取り上げる。

●全体への影響は約1.2%減に留まる。UPSへの特需も

 アナリストの道越一郎氏によれば、被災の大きかった岩手県、宮城県、福島県の東北3県のデジタル家電/PC製品全体は、震災がなかった場合の売上推計値を100とした場合、数量比で30.4、金額比で25.3と、7割減の水準と大きく減った。しかし、全国の売上から見た場合、この3県が占める割合が1.8%前後のため、全体への影響は1.2%減と軽微だった。

 地域別に見た場合、北海道や東北、関東地域が、地震翌週で3~4割前後減ったが、その他の地域はほぼ堅調に推移し、全国で見た場合、地震翌週で17.9%減に留まり、それ以降はプラスに転じている。

震災によるインパクトデジタル製品の販売動向震災による全体のインパクトは軽微
地域別で見た場合の全体の動き地域別のPC売上推移

 一方、地震による計画停電の影響で特需があった製品として、UPS(無停電電源装置)が地震直後の翌週には前年台数比で6倍弱、それ以降も5倍、3倍の増加となった。ただし、市販されているUPS本来の目的は、停電時にデスクトップPCを安全にシャットダウンさせるためのものであり、“無停電電源装置”という名前から、長時間動作するバッテリとして勘違いして購入するユーザーが多く、メーカーも対応に追われているという。

 このほか、地震や原子力発電所の事故などについての情報をリアルタイムに得るために、ワンセグチューナなどを購入するユーザーも多く、地震翌週に2~3倍強までに売上台数比を伸ばした。

地震直後の特需製品UPSの売上動向

●PCはSandy Bridgeの不具合による影響が大きい
森英二氏

 PCやスマートフォン市場の動向については、アナリストの森英二氏が解説。このところ順調に売上台数を伸ばしてきたPC市場だが、2011年3月は2010年2月以来の前年割れの4.8%減となった。しかし森氏によれば、「地震の影響よりも、Sandy Bridgeを搭載した春モデルの発売延期による影響が大きい」といい、ノートとデスクトップPCともに同様の傾向がみられる。

 シェア別にみると、ノートPCでは、東芝とNEC、富士通がトップ3を争う。一方デスクトップは、富士通がSandy Bridge対策済み製品を2月中にリリースできたこともあり、21%のシェアと、NECの21.9%に迫る勢いを見せた。

 春モデルの販売台数指数は、3月時点でノートが11.62、デスクトップが4.27と、デスクトップが若干遅れている。しかしSandy Bridge搭載モデルの台数構成比をみると、ノートPCが13%で少し頭打ちになっているのに対し、デスクトップは16%からさらに伸びている、今後少し伸びるだろうとした。


春モデルの発売延期による影響デスクトップ、ノートともに前年割れとなった
シェアの推移春モデルの販売し数とSandy Bridge搭載販売台数構成比

 スマートフォンの売上に関しては、携帯電話の市場全体におけるスマートフォンの割合が47.2%まで伸びているという。また、OSのシェアに関して、2010年11月以降はAndroidがiOSを抜き、2011年3月で78.2%となった。

 また、NTTドコモが3月に投入した「Xperia arc」は、iPhone 3Gの初日の販売台数を1とし、累計販売台数を算出した場合、7日目で4.5とこれまでにない初速を記録した。また、2010年6月以降は、赤外線やワンセグ、2010年10月以降は電子マネー機能を搭載したスマートフォンが現れ、販売台数構成の4~5割を占めるなど、フィーチャーフォンに近い機能をスマートフォンで提供できているとした。

スマートフォンが4割台の構成比を維持OS別のシェアとキャリア別のシェア
Xperi arcの立ち上げは好調赤外線やワンセグ、電子マネー機能の搭載率は増えている

(2011年 4月 7日)

[Reported by 劉 尭]