ソニーは、9月17日に「Sony Tablet S」を発売した。東京・秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでは、午前9時30分の開店を約10分繰り上げてオープン。神奈川県川崎市溝の口から駆けつけ、午前3時から並んだ男性を先頭に約20人が列を作った。
ソニーの平井一夫副社長は、「万を持して投入した製品。Sony Tabletによって、新たなエンターテイメントの世界を体験してほしい。これまでのタブレットとは異なる体験を提供できる」と語った。
Sony Tablet Sシリーズは、スレート型端末で、OSにAndroid 3.1を採用。9.4型のIPS液晶ディスプレイを搭載した偏重心設計により、片手で軽く感じ、バランスよく持てるといった工夫を凝らしている。今回発売したのは、Wi-Fiモデルだが、3Gモデルを10月以降に発売。今後は、Android 3.2へのアップデートも予定されている。
また、10月~11月にかけて、2画面タイプのSony Tablet Pシリーズを発売する予定であり、こちらは、Android 3.2を搭載する。
ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの松井昭二郎店長は、「出足は好調。実際に触ってみたが、ソニーならではの使いやすさを感じている。昨日までは展示数が少なかったが、今日からは多くの展示機を用意できた。iPadの展示コーナーの横にもSony Tabletの展示コーナーを用意したので、ぜひ比べながら体験してほしい」としたほか、「すでにSony Tablet Pに関する問い合わせも増えている」などと語った。
また、ソニーマーケティングの栗田伸樹社長は、「多くのお客様がこの日を待っていただき、販売店でもそれに向けてしっかりと準備をしていただいた。ソニーは、今日からタブレットという新たな市場に参入する。これは短期的な勝負ではなく、中長期的な戦いになる。その第一歩を踏み出したのが今日であり、まずは『みんなのタブレット』という提案によって、Sony Tablet Sの販売に力を注ぐ」と意気込みを語った。
同日午後1時からは、東京・水道橋の東京ドームホテルで、Sony Tabletの発売を記念した「First Owner's Party」を開催。この日、Sony Tabletを購入したユーザー200人に限定した特別イベントと位置づけ、初日の購入者が集い発売を祝った。
同パーティーでは、ゲストとしてタレントの山本梓さん、アーティストのLiSAさんが登場。さらにセットアップサポートやSony Tablet担当者によるトークセッション、オリジナルアイテム争奪ゲームなどが行なわれた。
トークセッションでは、「セールスポイント」、「骨が丈夫」、「アプリ百本ノック」、「千差万別」などのキーワードが示され、開発に関わるこぼれ話などが披露された。
トークセッションに参加したのは、ソニー コンスーマープロダクツ&サービスグループ VAIO & Mobile事業本部企画戦略部門 企画2部 商品企画課の飯田みのり氏、同モバイルデバイス部門商品設計1部2課の鈴木雅彦氏、モバイルデバイス部門ソフトウェア設計部3課の佐藤隆氏の3人。
Sony Tablet Sのセールスポイントとしては、優れたデザイン性、気持ちよく動く操作性、ソニーならではのエンターテイメント性、機器連携の4つとし、「こだわりのデザインと、サクサク動く操作性、音楽や映画、ゲームなどをワンタッチで利用できること、さらにTVを始めとした家中のリモコン代わりに利用できることかがSony Tabletの特徴」などとした。
また、表面をプラスチックにしているものの、内部にはマグネシウム合金を使用し、「人が乗っても壊れない」、「1mの高さから落下させても動作する」という堅牢性を実現していること、湿気の多い場所や最高気温を記録した環境でも利用できることを紹介。さらに、片手で持った際に、最も軽く感じる重心にこだわったこと、丸くてくさび形のSony Tabletのデザインは、四角い部品が多いコンピュータにおいては、設計者泣かせであったが「ソニーは空気を売らない」というコンセプトのもと、内部構造を徹底的に見直し、余計な空間を作らないほどに部品をレイアウトし、課題を解決したことなどを披露した。
そのほか、「設計段階では指先での操作が問題なく動いていたが、外国人が操作するとなぜかうまく動作せずにその原因究明に苦労した」として、「乾燥肌の人の反応が悪く、それを改良した。社内の乾燥肌の人のリストを作り、試作品が完成するとまずその人に操作してもらうということを4カ月ほど繰り返した。また、ソファに寝ころんだり、お腹の上に置いてもちゃんと動作するように、椅子をいくつも並べてそこに疑似ソファを再現し、寝ころびながら検証した」という逸話を明かした。さらに、「ネイルをしている女性が指の横で軽く操作しても動かせるという操作性を実現するのにも苦労した」などと語った。
また、社内でアプリケーションを開発するたびに、サクサク動作しないものは次々に却下し、ホーム画面もサクサク動くことを前提に完成度を高めたことを紹介。さらにウォークマンの開発チームが参画し、タブレットならではの音楽視聴の提案にこだわったことなども明らかにした。
First Owner's Party会場では無線LAN環境も用意され、購入したばかりのSony Tabletを真剣に操作するシーンがあちこちのテーブルで見られていた。
(2011年 9月 20日)
[Reported by 大河原 克行]