キヤノンは8月31日、インクジェット複合機/プリンタ「PIXUS」シリーズの2011年モデルを発表。これに伴い、東京品川にあるキヤノンマーケティングジャパンの本社ビルで製品発表会を開催した。
各モデルの詳細については関連記事を参照されたい。この記事では製品発表会の模様をお伝えする。
●年間で出荷台数3%増を目指す川崎正己氏 |
冒頭では、キヤノンマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長の川崎正己氏が挨拶。実はこの日は午前中にエプソンが対抗となるインクジェット新製品の発表会を行ない、午後にキヤノンが発表会を開催したということもあり、「その足で直接こちらへお越しの方も多いと思うが」と笑いを誘った上で、「両社の製品を紹介、そして比較、評価していただき、市場活性化に繋げていただきたい」と、競合に対する余裕を見せた。
続いて、東日本大震災での活動、および影響などを紹介した。東日本大震災の復興活動の一環として、津波などの被害にあった家庭の瓦礫などから、家族のアルバムの写真など拾い出して修復する活動がある。キヤノンはこの活動にプリンタを提供するなど協力を行なっているが、多くの地元の人がこの活動を通して、家族の絆の大切さを再認識するとともに、写真の重要さを改めて知ったという。また、キヤノンとしても、デジタルカメラとプリンタを両方提供する意義を再認識したという。
一方、上半期は東日本大震災、さらにはアメリカの経済不況により、消費者の購入意欲が低下し、市場全体は思わしくなかった。その一方で、キヤノンは4~6月期の出荷前年比は4%増と、市場全体を上回った。10月~12月に関しては、新製品の投入により、上半期のマイナスを取り戻し、2011年年間で3%増を目指すとした。
復興活動の一環として、瓦礫の中に埋もれたアルバム/写真を修復する活動 | ユーザー/キヤノンともに写真の意義を再認識した |
国内経済の見通し。下期は回復へ向かう | 国内のインクジェット市場の動向 |
次に、新製品の開発コンセプトについて紹介した。同社のユーザーアンケートによると、2台以上のPCを利用しているユーザー、およびリビングにプリンタを設置しているユーザーが半数あるという。また、無線LANの普及増加により、「PCは個室で個人利用、プリンタはリビングで共有」といった使い方とニーズが増えたという。そこで新製品では、無線LAN対応モデルを低価格帯モデルにまで拡大し、ニーズに応えた。
さらにアンケートによれば、ユーザーが購入時に重視した項目として、従来のプリント画質に加えて、操作のしやすさ、本体のデザインなどを選ぶ人も増加した。そこで新製品は、多機能/キレイ/ハヤイ/コンパクトといった「機能価値」に加えて、エコロジー/デザイン性/静粛性/快適性といった「生活価値」を追求し、「快適な生活を提案する製品へと進化した」という。
2台以上のPCがあり、プリンタをリビングに置くユーザーが半数となる | 無線LANの普及 | 画質以外への追求 |
機能価値だけでなく、生活価値を付加 | 新製品7機種9モデル |
その中で具体的に主力モデルである「MG6230」を取り上げ、無線LAN対応、騒音を抑える「サイレントモード」、メニュー項目に応じて操作できるボタンのみを光らせる「光でナビゲート」、そしてエコに貢献する自動電源OFF機能や自動両面印刷機能への対応を謳った。さらに、スマートフォンやクラウドサービスからの直接印刷、PCのアプリケーション機能の充実なども図り、生活における利便性を向上させた。
MG6230の主な特徴 | 3色展開でさまざまなライフスタイルにマッチするという | 新製品ラインナップの位置づけ |
新製品の投入に伴い、3つの分野におけるリーディングカンパニーを目指すというマーケティング目標も掲げた。まず、先述の多機能化/生活価値の提供により、マーケットシェアNo.1を目指す。次にコールセンターやサービスセンターの改善により、顧客満足度の向上を目指す。ことコールセンターについては、対応率/応答率の向上により、サービス品質基準である「COPC2000」を取得済みであるとアピールした。さらに、インクジェットカートリッジの「里帰りプロジェクト」の推進、カートリッジ回収に伴う募金活動「ふるさとプロジェクト」への参加など、社会貢献活動の充実を目指すとした。
3つの分野でのリーディングカンパニーを目指す | 製品と機能の充実によりマーケットシェアNo.1を目指す | 顧客満足度向上に向けた取り組み |
インクジェットカートリッジ里帰りプロジェクトの継続 | 社会貢献活動への参加 | インクジェットカートリッジ回収では1個につき1円、トナーでは1個につき3円、NPOを通して募金する。復興支援中はそれぞれ1円増やすという |
●動作音を抑えるサイレントモードも搭載
清水勝一氏 |
続いて、キヤノン株式会社 常務取締役 インクジェット事業本部長の清水勝一氏が、新製品の特徴について解説した。
製品紹介は、主力モデルであるMG6230を中心に行なわれた。MG6230から、新色の「ブロンズ」を投入し、3色でラインナップ展開されるが、これによりユーザーのライフスタイルにあった、よりパーソナルなプリンタへ進化できたという。また、無線LANの搭載により、スマートフォンとの親和性を高めた。Appleの製品で使えるAirPrintにも対応予定としている。
また、リビングに置いて共有するプリンタとして、深夜や小さなお子様がいる家庭でも使えるよう、新たに「サイレントモード」を搭載、同モードをONにすることで、稼動音を約23%(約49dBから約37.7dB)に抑えられるという。
10周年を迎えたPIXUSシリーズ | よりパーソナルなプリンタを目指したMG6230 | 無線LANの搭載により、スマートフォンとの親和性を高めた |
稼動音を抑えるサイレントモードの搭載 | 必要なキーのみが光るIntelligent Touch System」 | クラウドへの対応 |
2010年以降急速に普及したスマートフォンによって、クラウドも重視されるようになった。そこで新製品は「PIXUSクラウドリンク」により、対応するオンラインフォトアルバムやWeb定型フォームをPCレスで印刷できる機能を搭載した。また、11月下旬には、GmailやGoogleドキュメントをスマートフォンや携帯電話から印刷指示させられる「Googleクラウドプリント」サービスも開始し、さらなる機能充実を目指す。
PIXUSクラウドリンク機能を上位モデルで搭載し、PCレスでオンラインコンテンツの印刷が可能 | Googleクラウドプリント機能も対応予定 |
一方、PC上からの印刷機能としては、動画からコマをキャプチャして印刷するフルHD動画プリント機能を強化。新たにビデオから複数枚切り出して1枚の紙に印刷する「レイアウト機能」、複数枚切り出して1枚の画像に合成する「フレーム合成機能」を追加し、ゴルフや野球など、スポーツシーンで有効に使えるという。
写真にエフェクトを掛ける「お楽しみフィルター」も、新たに魚眼風、背景ぼかし、ジオラマ風、トイカメラ風などを追加し、より写真を楽しめるようにしたという。
ハードウェア面では、新開発したFINEカートリッジにより、赤の色味を増強させた。また、自動両面印刷機能や自動電源OFF機能を追加するとともに、これらによる用紙節約枚数やCO2削減量を表示する機能を追加した。
2006年モデルと比較して小型化 | フロントオペレーションの採用 |
●MG6230を中心としたプロモーション
佐々木統氏 |
最後に、キヤノンマーケティングジャパン株式会社 取締役専務執行役員 コンスーマイメージングカンパニープレジデントの佐々木統氏が、マーケティング/プロモーション戦略について紹介した。
新製品は、先述のように「機能価値」に加えて「生活価値」を付加させたものだが、これに伴い、プロモーションもPIXUSがそれぞれのライフスタイルにあわせて進化し、快適な生活を提案することをメインとしたものとなった。
プロモーションは、やはり主力であるMG6230を中心に行なわれ、TV CMもMG6230の3色展開を紹介するものとなっている。具体的には、ブラックモデルは20代~30代の男性ユーザー、ホワイトモデルは20代~30代の女性もしくは家族、ブロンズモデルは40歳以上のユーザーをターゲットにしている。CMもそれにあわせて「スマートな人の黒篇」、「家族思いの白篇」、「オトナのブロンズ篇」の3種展開となっている。CMは、俳優の岡田将生氏に加えて、新たに芦田愛菜ちゃんを起用。それぞれ3色のモデルにあわせたリビングをモチーフし、製品を紹介している。
生活価値を前面に出すプロモーション | プリンタにより快適な生活が送れるという提案をする |
岡田将生氏のプロフィール | 芦田愛菜ちゃんのプロフィール |
ブラック、ホワイト、ブロンズのCMより1シーンずつ |
また、引き続き教育/文化の支援活動、年賀状の啓発活動、年末商戦に向けた商品ラインナップの充実などをしていくとした。
(2011年 8月 31日)
[Reported by 劉 尭]