日本マイクロソフト株式会社は10日、Windows Phone 7.5に関する説明会を開催した。
同OSを採用するスマートフォンとして、国内ではKDDIが富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製端末「Windows Phone IS12T」を9月より発売することが発表されている。本説明会では、OS回りの特徴について解説がなされた。
横井伸好氏 |
まず、同社業務執行役員コミュニケーションズパートナー統括本部長の横井伸好氏がWindows Phone 7.5の概要を紹介した。まず横井氏は、Windows Phone 7がこれまでのWindows Mobileからの発展ではなく、全く異なるものであることを強調。今の時代のスマートフォンに求められる機能、デザイン、ユーザーインターフェイス(UI)を盛り込み、新規に開発したものだと述べた。
また、横井氏は、「スマートフォンと言ってもその定義はいろいろあるが、そもそもは電話である。そして、電話はコミュニケーションのための端末である。その点から(Windows Phone 7は)、メールやTwitter、Facebookなど、各種コミュニケーションツールをOSに統合し、アプリからではなく、人を選んでから行動を選択する」と述べ、コミュニケーションを取りたい対象となる“人”を中心に据えた設計であると語った。
UIは、自ら「Microsoftの従来のOSとは一線を画す」と語る特徴的な「メトロデザイン」を採用。トップ画面には、アプリのアイコンの代わりに、大きめな方形で着信数や、未読メール数など直近の情報も表示する「タイル」が並び、アプリを起動しなくても大まかな情報を参照できる。また、画面を右にスワイプすることで、行動/情報を絞っていくパノラマUIは、片手での操作がしやすくなっている。
このほか横井氏は、ローカルとの境界をユーザーに意識させないクラウドとの統合性や、開発者に対するエコシステムの提供においても、競合に対して抜きんでているとした。
ロードマップ的にはWindows Mobileに続くが、中身や狙いは全く別というWindows Phone | Windows Phone 7の4つの特徴 |
石川大路氏 |
続いて、同社コミュニケーションズパートナー統括本部エグゼクティブプロダクトマネージャの石川大路氏が、デモを交えながら主立った特徴を紹介した。
Windows Phone 7.5では、行動の端緒が「ハブ」にまとめられている。まずはトップ画面から、誰かとコミュニケーションを取る場合は「Peopleハブ」、写真を管理するなら「Picturesハブ」、ゲームをするなら「Gamesハブ」のタイルを選ぶ。
従来、誰かにFacebookでメッセージを送りたい場合は、そのアプリを開いてから、対象の人を選んでいたが、Windows Phone 7.5では、Peopleハブから、まず人を選んだ後に、メール送信、Facebookのウォールへの投稿、チャットといった行動を選択する。また、各種SNSが統合されているので、その人の画面から右にスワイプすると、電話、メール、SNSといったコンタクトの履歴が一元的に表示される。
Microsoftならではの機能としては、ブラウザとしてPC版と同等機能を備え、速度面でも業界最高峰を謳うInternet Explorer 9を搭載。また、ビジネスではOffice文書の表示/編集ができ、ゲームではXbox LIVEと連携できるほか、ZuneソフトウェアをPCにインストールすることで、各種メディアデータやアプリをPCで管理することもできる。
トップ画面はアイコンの代わりにタイルが並ぶ | ブラウザのブックマークなどをタイルに登録することも可能 | |
人やデータを選んでから行動を選ぶハブ構造 | 特定の人を選ぶと、各種サービスの最新情報を一元表示できる | Xbox LIVEとの連携も可能 |
吉田剛厳氏 |
マイクロソフトディベロップメント株式会社オフィス開発統括部リードプログラムマネージャの吉田剛厳氏は、日本語入力について解説を行なった。
日本語変換機能は当然日本語版のみのものだが、英語版ではQWERTY式のみなのに対し、日本語版には独自の日本語10キー入力機能が実装された。
これは携帯電話の日本語10キー入力を発展させたもの。同様の機能は競合製品にもあるが、Windows Phone 7.5では、マルチタップ、フラワー、フリック、カーブフリックの4種類の入力方式を切り換えることなく使える点がユニーク。
マルチタップというのは、フィーチャーフォンのように、同じボタンを複数回タップして、「あ→い→う」となる。そのまま、「あ」を押し続けると、上下左右に「い、う、え、お」が表示されるので、指をずらして、文字を選ぶ。これがフラワーで、ほかの文字が表示されるのを待たずに上下左右にフリックしても、「い」や「う」を入力できる。最後のカーブフリックというのは、濁音や半濁音、促音のある文字について、その斜め上にまでフリックすることで、ほかのボタンをタップすることなく入力できる機能。前述の通り、これらは切り換え不要なので、好みや習熟度に応じて、使い分けることができる。
なお、斜めにまで入力判定を持たせたことで、上下左右だけのフリックに比べ、カーブフリックでは入力がシビアになってしまう。そこで、同社は、100種以上のデザインにおいて、左親指、右親指、人差し指それぞれのスタイルで、特定の文字を入力した際に、フリックがどういった軌跡を描くかをロギングするツールを開発し、ユーザーが意図した通りの入力がなされるよう最適化を行なったという。また、同社は「Text Text Revolution」というタイピングゲームを提供しているが、ここで行なわれたフリックに関するデータも随時収集され、今後のさらなる最適化に活かされる。
予測入力についても、PC版のOffice IMEを経由して収集した約3億語の入力データを元に、実世界のデータをベースにした予測辞書を開発したほか、同IMEの開発で使用している膨大な例文を活用した次単語予測や、入力履歴による予測などにより、少ない操作で効率的な入力ができるようにした。
日本語10キーは4種類の入力が可能 | 濁音なども1アクションで入力できるカーブフリック | 誤判定しないよう、最適化を行なった |
【動画1】カーブフリックで掲示された文字を入力し、その軌跡のログを収集して最適化を行なった |
【動画2】慣れたユーザーがカーブフリック文字入力を行なっているところ |
中島憲彦氏 |
最後に日本マイクロソフト コミュニケーションズパートナー統括本部エグゼクティブプロダクトマネージャの中島憲彦氏が、マーケットプレースについて解説した。
競合との違いとしては、お試し版用のAPIを用意することで、開発者は1つのバイナリを書くだけで、有償版と無料で試用できるお試し版を用意できる。これにより、開発工数が減らせるだけでなく、ユーザーの購入率を向上できるという。
また、Windows Phone 7から7.5へ切り替わったタイミングで、審査前のアプリをマーケットプレースを通じて、ベータ版として一般公開することなく限定したユーザーにだけ配布する機能や、製品版アプリを指定したユーザーにだけ配信する機能も追加された。
なお、マーケットプレース上の有料アプリを、キャリアからの携帯電話の利用料などと一緒に課金する機能はすでに用意されており、キャリアの準備が整えば、その機能を利用することも可能となっている。
審査については、第三者機関も含め数段階でコードが精査されるほか、アプリには限られたアクセス権しか与えられていないことから、高度なセキュリティが実現されており、PCのようなアンチウイルスソフトは必要ないという。
質疑応答では、今後の国内での他のキャリアへの展開も含めた予定についてコメントは避けたものの、端末メーカーが独自にドライバを用意して特定のハードウェアを実装することはできる設計になっているため、おサイフケータイといった日本独自の機能について、対応は可能であるとの見解を示した。
PCでの経験/環境を活かした開発が可能 | マーケットプレースにはベータ版や、プライベートな配布機能もある |
(2011年 8月 12日)
[Reported by 若杉 紀彦]