【MIX11レポート】コードネームMangoこと「Windows Phone 7.5」をデモ

Joe Belfiore氏

会期:4月12日〜14日(現地時間)
会場:米国ラスベガスMandalay Bayホテル



 米ラスベガスで開催中のMIX2011で、MicrosoftはWindows Phone 7の最新アップデートとなるコード名“Mango”(マンゴー)の詳細を披露した。後の技術セッションで明らかになったところによると、正式にはWindows Phone 7.5というバージョンになるが、ブランド名としてはWindows Phone 7を継続する可能性もあるとのこと。ここではMangoと呼ぶことにする。

 Mangoは、5月に対応アプリケーションの開発ツールの正式版が提供される。OSの公式な提供時期は明らかではないが、各社が秋頃までに搭載製品を出すと思われ、それに間に合うようにするのは間違いないだろう。いずれにしろ5月に開発ツールが提供されるというタイミングを考えると、日本での登場は今年後半以降となるだろう。だが、その内容は、それを待ってるのがもどかしいほど魅力的だ。

●いよいよ日本語対応、今年後半には登場か

 Windows Phone担当副社長のJoe Belfiore氏によると、Mangoでは日韓中などアジアの言語を含む16カ国語に新たに対応。もともと日本語表示は可能だったが、日本語版ではメニューなどの日本語化に加え、日本語入力メソッドも装備される。

 ロック画面のみだが、日本語版の画面デザインも公開された。日付が縦書きになるなど、アジア系言語に対する配慮を感じるが、Zune以来のMetroユーザーインターフェイスの日本語表示に関しては、まだ調整中という。公開されたロック画面に関しても、あくまで例であり、フォントデザイン含めて未定とのことだ。

 見た目のカッコ良さが重要である事を、Microsoftはかなり意識しているようで、たとえば日本語化する場合の訳し方にも配慮をしているという。当然、フォントデザインは重要になるが、新規にフォントデザインをやり直すのかとの質問に対しては「どちらであるとも答えられない」との事だった。新デザインのフォントを評価しているが、最終的にどうなるかはまだ決まっていないということだと推察される。

Mangoで追加される16の言語 いよいよMangoから日本語がサポートされる。縦書きの日付に注目

 なお、Windows Phoneにはシステムを拡張するソフトウェアのインストールは許されていない。このため、サードパーティ製の日本語入力メソッドが使えない可能性がある。この点に関して日本Microsoftの関係者からは「システム上、追加できない仕様」との答えが返ってきた。おそらくiPhoneと同様の扱いになると考えられる。

●毎日140本のペースでWindows Phone 7アプリが増加中
Mango搭載のWindows Phoneが発売される国は35カ国に

 この国際化対応の進展により、Windows Phoneの販売地域は16カ国から35カ国に拡大する。あわせて、それぞれの地域言語に対応したアプリケーションのマーケットプレイスが開設される。そのWindows Phone向けアプリケーションの登録本数だが、現時点で12,000本を超えたとBelfore氏は話した。

 当初は毎日120本程度のペースでマーケットプレイスへの登録が行なわれていたが、現在は日に140本程度まで増加。コンスタントに増え続けている状況とのことだ。今後、発売地域が拡大することで、さらなる拡大が予想される。Visual Studioや.NET、Silverlightに精通したエンジニアが多い事を考えれば、一度、マーケットプレイスが立ち上がってくれば、アプリケーションのバリエーションで困ることはなくなるだろう。

 また、スマートフォンにとって重要なアプリケーションであるSNSクライアントに関して、従来のFacebookに加え、Twitterもデフォルトのユーザーインターフェイスに統合。iOS版やAndroid版と大きく異なり、OS自体のユーザーインターフェイスに一体化され、グラフィックやアニメーションの面でもリッチなものに仕上がっていた。もちろん、ゲーム開発環境XNAに対応したゲームの質の高さは従来から言われていた通りだ。

 なお、AppleのApp Storeでしばしば問題になるアプリケーション登録審査だが、Microsoftは審査を第三者機関に依頼しているという。Microsoftの事業と競合するアプリケーションの排除といった条件項目はなく、従来、審査を通らなかったケースはバグや勘違い、パフォーマンス不足などによるものが大半だという。

 また審査を通らなかった場合、どの部分にどのような問題があり、契約書のどの条項に合わないといった、次に審査を通すための情報が必ず添付される。

 申請数が異なるであろうAppleと直接比較はできないものの、審査速度も公式には3〜5営業日だが、実際にはほぼ2日で審査が終了するというから、かなり速い。アプリケーション内課金などの制限もないそうだ。

●さらに向上したパフォーマンス

 システムのチューンナップも進んでいる。現行Windows Phone 7は、もともとスマートフォンの中では高レスポンスで軽い操作感と言われていた。それでも、場面によっては操作に対するレスポンスが悪くなる場合もあったが、Mangoではチューニングが大幅に進み、通常の操作の中での引っかかりが大幅に削減された。デモを見ている中でも、動きにはまったく淀みがなかった。

 Microsoftのエンジニアによる講演によると、タスク切り替え時のもたつきが解消されたほか、入力時の遅延、画像展開、メモリ確保のパフォーマンス、それにメモリのガベージコレクトなどが高速化されているという。

 これにより、操作感が向上しているのはもちろんだが、多数のサムネイルを並べるようなユーザーインターフェイスでの画面切り替えがサクサクと動くほか、メモリアロケーションの多いアプリケーションを起動する速度が明確に(場合によっては2倍以上の速度)に上がり、写真アルバム表示などでのサムネイル表示速度も目に見えて高速化していた。

マルチタスク機能を拡張。バックグラウンドで動作するLive Agent機能が追加されている

 Windows Phone 7以降のマルチタスクは、Windows Mobile時代とは異なり、あくまでプログラムの切り替え処理であり、同時に複数のプログラムが動いているわけではない。これはiPhoneも同じだ。複数のアプリケーションが無計画に動作することでバッテリを急速に消費することを防ぐためだ。

 たが、中にはバックグラウンドで動いて欲しいものもある。そこで、(これもiOSで似た機能があるが)MangoではLive Agentというバックグラウンドタスク専用のプログラムが登録可能になった。Live Agentはエージェントの動きを監視し、バッテリ消費が多くなりすぎないよう配慮してあるという。

 Mangoにおけるマルチタスクは、アプリケーションの動作状態レジュームによる疑似的な同時起動の高速化、節電も意識したエージェント機能、(ネットアクセスなど)データ転送のシステムによるキュー管理、それに着信や通知機能などのシステムによる管理、という4本立てでサポートされ、消費電力とパフォーマンスが最適化されている。

 高速と言えば、Internet Explorer 9の速度には誰もが驚くだろう。レンダラーのコアの部分はWindows用IE9と同じコードを共有しているそうで、単に再現性という意味だけでなく、GPUによるハードウェアアクセラレーションの利用なども含め、完全に互換のブラウザになっているという。GPU活用の成果だろうか、HTML5を用いたアニメーションテストでは、iPhone 4のSafariが毎秒2フレーム、Nexus Sのブラウザが毎秒11フレームのところ、MangoのIE9は26フレームが出ていた。


【動画】MangoのIE9が動作する様子。初代SnapDragon 1GHzでの動作パフォーマンス。Webのオーディオ再生アプリで音楽再生してホームに戻る。バックグラウンドのWebオーディオ再生はMangoの新機能。次にIE9でHTML5の新聞サイトを開いて埋め込みのHTML5 Videoを再生。その後、3機種でHTML5のアニメーションベンチマークを実行

●ジャイロセンサーに新対応

 Mangoには他にも多数の変更が加えられているが、そのうちの1つがセンサーの追加だ。従来から加速度センサーは付いていたが、新たにジャイロセンサーも追加される。現行のWindows Phone 7機にはジャイロセンサーは含まれていないが、Mangoと共に出荷される端末からは内蔵される(ただし必須項目ではないので、搭載しないモデルもあるかもしれないとのこと)。

 ジャイロセンサーやLive Agent作成などMangoの機能に対応した開発キットは前述したように5月にリリースされる。ジャイロセンサーのテストを行なうため、端末を3Dグラフィックスで描画し、それをマウスで動かして姿勢変化をエミュレータ上で確認したり、地図上で場所をポイントするとGPSセンサーのAPIにその場所の位置情報を渡したり、地図上の複数の場所をポイントしておき、端末が移動した様子をエミュレータ上で確認するなどの機能が追加されていた。

新たにジャイロセンサーにも対応 Mangoで実現されている事の一覧。かなり多岐にわたっている。たとえばSearch Extrasは検索範囲をネットに拡げて目的の情報を引き出す機能 新しい開発ツールで追加されたジャイロセンサーのエミュレータ上での操作

 Mangoから可能になるXNAとSilverlightの同時利用にも、新しい開発ツールで対応する。たとえばXNAアプリケーションの中にSilverlightの部品を配置し、ゲーム用の3Dグラフィックスの中にテキストボックスなどを組み合わせてアプリケーションを作れるようになる。Silverlightのバージョンも4に上がったことで、リッチテキストボックスやクリップボードなど機能が充実したほか、アジア言語対応など国際化が容易になった。

 インデックス付きデータベースやネットワークソケットへの対応といった事も含まれる。遅ればせながらカメラのRAWデータを直接取得する機能も追加されているという。

 Windows Phone 7は、これまでMicrosoftの携帯電話OSに持たれていた悪評に対して入念に対処していたが、Mangoはさらにそれを磨き込んで高いパフォーマンスを引き出しているように見える。

 そのアプローチの方法は、Androidとは全く異なりiOSにかなり近い。Windows Liveはもちろん、GoogleやYahoo!の各種サービスにも対応しており、もちろんExchangeとの相性はとてもいい。流行からかなり後れての日本登場になる事が懸念材料だが、iPhoneとAndroidが席巻する日本のスマートフォン市場に、大きなインパクトを与える存在になりそうだ。

(2011年 4月 14日)

[Reported by 本田 雅一]