ASUSTeK、NVIDIAと共同で新ノートの発表会を開催
~ゲストに漫画家のモンキー・パンチ氏

G51Jx 3D

4月14日 開催



 ASUSTeK Computerは14日、NVIDIAと共同で3D Vision対応ノート「G51Jx 3D」およびOptimus対応ノート「U30Jc」の発表会を開催した。会場では製品担当者による説明に加え、漫画家のモンキー・パンチ氏などのゲストが3Dについて語った。

NVIDIAのSteve Furney-Howe氏

 まず最初に、NVIDIA日本代表兼米国本社ヴァイスプレジデントのSteve Furney-Howe氏が挨拶した。Furney-Howe氏は、同社の使命は最高のビジュアルコンピューティング能力を提供することだが、これはポリゴンの表示の多さや速さだけを指すのではなく、真のトータルな視覚的体験を提供できるかを意味していると前置きした上で、今回のASUSTeKの新製品により、これまでは専門あるいは高価な設備が必要だった立体視が、家庭でも安価に実現できるようになると述べた。

 続いて、アスース・ジャパン株式会社システムビジネスグループ ビジネスデベロプメントマネージャーのEmilie Lu氏が登壇した。Lu氏は、ASUSTeK本社の会長およびCEOが両方ともエンジニア出身であり、同社は常に最新の技術を製品に盛り込むことに注力してきたと説明。

 日本では2008年にEee PCを発売し、これが大ヒット。2009年にはCULVプロセッサ搭載機も投入し、さらにシェアを伸ばした。この2010年はというと、Lu氏はブランド確立の年と位置づけており、ノートPCのフルラインナップを展開するという。その1例が今回の新製品となる。

 また、G51Jx 3Dは、これまで一部のハイエンドマザーボードやビデオカードに採用されてきたゲーマー向けブランドの「Republic of Gamers (R.O.G)」に属し、このブランドを「Eee」および「ASUS」と並ぶブランド3本柱の1つとすることを明確にした。

アスース・ジャパンのEmilie Lu氏日本では2010年にブランドの確立を目指すR.O.Gもブランド3本柱の1つに

アスース・ジャパンのRay Wu氏

 同じくアスース・ジャパンのシステムビジネスグループ ノートパソコンアカウントマネージャーのRay Wu氏は、G51Jx 3Dについて、メガネがアクティブシャッター式なので、偏光式のように解像度が半分にならない、DirectX 9以降の400以上のゲームタイトルに対応するので、過去にプレイしたものも新鮮な感覚で遊ぶことができる、Power4Gearにより、CPUの本来の仕様を超えたオーバークロックができるといった長所を紹介した。

 NVIDIA Japanマーケティング本部 広報/マーケティング コミュニケーションズ シニアマネージャの中村かおり氏は、同社が独自に行なった3Dに関する一般消費者の動向調査の結果を紹介した。

 これによると、3Dメガネによる立体視を体験したことのある人は全体の60.8%。このうち、立体視を体験した場所は4割超が映画館で、約3割がイベント会場。ちなみに、自宅という回答が1割とやや多く見えるが、これは赤青メガネによる絵本の閲覧なども含まれるため。

 また、3D立体視可能なコンテンツを自宅で3Dで見てみたいかという質問に対しては、70.4%が「はい」と答えており、3Dに対する一般消費者の期待は高まっているとした。

NVIDIAの中村かおり氏立体視の経験の有無自宅で立体視を頼みたい声が強い

 続いて、米Stereo D最高技術責任者兼共同設立者で、3Dコンソーシアムの事務局長も務める泉邦昭氏が3Dの現状と今後について展望した。

 泉氏は、2Dから3Dへの変換などを10年以上にわたって手がけてきた技術者で、映画Avatarにも協力しているという。氏によると、現在ハリウッドでは、Avatar、Alice in Wonderland、Clash of the Titansといった3D映画が記録的な興行成績を収めており、映画業界全体の半分を3D映画が占めるに至っているという。

 家電業界においても、2010年に入ってから軒並み大手各社が3D対応TVへの参入を表明。米国ではすでに競争も激化しており、50型の3D TVが20万円そこそこで購入可能になっている。また、NVIDIAが3D Visionを投入したことや、PlayStaion3、ニンテンドーDSの3D対応表明など、ゲーム業界にも3Dは波及しつつある。

 メーカーが3Dへの取り組みを強化するのには、映画の興行の落ち込みへのてこ入れや、海賊版への対策、中国などに追いつかれつつある先進TVメーカーの差別化といった要因がある。

 3D自体の動きは、過去にも何度かあった。しかし、泉氏は今回の動きは一過性のブームではないと断言する。その理由として同氏は、アクティブシャッターグラスや、120Hz/240Hzといった3D表示技術の進化に伴い、満足のいく画質が得られるようになったこと、ハリウッドが強力にプッシュしていること、3Dに関する業界団体が設立され、視力など安全性が考慮されるようになったといった背景を挙げた。

 また、ビジネスとしても広い分野で成長が期待できるとしたほか、今後は新しい表現手法や、教育、医療、科学解析などへの応用、より現実に忠実な記録の蓄積という新たな可能性が人類にもたらされると締めくくった。

3Dコンソーシアムの泉邦昭氏3Dの牽引者はハリウッド映画この動きはこれまでのブームとは異なる

 最後に漫画家・デジタルクリエーターのモンキー・パンチ氏が登壇した。氏は高校生の時に見た3D映画の衝撃が鮮明で、以降、趣味で3Dに興じているという。ちなみに、同氏によると、秋本治氏など漫画家には3Dに興味の多い人が少なくないという。

 その実例として、まず手書きで描いたルパンのイラストをPCのソフトを使って3D化したものを紹介。会場でも3Dメガネを使って見ることができ、確かに奥行きのある絵となっていたが、段階的なものとなっており、氏の満足がいくものではなかったという。Photoshopを使って力業でやってみたこともあったが、1枚の絵に1カ月以上かかってしまったそうだ。

 続いてCG(ポリゴン)で作った3Dルパンを紹介。こちらは奥行き感がずっと出ている。しかしこれはこれで、印刷物では利用できないため、漫画には転用できない。そういった中、今回のノートPCであれば、気軽に3Dを楽しむことができる。

 また、パンチ氏は日常生活でも、3D対応カメラで孫の映像を撮影するのが好きだが、このノートがあれば、単に見るだけじゃなく、撮影、編集、視聴までもが個人ユーザーでできるようになる点が重要だと話す。今後3Dが普及していくためには、一般ユーザーが技術的にも価格的にも気軽に手が出せることが重要だと考えるからだ。

 同氏はすでに70歳を超えているが、3Dが身近になったことで、ゆくゆくは漫画を立体でお見せできるようになりたいとの希望を語った。

モンキー・パンチ氏手書きの2Dイラストを3D化したもの(c)Monkey Punch
ポリゴンで作成し3D化したルパン(c)Monkey Punch登壇者による記念撮影

(2010年 4月 14日)

[Reported by 若杉 紀彦]