メルコ、アイ・オー、デジオンがデジタルライフ推進の業界団体
~2月1日設立、代表理事にメルコの牧社長が就任

2月1日 設立



 アイ・オー・データ機器、デジオン、メルコホールディングスのPC周辺機器メーカー3社が「一般社団法人デジタルライフ推進協会」を2月1日付けで設立した。英文名は、Digital Life Promotion Association(DLPA)。

 2011年7月の地上デジタル放送への完全移行や、PCでのTV視聴などといった、新たな視聴形態を「デジタルライフ」と位置づけ、利用者にとって、便利で健全なデジタル社会の発展を実現することを目指すという。

 設立趣旨として、「デジタルライフの健全な発展を促し、誇るべき日本のデジタル技術を、海外にも広めることを念頭におき、日本のデジタルライフ環境整備に資することを目的とし、当協会を設立することにした」としており、「情報のデジタル化、ネットワーク化、技術の進歩などにより、多様なデジタル情報の視聴形態が実現しており、これらの新たな視聴形態を普及させるには、会社の枠を超えたエネルギーが必要。新たな視聴形態を提案する企業として、力を結集してその普及に努める」とした。

 主な活動として、「デジタルライフの普及促進および啓発活動」、「デジタルライフの実現に付随する基準、規格、ガイドラインの提案」、「デジタルライフ普及に関連する提案および意見表明」、「デジタルライフと関係の深い、放送、通信、電子機器、家庭電化製品、家電販売などの諸業界団体との連携」などを挙げる。

デジタルライフ推進協会の概要設立時会員はアイ・オー・データ機器、デジオン、メルコホールディングス
デジタルライフ推進協会の設立趣旨デジタルライフ推進協会の事業目的

代表理事に就任するメルコホールディングスの牧誠社長

 代表理事にはメルコホールディングスの牧誠社長が就任。理事には、アイ・オー・データ機器の細野昭雄社長、デジオンの田浦寿敏社長がそれぞれ就任。監事として公認会計士の深井一弘氏が就任する。

 牧代表理事は、「技術進歩により、デジタル情報視聴形態が多様化しており、こうした変化は、放送と通信の垣根を越えた新しいサービスをもたらすが、技術的側面と著作権保護を考慮した健全なルールと基準が必要。同時にユーザーの利便性を守ることも必要。10年程前から年に3~4回欧米を訪れるが、海外のTVの画質はそれほど良くないと感じており、日本のコンテンツ画質のすばらしさを感じる。一方で、日本のTVの画質はいいが、高いために、TVメーカーの凋落を感じざるを得ない。日本の技術を海外で使ってもらうには、日本だけの制約だけに縛られているわけにはいかず、画質のすばらしさと使いやすさをセットにして海外に展開できるように考えることが必要。そうしなければ、海外に追いつき、追い越されてしまう。今後のデジタル放送の広がりに関して、日本がイニシアティブをもってしかるべきである」などとした。

 さらに、「協会を設立するタイミングが遅かったという反省もあるが、レスポンスが速い会社で構成されており、なんとかギリギリ間に合ったのではないか」とした。

理事に就任するアイ・オー・データ機器の細野昭雄社長

 また、細野理事は、「永遠のライバルであるメルコと、席を並べるのは25年間で初めてのこと。決して事業提携ではない」と記者席の笑いを誘ったあと、「設立に参画した3社はデジタルライフ分野では、新参者とされている会社。製品を投入するにあたって、どうしていいかわからないところも多い。デジタルライフにおける課題を、PC周辺機器の立場から解決していく」とした。

 また、「PC周辺機器業界においても、ネットワークメディアプレーヤー、地上デジタル放送用外付けチューナ、PC用地上デジタルチューナなど、さまざまな製品が各社から投入されている。一方でこうした新たな製品や、新たな視聴形態を認知してもらうためには、大きなエネルギーが必要であることを身を持って感じており、市場の健全な発展のためには、企業の枠を超えた活動も必要と考えた」などと、設立の狙いを示した。

理事に就任するデジオンの田浦寿敏社長

 唯一ソフトメーカーとして設立に参加し、理事に就任したデジオンの田浦社長は、「ソフトは、ハードメーカーが決めた仕様に合わせて開発するといったことがこれまでの流れだったが、デジタルの世界では、ソフトが機能を作るという流れがある。その点で、こうした協会の活動にソフトメーカーが参加することは画期的なことである」としたほか、「さまざまな機器やアプリケーションソフトウェアの間で、相互接続性を高く維持していくことは業界全体で取り組まなくてはならない重要な問題であると認識している。ユーザーの利便性を高めつつ、機器を作るメーカーやコンテンツを作る製作者も、それぞれ健全に発展していけるよう、技術面から後押ししていく」とした。

 具体的な観点として牧代表理事が挙げたのが、「デジタルコンテンツを、ネットワークに蓄えて、利用するという点での課題」だ。

 「ホームサーバーから好きなものを選んで、視聴する環境を作りたいのだが、制約の関係で、アナログ時代には出来たことが、デジタル時代になって出来ないことが多すぎる。著作権を尊重する必要があるが、海外では著作権保護がかからないまま利用でき、日本が出遅れる可能性もあり、危機感がある」としたほか、「ARIBに1社ごとに話をしても、1社ごとに話はできないと門前払いされる。その点でも団体として提案する必要があり、そうしなければ企業として生き残れない」などとする。

 また、細野理事は、「デジタルTVでインターネットに接続されている比率は1割以下という調査結果もある。それほど普及していない背景には、著作権に関して、決まっていないことや、利用者から見ておかしいと思う部分が多すぎることに尽きる。ホームネットワークについては、メーカーや著作権者が参加する団体では、ユーザー感覚を取り入れた話が進んでいない。いまの制度は、成功しているとは思えないというのが私の感想。場合によっては、日本に拠点を持つ韓国のメーカーが協会に入ってきて議論をしてもいいだろう」などとした。

デジタルライフのイメージ1社ではARIBに門前払いされるものを、団体として提案してゆく

 同協会では、今後、参加企業を広く募る考えであり、「既存の協会と対抗軸にあるものではなく、他の団体との連携や、海外の団体とも連携していく考えである。今回の参画した企業以外の新規参入会社とも、こうした協力関係は必要である。ただし数十社という規模にはならないだろう」(細野理事)とした。なお、協会所在地は、当面、メルコホールディングスの東京オフィス内に設置する。

(2010年 2月 1日)

[Reported by 大河原 克行]