山田祥平のRe:config.sys

新2010インテルCoreプロセッサー・ファミリーの高性能を人々は何に使うのか



 新しいCPUを搭載したPCは処理性能が高く使っていて快適だ。打てば響くというのはこういうことをいうんだなと実感できる。Intelが新たに発表したCore iシリーズのプロセッサは使う側のユーザーを、そういう気持ちにさせてくれる。でも、その一方で、有り余るほどの処理性能を、いったい何に使えばいいのだろうとも悩むのだ。

●処理性能の高いPCは使っていて気分がいい

 昨秋に出荷が開始されたWindows 7も、今年の出荷に向けて開発が進んでいるMicrosoftのOffice 2010も、その双方が、以前のバージョンであるWindows VistaとOffice 2007から3年以上が経過しているのに、それぞれが求めるハードウェア要件は同じだ。ただ「使える」というのと「快適に使える」というのでは、ずいぶん違うのも確かで、やっぱり処理性能の高いPCで使った方が気分がいい。これは大事なことだ。

 かつて、PCの入門書などには、ワープロソフトは機能が多すぎ、動きも鈍いので、テキストの入力には、ワープロを使うよりも、軽いテキストエディタを使うのがおすすめと書いてあった。確かに、それが正しい時代もあったが、今はというと、少なくとも今この原稿を書いているCore i7機では、Word 2010と秀丸を比べて起動するのに要する時間は、まったく同じだとはいわないが、不満を感じるほどの違いははないし、使っているときのレスポンスも似たようなものだ。それでもぼくが原稿を書くのに秀丸を使うのは、慣れと好み以外の何ものでもない。キーアサインはWordでも変更できるので、秀丸がなければWordでも仕事はできるが、両方あれば秀丸を選ぶ。

 手元には、比較のためにVistaを入れたCore 2 Quad機も残してあるが、当時のハイエンドということもあって、今メインに使っているCore i7機とWordや秀丸の使用感はそれほど変わらない。でも、HD画質のMPEGファイルをMPEG-4 720pにエンコードするといったことをやろうとすると、とたんに違いが出てくる。実時間程度でエンコードできるものが、古いプロセッサではその倍くらいかかってしまうのだ。

 この「倍」というのがポイントだ。たとえば2秒かかることが1秒ですんでも、それほどうれしくない。2分かかることが1分ですめばちょっとうれしい。でも、10時間かかることが5時間ですむというのはどうだろう。ちょっと複雑だ。倍の処理性能というのはそういうことだ。絶対的な時間としての5時間は、待たされる時間として途方もなく長い。そんなの寝ているうちに終わるでしょ、と言われればそれまでだが、指示した結果はすぐに欲しいというのが人情というものだ。待ってそれほど苦にならないという時間としては、10分程度が限度じゃないだろうか。そして、10時間を10分にするためには、60倍の処理性能が必要だ。

●デジタル化が奪う今までの便利

 エンコードの話ばかりで恐縮だが、約1時間のHD MPEGファイルをTMPGEnc 4.0 XPressでMPEG-4 720pにすると、手元の環境ではほぼ実時間、つまり1時間程度を要する。だが、これをRadeonのAvivoを使いGPUで支援すると15分未満で終わる。これによって手っ取り早く4倍の処理性能が得られたことになる。もちろん吐き出されたファイルの品質は、TMPGEncのそれとは比較にならないほど汚いということには目をつぶるとしても、4倍というのは大きな違いだ。

 PCのパフォーマンスを実感するために、こういうテストを繰り返しているのは、単に職業柄であって、ごく一般的なPCの使い方において、日常的にエンコードを繰り返すということはあまりない。個人的には過去において、地上波アナログ放送を録画したものをエンコードして東芝のGigabeatにコピーして外出時に楽しんでいたのだが、録画を地デジに切り替えたことで、それができなくなってしまった。そんなわけで録画済みTV番組はたまる一方だ。

 これは、事実上、環境の退化だ。デジタル化によって、今まで得られていたものが得られなくなってしまった。

 もし、録画した地デジ番組を自由に外に持ち出せるようになっていれば、まるでCDをリッピングするように、エンコードもまた日常的な行為になる。少しでも処理性能の高いPCが欲しくなるだろうし、動画対応のポータブルメディアプレーヤーやモバイルPCの市場もグンと広がるだろう。

 NECやソニーのPCでは、地デジ番組をSDメモリーカードにコピーして持ち出せるようなソリューションが提供されているが、ワンセグ画質ではいくらなんでもつらい。BDやDVDだけではなく、SDメモリーカードにも、放送そのままの画質でコピーできるようにはならないのだろうか。光学ドライブのない環境でも再生できるようにするだけで、一気に利用シーンは広がるだろう。そうでなければ、何のための著作権保護機能かと思う。

 電車の中で周りを見渡せば、イヤフォンをつけている乗客のなんと多いことか。誤解を怖れずにいうなら、ここまで普及したのは音楽のコピーが事実上自由だからだ。コピーが自由だからといって、音楽を買わなくなるわけじゃない。自分が買った音楽を、自分のためにもっと自由に楽しみたいだけだ。そして、音楽はそれを許してくれている。カネを出して買った音楽を聴く権利を、自由に行使できることに感謝したい。

●新たな動きに期待したい

 高性能なエンジンを積んだクルマを手に入れたとしても、その高性能を満喫して走らせることができる場所がない。高速道路を走ったとしても制限速度は100Km/hだし、250km/hをラクに出せるクルマでも、それをやったら人が死ぬかもしれない。

 でも、PCのプロセッサには制限速度がない。だから、処理性能が高ければ高いほど、その力を発揮できる。ところが、現状は、その処理性能を活かすための材料が揃わない。まるでクルマでいうところの制限速度のようなものがPCに課せられているかのようだ。

 HDムービーカメラで撮影したおもしろ動画をサクサク編集して、すぐにYouTubeに投稿できるというのはすばらしいことだが、それがうれしいユーザーは限られている。かつてのPCはきわめてクリエイティブな存在だったが、インターネットという受け身でいても十分に楽しめるキラーアプリが出現し、結果としてPCは爆発的に普及した。このときPCはメディアとなり、受け身で楽しむだけでも十分に魅力的な存在になったのだ。

 アナログ放送なら、10年前、20年前のTVでも、最新型のTVでも、基本的には同じ内容が見れる。画質は多少劣るかもしれないが、古いTVだから色数が少ないとか、シーンがコマ落ちするといったことはない。だが、PCがTVのようなスパイラルに陥ってしまうのはまずい。だから、なんとしてでも、高い処理性能を必要とする魅力的な材料が必要だ。地上波のデジタル化がTV買い換えの大きな需要を呼んだように、地デジコンテンツは高い処理性能を要求する格好のデータだ。コンテンツを提供する側の思惑と権利を守りながら、ユーザーも大きな恩恵を得られるソリューションはないものだろうか。DTCP-IPでネットワーク上の別の機器で地デジコンテンツが再生できるのだから、そのストリームを寿命つきでキャッシュするようなことでもできれば、どれだけ楽しくなるだろうか。

 来週は、こうしたデジタルライフへの新たな提案に向けて、PC周辺機器関連の複数社が共同でなにやら動き出すことになっているようだ。大いに期待しているのだが、さてどうなりますか。

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