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オーディオ評論家とDTMライターが推薦した機材を相互に辛口評価
~ヘッドホン&イヤホン編~
2017年10月2日 12:00
音楽を聞くのにはスピーカーかヘッドホン・イヤホンが必須。とくに後者は老若男女問わず人気があり、ヘッドホン、イヤホンがそれぞれ多様な進化を遂げています。その方向性は高音質、高級化、高機能化、コストパフォーマンスの向上、デザインの多様化などじつにさまざま。
2017年11月号のDOS/V POWER REPORTでは、「聴くのも、演るのも!PC×サウンド再発見」と題して、「聴いて楽しむ」と「演奏して楽しむ」という両面から、PCでのサウンドの楽しみ方を紹介する記事を特集しています。ここでは、そこで掲載された「ヘッドホン&イヤホン」製品のクロスレビュー記事から、一部を抜粋してご紹介します。
試聴方法
リファレンス環境としてUSB DAC「OPPO Digital Sonica DAC」と、ヘッドホンアンプ「Rupert Neve Designs RNHP」の環境を用意。ゴン川野氏と滝伸次氏はこれに加えて持参したデジタルオーディオプレイヤーなどの機器でも試聴した。※評価点は5点満点
ソニー・ミュージックコミュニケーションズ MDR-CD900ST
ゴン川野
硬質な音をイメージしたが、意外に普通の音で解像度は高い。情報量が多い音だが、高域は刺さらない。低域はタイトでよぶんな響きがなくハイスピードだ。響きが少ないため音場は狭く感じられる。録音の欠点まで厳しく再現するので長時間だと疲れるかもしれない。
・音質:3
・機能性:3
・装着感:3
滝 信次
2万円のヘッドホンとしては抜群の解像度。情報量が多く、低域から高域まで音源のとおり素直に鳴らす。音の立ち上がりもよくスピード感、キレがある。バンドサウンドなどでボーカルだけでなくバックの楽器の音もきっちり聴きたい人には最適。ただ、音は近く音場もやや狭いので、人によっては聴き疲れするかも。
・音質:5
・機能性:4
・装着感:3
藤本 健
レコーディング業界標準のモニター用ヘッドホン。色付けがなく、クセのない音だが、低域の迫力を求めるともの足りない人は多そう。高音域はしっかり再現されていて、細かいニュアンスまで聴き取ることが可能だ。ヘッドホン自体が軽いので負荷は少なく、装着していても疲れない。
・音質:4
・機能性:3
・装着感:3.5
Meze Audio 99 Classics Walnut Gold
ゴン川野
音色はウォームで独特の響きが美しい。とくに女性ボーカルを聴くと心地よい。バランスは中低域寄りで、低域は量感があって曲によってはやや過剰とも思える。解像度よりも響きを重視したヘッドホンで、どんな音楽も楽しめるが、とくにジャズ向きと言える。
・音質:4
・機能性:3
・装着感:4
滝 信次
キレイな音だなというのが第一印象。高域の表現がとくによく、美しく伸びやかだが刺さることはない。ピアノのきらびやかな音の表現などは見事。中域の出はやや控えめ。ボーカルはやや引っ込む印象。低域は量感がありタイト。Michael Jacksonなどのようなグルービーな曲にもマッチする。
・音質:4
・機能性:4
・装着感:4
藤本 健
全体的にバランスはよいが、低音域が少し強調されている印象。ボリュームを上げていくとより低音が特徴的に出てくる。装着感は、ヘッドセットの部分がよくできているため安定するが、少し締め付け感があるので、好みが分かれるだろう。
・音質:3.5
・機能性:4
・装着感:4
beyerdynamic DT 1990 PRO
ゴン川野
低音の量感を高める「バランスド」と、フラットバランスな「アナリティカル」の2種類のイヤーパッドで音が変わる。低域から高域まで解像度が高くフォーカスのシャープな音を聴かせてくれる。ダイナミックレンジも広く大音量再生でもバランスが崩れない。普段使いには「バランスド」。音場感を最優先なら「アナリティカル」。
・音質:4.5
・機能性:5
・装着感:5
滝 信次
解像度、音のバランス、スピード感など、これといった欠点は見付からない。高域はキレイに伸びるが刺さらず、きらびやかなピアノの音の再現は見事。トランペットなどの管楽器の音も伸びやかに美しく響く。中域の出もよく、女性ボーカルでは繊細なニュアンスまでクリアに描き出す。低域は量感があるがタイトだ。
・音質:5
・機能性:5
・装着感:4
藤本 健
全体の周波数はバランスよく出ているが、サイドの音が少し大きめに聴こえ、センターが若干弱い印象。音場は広いが、少し音圧や迫力が足りないと言える。イヤーパッドは高級感があり、着け心地は一番よかった。
・音質:4
・機能性:4.5
・装着感:5
JVC WOOD 02 inner HA-FW02
ゴン川野
ウッドの振動板とウッドハウジングを使ったユニークなモデル。ハイレゾ対応をうたうだけあり繊細で細かい音が再現され女性ボーカルのニュアンスが感じられた。低域は膨らまず自然な感じ。クラシックでは低域から高域までバランスがよく楽器の音色もよかった。オプションでバランスケーブルも用意されている。
・音質:4.5
・機能性:5
・装着感:4
滝 信次
チューニングの成果もあると思うが、ウッドハウジングとウッド振動版がイメージさせるとおり、バイオリンやチェロ、アコースティックギターなどの弦楽器の響きがよい。また、エネルギー感の強い迫力ある音を鳴らすため、The Rolling Stonesのようなロックにもよく合う。低音はややボリューミー。
・音質:4
・機能性:4
・装着感:4
藤本 健
全体的にバランスがよく、解像度、分離感、音場ともに優秀と言えるだろう。ジャンルを選ばないモデルだと感じた。さまざまな音の詳細が分かり、センターもしっかりしているので、どこでも音楽を楽しめるイヤホンだと思う。
・音質:4
・機能性:4
・装着感:4
iriver Astell&Kern IEM-JH Audio THE SIREN Michelle
ゴン川野
BA型3Way3ドライバーの入門機。ほかのイヤホンに比べて圧倒的な情報量の多さが感じられた。ワイドレンジでダイナミックレンジも広い。イヤモニでありながら、粒立ちがよくスピード感があって明るく輝くようなノリのいい音を聴かせる。オーディオ的な高音質と音楽性を両立させた希有なモデル。
・音質:5
・機能性:5
・装着感:3
滝 信次
解像度が高く情報量も多い。低域、中域の出がよく、スピード感もあるので、ロック、ポップスなどの曲は気持ちよく聞くことができる。ただ、低域にキレがない点、低域が中域をジャマしている点、高域の伸びに難がある点はオーバー5万円としては気になった。
・音質:4
・機能性:5
・装着感:4
藤本 健
音をすごく繊細に細かいニュアンスまで伝えてくれるモデル。音の傾向は高音域寄りだが、低音の再現度も高く、全体的に分離感のいい音。アコースティック系の楽曲に合うイヤホン。しかし、サイズが大きいため人によっては合わない場合もあるかもしれない。
・音質:5
・機能性:4
・装着感:3.5
レビュアー
ゴン川野
アナログレコード、CD、ハイレゾの3世代音源を耳で経験。バブル期には海外ハイエンドメーカーを取材しまくり、現在は地道にWebコンテンツ@DIMEにてPCAudioLabを連載中。真空管アンプにスピーカーキットからハイレゾ、ラズパイまで守備範囲はやたら広い。
試聴楽曲:宇多田ヒカル「Fantome/花束を君に」(24bit/96kHz)、Michael Jackson「Thriller/BillieJean」(DSD64)ほか
滝 伸次
自作PCとオーディオをこよなく愛する酔狂中年。バンド小僧だった10代にオーディオに目覚め、秋葉原に通っているうちに、ディープなPC自作の沼にハマる。現在、本誌でマザーボードなどのPCパーツに関する原稿を執筆するかたわらマイナビニュースなどでオーディオ機器のレビューを執筆中。
試聴楽曲:The Rolling Stones「One Hit」(16bit/44.1kHz)、James Brown「Mother Popcorn[Single Version]」(24bit/192kHz)ほか
藤本 健
1980年代の高校、大学時代にシンセサイザのハードウェア設計やソフト開発に従事。卒業後リクルートに勤務するかたわら、MIDIやオーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆。2014年よりフリーに。2010年よりブログサイト、DTMステーションの運営を始める。
試聴楽曲:AvrilLavigne「Everybody Hurts」(16bit/44.1kHz)
本誌ではほかにも、以下のような製品をクロスレビューしています。ぜひご一読ください。
- オーディオテクニカ ATHWS1100
- STAX SRS-3100
- S'NEXT final E3000
- Shure SE215 Special Edition
- Westone UM Pro10