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オーディオ評論家とDTMライターが推薦した機材を相互に辛口評価

~USB DAC編

DOS/V POWER REPORT2017年11月号の特集は「聴くのも、演るのも!PC×サウンド再発見」

仕事も趣味も方向性バラバラのレビュアー陣がUSB DACをクロスレビュー

 DOS/V POWER REPORT11月号(9月28日発売)では、「聴くのも、演るのも!PC×サウンド再発見」と題して、「聴いて楽しむ」と「演奏して楽しむ」という両面から、PCでのサウンドの楽しみ方を特集しています。ここでは、本特集の目玉である定番オーディオ機器30製品クロスレビューから、「USB DAC」製品の一部を抜粋して紹介します。

 さて、DOS/V POWER REPORTではオーディオ機器を評価するにあたり、多角的な視点からの評価にこだわりました。音楽、音質の好みだけでなく、鑑賞と音楽製作といった利用シーンによっても、機器の評価が変わるはず。そこで、音楽の趣味嗜好、業務分野の異なる3名の評価者を選び、その方達が「定番と考える機材」を推薦してもらい、その機材を3名でクロスレビューしてもらう、という方法を取りました。

ゴン川野

アナログレコード、CD、ハイレゾの3世代音源を耳で経験。バブル期には海外ハイエンドメーカーを取材しまくり、現在は地道にWebコンテンツ@DIMEにてPCAudioLabを連載中。真空管アンプにスピーカーキットからハイレゾ、ラズパイまで守備範囲はやたら広い。

試聴機材:FitEar Air、DITA Dream
試聴楽曲:宇多田ヒカル「Fantome/花束を君に」(24bit/96kHz)、Michael Jackson「Thriller/BillieJean」(DSD64)ほか

滝 伸次

自作PCとオーディオをこよなく愛する酔狂中年。バンド小僧だった10代にオーディオに目覚め、秋葉原に通っているうちに、ディープなPC自作の沼にハマる。現在、本誌でマザーボードなどのPCパーツに関する原稿を執筆するかたわらマイナビニュースなどでオーディオ機器のレビューを執筆中。

試聴機材:Sennheiser HD650
試聴楽曲:The Rolling Stones「One Hit」(16bit/44.1kHz)、James Brown「Mother Popcorn[Single Version]」(24bit/192kHz)ほか

藤本 健

1980年代の高校、大学時代にシンセサイザのハードウェア設計やソフト開発に従事。卒業後リクルートに勤務するかたわら、MIDIやオーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆。2014年よりフリーに。2010年よりブログサイト、DTMステーションの運営を始める。

試聴機材:ソニー MDR-CD900ST
試聴楽曲:AvrilLavigne「Everybody Hurts」(16bit/44.1kHz)

試聴方法

今回はUSB DACをPCの横に置き、ヘッドホンで音楽を楽しむという用途を想定し、その際の再生品質を評価している。製品にヘッドホンアンプが搭載されている機種の場合は、ヘッドホン端子にレビュアーの愛用するヘッドホンやイヤホンを接続して試聴して評価を行なった。ただし、OPPO Digital Sonica DACはヘッドホンアンプの機能を搭載していないため、外付けのヘッドホンアンプとしてRupert Neve Designsの「RNHP」を用意し、そこにUSB DACとLINEにより接続することで評価している。

 いざ比較試聴を行なってみると……自分で選んだ機材が他の評価者から低い評価を受ける、といった状況が発生。やはり、機材評価のプロであっても好みの違いははっきりと存在するようです。まあ、ここまではある程度想定の範囲内だったのですが、他の人のオススメを交えて比べた結果、自分で選んだ機材の評価が低くなる、という想定外の事態も発生。いろんな人の意見を参考にすると、よりよい物が見えてくるということでしょうか? なんにせよ、今回の評価者のみなさんは自薦、他薦にこだわらず、よい物はよいと言わずにはおられない性格のようです。こういった背景も含めてご自身の好みと合わせて参考にしてみてください。

※評価点は5点満点

xDuoo XD-05

ゴン川野

スマホでもデジタル接続できて、丸端子の光入力、ステレオミニのライン入力も使える多機能モデル。解像度の高い音、ボーカルの高域はややキツイ感じで、低域の解像度は高く歯切れもよかった。DACにAK4490を採用しただけあり、情報量が多く輪郭のクッキリした音を再生する。DSD再生においても音の傾向は同じ。

・音質:4.5
・機能性:5
・コストパフォーマンス:5

滝 信次

高級機と比べると解像度はやや甘めな感じだが、このクラスとしては十分高い。音の立ち上がりもよくキレがある。力強い音でロックなどには最高にマッチする。若干、中域が強調され過ぎなきらいもあるが、女性ボーカルなどはリアルさを増すので、ボーカルを中心に聞きたい人には向く。

・音質:4
・機能性:4
・コストパフォーマンス:4

藤本 健

フロントの「Volume」で音量を上げていくと、中音域を中心にふくよかに音量が上がる印象。それに対し、「Gain」のスイッチで音量を上げると、全体が明るくなり音場が広くなる。解像度も高く、好みによって音の傾向を変えられる、自由度が高めの製品。

・音質:3.5
・機能性:4
・コストパフォーマンス:5

ティアック UD-301-SP

ゴン川野

デノン DA-10と同じBurr-Brown PCM1795を採用するが、こちらは解像度が高くシャープな音がする。左右独立でアナログ回路から独立させてDACも2個使っているので物量の投入の仕方が違う。またオペアンプに新日本無線のMUSES8920というオーディオ用に設計された高音質モデルを採用している。DACだけで音が決まらないことを実感。

・音質:4.5
・機能性:5
・コストパフォーマンス:5

滝 信次

この価格帯の据え置き型としては音質のよさが際立つ。解像度は高く、音場も広め。低域から高域までバランスよく音が出ており、ロックからクラシックまで幅広いジャンルの音楽に対応する。バランス出力端子を装備するなどプリメインアンプの機能が充実している点もポイント。コスパ重視の人は要注目。

・音質:4
・機能性:4
・コストパフォーマンス:5

藤本 健

優秀なDAC。自然にいい音だと思えるモデルだと感じる。全体のバランスがよく、各楽器が聴き取りやすく、音楽をより一層楽しめる機材である。原音の質感を忠実に再現してくれて、聴いていて違和感などを感じさせない製品だ。

・音質:4
・機能性:4
・コストパフォーマンス:5

Chord Electronics Mojo

ゴン川野

創立者の一人であるJohn Franks氏が考案した独自のアルゴリズムがChord製品の特徴。これにより、解像度を上げても刺激的にならない音を実現。さらに粒立ちをよくしていくと音色はクールに傾きがちだが、Mojoはウォーム、ホットな音色であり、女性ボーカルには独特のツヤがあり、非常に魅力的だ。

・音質:5
・機能性:3
・コストパフォーマンス:5

滝 信次

手のひらサイズとは思えないほどのパワフルな音を鳴らす点が特徴。解像度は高く、クリアでキレのあるサウンドが楽しめる。300ΩのSennheiser HD650もなんなくドライブする高い駆動力も魅力。音質、機能ともにポータブル機としては破格の1台と言える。

・音質:5
・機能性:5
・コストパフォーマンス:4

藤本 健

音のレンジが広く、今回試聴した中ではティアック UD-301-SPと比較的近い傾向の音であった。奥行きはほんの少しもの足りないように感じたが、高域から低域までフラットできれいに聴こえた。この辺は音の好みになってくるだろう。

・音質:4
・機能性:3
・コストパフォーマンス:4

マランツ HD-DAC1

ゴン川野

マランツ初のDAC内蔵ヘッドホンアンプ。枯れたDACであるCirrus Logic CS4398を採用。出てくる音はウォームで歪みがなく細かい音までていねいに再現される。つややかな女性ボーカルが魅力的だった。話題のDSDにもネイティブ対応して、アナログレコードのように脂の乗った中低域を聴かせてくれた。

・音質:4
・機能性:4
・コストパフォーマンス:4.5

滝 信次

解像度が高く情報量が多い。高解像度のものは音が硬くなる傾向にあるが、音質はつややかで色気がある。低域から高域まで余裕を持ってクリアに再生する。音の立ち上がりも速く音にキレがある点も特徴。エネルギー感のある音でロックなどの躍動感を見事に表現する。繊細な表現も得意でボーカルものもよい。

・音質:5
・機能性:4
・コストパフォーマンス:5

藤本 健

音が元気になり、高音、中音、低音すべてがきれいに聴こえる。分離感もよく、キックにパンチが出てくる。ボーカルの細かいニュアンスやリバーブ感、ストリングスやパッドといった白玉系の楽器が爽やかかつウォームに聴こえる。

・音質:5
・機能性:4
・コストパフォーマンス:5

OPPO Digital Sonica DAC

ゴン川野

なにかと話題の、デジタルプリ機能を備えたUSB DACである。情報量の多い音でハイスピード、鮮明、高域は透明感があってみずみずしい。低域は厚みがあって解像度も高い。DACにはESSの最新ハイエンドES9038PROを搭載している。だからと言って音がいいとは限らないのだが、本機の場合、理屈どおりに音がいいのだ。

・音質:4.5
・機能性:4
・コストパフォーマンス:4

滝 信次

解像度の高さは素晴らしい。今回唯一、The Rolling StonesのOne Hitという曲で、Keith Richardsがギターの弦を絶妙にミュートして弾いているさまがよく分かった。音質はややタイト。音には迫力がありキレがある。音場は広め。女性ボーカル、ダンスミュージック、オーケストラなど幅広いジャンルをカバー。

・音質:5
・機能性:5
・コストパフォーマンス:5

藤本 健

音の分離がよく、レンジ、ステレオ感も言うことなし。リバーブのノリもきれいに聴こえ、高音に立体感があり、ボーカルや楽器すべてが生々しく、全体が1段階高級に品よくなる印象。低音の出方もきれいで迫力がある。ずっと音楽を聴いていたくなる音だ。

・音質:5
・機能性:5
・コストパフォーマンス:4


 本誌では、さらに以下のUSB DACをクロスレビューしています。ぜひご一読ください。

  • デノン DA-10
  • NuPrime uDSD
  • コルグ DS-DAC-10R
  • iFi-Audio micro iDSD Black Label
  • ティアック UD-503
クロスレビューされている掲載は個別のレビューも行なっています
DOS/V POWER REPORT11月号では、USB DACのほか、ヘッドホン、DAP、USB DAC付きアンプ、USBスピーカーのクロスレビューも掲載。このほか、入門者向けのPCオーディオ設定手順解説、レコード・テープのデジタル化、定額聴き放題サービス比較、ゲーミングヘッドセット対オーディオヘッドホン、PCとつながる楽器、DAW構築術など、多様なテーマで“PCとサウンド”の今に迫ります