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クリエイター向けのCore Xと、ゲーマー向けの第8世代Coreプロセッサ

江田麻季子氏

 インテル株式会社は26日、都内で定例のプレスセミナーを開催し、同社の2017年第3四半期の取り組みについて解説を行なった。

 冒頭で挨拶した代表取締役社長を務める江田麻季子氏は、「最近プレスからPC向け話題が少ないといった指摘を受け、PC向けの話題を充実させました」と述べた。2017年上半期は競合のAMDが新アーキテクチャの「Ryzen」をPC市場に投入したこともあり、PC市場がビジネスの大半を占めるIntelとしては、対抗策を示さざる得ない状態だろう。

 とは言え、Intelの成長戦略そのものは、クラウド&データセンター、そしてIoT機器&デバイスである点に変わりはない。Intelは同社の技術により、IoT機器&デバイスが増え、それに伴いデータ量が増え、クラウド&データセンターへの需要が高まり、クラウド&データセンターが増強されれば、またIoT機器&デバイスが増えるという“好循環”を生み出そうとしている。

インテルの成長に向けた戦略的サイクル

 そのクラウド&データセンター向けには、第3四半期中にXeonスケーラブル・プロセッサーを投入した。ネットワークインフラ向けに設計され、過去10年間で最大の変革をもたらすという。ベンチマークでは、旧世代製品と比較して1.59倍の性能向上を実現し、セキュリティ性も向上。また、9月28日には、高性能コンピューティングや機械学習などをテーマとした「インテル デベロッパー・カンファレンス 2017」を東京ミッドタウンで開催するとした。

 IoT分野においては、新たにエネルギー業界に参入。電力会社に顧客の電力需要予測を提供するといったインテリジェントなインフラを構築。2018年度にもサービス開始する予定だという。また、トヨタ自動車株式会社やNTTといった企業と「オートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアム」を立ち上げ、コネクテッドカーの実現に向けたさまざまなサービスを支える基盤づくりを推進するという。

 長崎にあるテーマパーク「ハウステンボス」では、日本初となる「Intel Shooting Starドローン・ライトショー」を実施。今後はこういったショーのみならず、さまざまな分野でドローンを活用したいとした。

 話題の中心であるPC市場については、「Compute Card」といった新しいフォームファクタの提案、Core Xプロセッサおよび第8世代Coreプロセッサの投入、Optaneメモリーの投入、5Gサービスやeスポーツ、VRに取り組んだとした。この詳細については、同社で執行役員 技術本部長を務める土岐英秋氏に譲られた。

3つのハイライト
Xeonスケーラブル・プロセッサの投入
インテル デベロッパー・カンファレンス 2017の開催
IoT向けの技術
エネルギー業界の取り組み
オートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアムの立ち上げ
ハウステンボスでのShooting Starドローン・ライトショー
PCの新しいフォームファクタへの取り組み
新しいプロセッサの投入
Optaneメモリーの投入
5Gへの取り組み
eスポーツとVRへの取り組み

続くムーアの法則

土岐英秋氏

 土岐氏は2003年のCentrino時代からインテルに在籍しているが、当時からIntel本社は開発のフォーカスをCPUそのものから、プラットフォームやシステム全体に展開してきたという。CPUだけいくら速くても、それを活かすようなシステムになっていなければ意味がないからだ。

 Intelは、2011年にはUltrabook、2012年にはNUC、2013年には2in1、2015年にはCompute Stickといった、革新的なプラットフォームを提唱してきた。もっとも新しい提唱が、Compute Cardである。これにより、これまでコンピュータの搭載が難しかったデバイスにもコンピュータを搭載できるようになるとした。

 とは言え、CPUの性能向上も重要である。9月に投入したノートPC向けの第8世代Coreプロセッサ(Uシリーズ)では、過去最大級とも言える40%の性能向上を実現している。40%の内訳は、コア数増加による性能向上が25%で、残り15%はTurbo Boost時の周波数向上、およびコア数増加に伴うキャッシュ容量の増加によって実現されたとした。

 5年前に発売された製品と比較すると、最大で2倍の性能を実現したというが、このうちの40%がこの1年で実現したと考えると、かなり大きなジャンプであることが伺える。土岐氏は「近年、Intelのプロセッサが40%の性能向上を謳うことはない」としているが、筆者はCore 2 Duoがリリースされたときの旧製品のPentium Dとの比較が思い出された(記事:「Core 2 DuoはPentium以来最大の革新」参照)。

 もっとも、第8世代Coreプロセッサは第7世代の改良版に過ぎず、消費電力が40%減ったわけではないので、Core 2 Duoのときほどのインパクトがないのも事実だが、薄型ノートの標準が、長年続いた2コア/4スレッドから4コア/8スレッドに引き上げられた点は歓迎すべきだろう。

 この性能向上を支えるのは、もちろん業界最先端の半導体製造技術だ。Intelは2003年に90nm、2005年に65nm、2007年に45nm、2009年に32nm、2011年に22nm、そして2014年に14nmプロセスを継続的に投入してきた。しかし10nmは2017年末と、これまでのプロセスルールの進化と比較してやや遅れている。

 こうしてみると、Intelが提唱し続けている「ムーアの法則(約18カ月で同じ面積に集積できるトランジスタ数が2倍になる)」が崩れつつあるように思えるが、土岐氏によれば、Intelは「ハイパースケーリング」によってこの問題を回避し、ムーアの法則を継続させ続けているという。

 「ハイパースケーリング」の詳細については、福田氏のコラム記事「「ムーアの法則は揺るがない」、Intelが公表した10nmのプロセス技術」を参照されたいが、ざっくり言うと、露光に使うマスクなどを工夫し、露光回数を減らすことでスループットを上げ製造コスト下げるものだ。ムーアの法則は、一般的にプロセスのシュリンクの法則を示すものだと認知されているが、プロセスをシュリンクするのは製造コストを下げるために行なわれるものだ。ハイパースケーリングによって製造コストが下がれば、間接的にではあるものの、ムーアの法則を継続させたことになる、というのがIntelの言い分だ。

 また、CPUの性能を活かすには、周辺やプラットフォーム全体も改良しなければならない。Intelでは、Thunderbolt 3やOptaneメモリー、3D NAND技術といった技術も投入しており、高いCPU性能を下支えしているとした。

 さらに、常時接続可能な「Always Connected PC」の推進や、業界をリードする5Gモバイル トライアル・プラットフォームの開発、eスポーツの推進やVR分野の開拓も引き続き行なっていき、PCの可能性を広げているとした。

フォームファクタの提唱
2in1システムの登場
性能の40%向上
従来製品との性能比較
ムーアの法則を継続
Thunderbolt 3の推進
Optaneメモリーと3D NAND
Optaneメモリーの特徴
3D NANDを採用したIntel SSD 545
Always Connected PCの推進と5Gへの取り組み
5Gのさまざまな技術
Intelが持つ5Gの技術
世界初のNR標準対応5Gモバイル トライアル・プラットフォーム
さまざまな業界でVRを推進する
IntelのVR技術など
IntelがVRを支えるプラットフォーム

クリエイター向けのCore Xとゲーマー向けの第8世代Core

渥美和彦氏

 最後に、同社で技術本部 技術部長を務める渥美和彦氏が、先日発表されたCore Xプロセッサと、第8世代Coreプロセッサの概要について解説した。

 各製品のスペックなどの詳細については関連記事を参考にされたいが、製品の位置づけについて、上位のCore Xはどちらかと言えばクリエイター寄り、メインストリーム向けの第8世代Coreプロセッサはどちらかと言えばゲーマー寄りになるとのことだった。

 Core Xの特徴は、もちろん最大18コアやクアッドチャネルのメモリがもたらす“メガタスク”性能。ゲームをプレイしながらのゲーム画面配信や、複数ビデオの同時エンコードといったクリエイティブな用途向けに最適化しており、“ユーザーの作業における待ち時間削減”に製品の焦点が当てられている。

 このため、ノンインクルーシブなキャッシュ階層や、L2キャッシュの容量拡大、Turbo Boost Max Technology 3.0、AVX-512命令への対応、PCI Expressレーンの拡張(最大44レーン)といった改良が行なわれている。

 一方、第8世代Coreプロセッサはより高いCPUクロックと、第7世代から増えた2つのCPUコアで、ゲーム性能の最適化に焦点が当てられており、たとえばTPSの「Gears of War 4」では、第7世代と比較して最大で25%の性能向上を実現した。最近流行のPUBGでも、ゲーム+ストリーミング+録画という負荷時では、第7世代と比較して最大45%、3年前のPCと比較して最大2倍高速化したとしている。

Core Xプロセッサの特徴や位置づけなど
第8世代Coreプロセッサの特徴や位置づけなど