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Samsung、NANDやSSDの動向や企業での活用事例を紹介
2017年6月13日 13:35
日本サムスンは6月8日、東京都内で「2017 Samsung SSD Forum Japan」と題したイベントを開催した。
昨年(2016年)に引き続き2回目の開催となったが、今回も同様に国内企業のSSD活用事例の紹介や、サムスンが取り組むNANDやSSDの動向などが紹介された。
IoTは日本が入り込むチャンスがある
まず初めに、経済産業省 商務情報政策局の佐野究一郎氏が登壇し、「情報関連政策の動向について」と題して講演を行なった。
佐野氏はまず、2017年3月にドイツで開催された「CeBIT 2017」において、IoTなどの先端技術分野での協業に関する日本とドイツの共同声明「ハノーバー宣言」が採択されたことを紹介し、IoTを核としたさまざまな分野の繋がりによる新たなビジネスモデルの構築を後押しすると説明。
また、クラウドを中心としたサイバー空間でのデータ獲得競争ではアメリカ企業がほぼ独占状態にあるが、自動運転やロボット制御などの分野では末端側や、末端とクラウドの中間層となる”フォグ層”でのデータ管理や処理が必須となってくるため、そこに日本が入り込むチャンスがあると指摘。
さらに、超高齢化社会を背景としたさまざまな社会的課題が山積していることを指摘しつつ、日本は「社会課題先進国」であると述べ、そういった課題を解決するためにIoTを活用していくとした。
そして、ベンチャーやスタートアップを中心とした、ハード、ソフト、セキュリティ三位一体での革新的技術開発を、産官学で支援、推進すると述べた。加えて、近年のサイバー攻撃の増加についても指摘し、官民共通でサイバー攻撃リスクへの認識を持ち、対策の仕組みの構築、中核人材の育成などを通じて、雇用や技術の創出、さらに産業化へとつなげたいとした。
SSDの活用により高い効果を確認
続いて、企業のSSD活用事例が紹介された。
まず、富士通の牧雄治郎氏が登壇し、同社のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品でのSSD活用例を紹介。近年、サーバーやストレージの仮想化需要が大きく伸び、HCI市場は年平均43%という高い成長率を維持しているという。
ただ、仮想化システムではレスポンスの低下が大きな懸念となっていると指摘。そこで富士通では、HCI製品のストレージにSSDを活用。実際に富士通グループでは、約8万人のグループ社員を対象とした全社仮想デスクトップ基盤の構築を進めており、新規導入5千人分を、「Samsung SM863シリーズ」SSDのみを搭載したオールフラッシュ環境で構築したという。これにより、ブートストーム時に約30%の性能改善が見られ、さらに導入コストも約20%削減できたという。
特に、リモートアクセスが増えるほど、SSDのメリットが大きく出てくると指摘し、今後もHCIにおけるレスポンス低下対策として、SSDを積極的に活用していきたいとした。
次にDMM.comラボの渡辺宣彦氏が登壇し、動画配信機版におけるSSD導入の効果を紹介。
DMM.comでは30万超の動画タイトルを配信しており、年間で約1PBのコンテンツが増加しているそうで、それらデータはSATA HDDをRAID 6で運用するストレージサーバーに保存しているという。ただ、動画の高精細化による高ビットレート化などもあり、HDDでは大規模キャンペーンや新作リリース時に増大するトラフィックに対応できる性能を確保するのが難しくなっているという。
しかし、コストの問題でストレージサーバーを全てSSDに置き換えるのは難しい。そこで、SSDを搭載したキャッシュサーバーを用意して対処したという。すると、キャッシュサーバーをHDDで運用していた時には、トラフィック増大時に約15分ほどで限界に達し、スループット低下が発生していたのに対し、SSDでの運用では全く問題が発生しなかったという。
また、キャッシュヒット率もSSD導入前の2倍に向上。実際の大規模キャンペーンなどでも、特別な負荷対策を施すことなくSSD搭載キャッシュサーバーのみで乗り切れているとのことで、SSDの優位性を示した。
加えて、2016年3月より「PM863」を72本、2016年11月より「PM863a」を200本導入しているそうだが、現在まで障害が発生したのはPM863の1本のみとのことで、耐障害性の高さも指摘。そして、今後はさらなる低価格化と大容量化への期待を述べた。
アイ・オー・データ機器の北村泰紀氏は、SSD搭載製品を紹介。まず初めに、2015年に発売されたネットワークオーディオ専用ストレージ「“fidata” Network Audio Server」を紹介した。
ハイレゾ音源向けのストレージで、「Samsung 850 EVO」500GB×2台搭載モデルとWD製2TB HDD×2台搭載モデルをラインナップしているが、SSDの採用は、音を追求してのものだと指摘。
もともとハイレゾ音源などのデジタルデータを扱うため、本来はSSDでもHDDでも音質が変化することはないはずだが、実際の音を聴くと明かな違いが感じられるという。これは、HDDのモーターやヘッドなどの稼働部から発生するノイズが影響していると考え、実際に調査してみたところ、SSDのほうが明らかにノイズが少なく、アナログ変換時の影響が少なかったことがわかったという。
この差は、一般の聴感でわかるようなものではなく、ユーザーのヒアリングでもSSD支持とHDD支持は半々としつつも、SSDのほうがノイズの影響が少なく、オーディオ用途に向いているとした。さらに、今後販売を計画している製品として、SeeQVault対応のポータブルSSDを紹介。多くの録画番組を安全に持ち歩けるようになり、動画視聴スタイルを改革したいとした。
今後もNANDおよびSSDは右肩上がりで伸びる
続いて、市場調査会社であるIHSグローバルの南川明氏がNANDやSSDの今後の展望や市場予測について講演。
現在世界は、爆発的な人口増加や高齢化、都市集中化といった問題を抱えており、それらの解決にIoTを活用しようという動きが活発化していると指摘。そして、航空、運送、ヘルスケア、原油開発、鉄道の5つの業界だけで、IoTの活用により年間320兆円以上の削減効果があるとの試算を示した。
そして、IoTの普及により、データ通信量が飛躍的に増えるとともに、ストレージ容量は今後も拡大が進むと指摘。今後SSDはビット単価が順調に下落して2020年にはHDDとの単価差が3倍を下回り、出荷台数も右肩上がりで増えていくとの試算を示した。またHDDは、出荷台数の減少傾向は変わらずも、金額ベースでは回復するとの見通しを示した。
またNANDフラッシュメモリの市場規模は、毎年40%以上の伸びを示しており、それは今後も続くと指摘。そういった中、2018年より中国がNANDに巨額投資を行なう計画で、2019年以降は中国からNANDが出荷され、NAND市場の変化が起こる可能性があるという。
ただ、SSDが好調ということを背景としてNANDの供給不足が続いていることも指摘。中でも3D NANDの供給不足はさらに拡大しており、NANDの供給不足と高値は、2017年いっぱいは継続するという見通しを示した。
最後にサムスン電子のHan Jinman氏が登壇し、サムスンが考えるNANDやSSDの見通しを述べた。
サムスンは、2002年にNANDフラッシュメモリでトップに立って以降、クライアントSSDも含めて市場をリードしていると指摘。そして、市場で先駈けて量産を開始した3D NANDの「V-NAND」は、2017年より第4世代を量産開始。第4世代V-NANDでは64層となり、512Gbitの容量を実現、速度も800Mbpsに達しているという。これにより、容量1TBのワンチップSSDをはじめ、大容量SSDも実現可能とする。
さらに、今後SSD容量は毎年2倍になるとの見通しを示しつつ、将来は大容量SSDを採用することで2ラックのサーバーシステムを4Uサイズに省スペース化できるとした。
また、2016年に開催された「Samsung SSD Global Summit 2016」において公表した、「Z-NAND」採用の高速メモリ技術「Z-SSD」についても言及。Z-SSDは、Z-SSDコントローラを搭載し、容量1TBのうちユーザーエリアは800GB。アクセス速度はシーケンシャルリード、ライトとも3,200MB/s、ランダムアクセス速度はリード750,000IOPS、ライト160,000IOPSになるという。
Z-NANDの具体的な仕様は今回も非公開だが、超低レイテンシでスループットも非常に高速で、サーバーにおけるキャッシュとして最適とのこと。オールフラッシュストレージ環境で全容量の2%の容量のZ-SSDキャッシュを用意することで、性能が20%向上することを確認したとのことで、その効果の高さがアピールされた。
そのほか、サーバーではSSD採用によって設備投資や運用コストの削減に貢献、HCIでは適切な部分にSSDを採用することで高い効果が得られることなどを紹介。
また、自動運転などの車載向けシステムやゲーミングPCでも、高速SSDが有利になることなども示され、今後もそういった市場の要求に応えられる製品を投入していくとして、講演を締めくくった。