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Retinaの3倍に達する1,500ppiの超高解像度化を実現する新液晶技術

~低電圧動作、高速応答を両立。VR HMDにも好適

三角形の電極構造のシミュレーション

 アメリカ光学会(Optical Society of America: OSA)は1日(現地時間)、国際的な研究チームらによって、新たな「ブルー相液晶」が開発されたと発表した。

 この新開発の液晶は、次世代ディスプレイの有望技術とされるフィールドシーケンシャル(色順次駆動方式)カラー液晶ディスプレイ(LCD)向けに最適化されているという。

 セントラルフロリダ大学 光学レーザ研究教育センター(CREOL)の研究チームを率いたShin-Tson Wu教授は、現在のAppleのRetinaディスプレイは、500ppi(1インチあたりのピクセル数)の解像度を持っているのに対し、今回の新技術では、同サイズの画面で3倍に相当する1,500ppiを達成できたとしている。

 Wu教授は、「目の近くに配置され、鮮明度のために小サイズの画面で高密度が必要となる、VR(仮想現実)ヘッドセットやAR(拡張現実)技術にとって特に魅力的な技術になる」と述べている。

 既存のLCDは、ネマチック液晶という薄い層(白色バックライトの光を変調する)を含んでおり、薄膜のトランジスタが各画素の透過を制御するために必要な電圧を供給している。1ピクセルは、赤、緑、青のフィルタを含む3つのサブピクセルからなっており、それらを組み合わせて色を生成し、3色全てを組み合わせることで、“白色”を出力している。

 ブルー相液晶は、従来のネマチック液晶と比較して約10倍の速さでスイッチング/制御できるのが特徴で、カラーフィルタを用いた場合には、赤緑青の光が同時に生成されるのに対し、ブルー相液晶を用いた色順次駆動方式LCDは、ブルー相液晶の「ミリ秒未満の高速な応答時間」という特性を活かし、赤青緑の各LED色を順次素早く切り替えて液晶を通して送ることで、カラーフィルタ不要で色を形成する。

 つまり1つのサブピクセルを使用して、3色全てを人間に知覚できないレベルで高速に切り替えることで色を生成するため、カラーフィルタ方式の3分の1のスペースで済み、解像度を3倍にできるという。

 また、カラーフィルタは透過率を約30%に制限してしまうため、ブルー相液晶は光効率も3倍になるという。加えて、赤緑青のLEDが直接発光しているため、色がより鮮明で、カラーフィルタで生じる色のクロストークという問題を回避できるとしている。

 しかし、ブルー相LCDは、2008年にSamsungによってプロトタイプが発表されているが、高い動作電圧とコンデンサ充電時間の遅さという問題を抱えており、そのために製品化に至っていなかった。

 今回、CREOLの研究チームは、それらの問題を解決するため、日本のJNC石油化学株式会社と、台湾のディスプレイメーカーAU Optronicsの共同研究者と協力。

 JNCとは、ブルー相液晶の誘電率を最小許容範囲に抑えることでトランジスタの充電時間を短縮し、ミリ秒未満の光学応答時間を得るために協力した。しかし、新ブルー相液晶でも、カラーフィルタ方式のような単一のトランジスタが提供するよりも、わずかに高い電圧を必要としたため、研究チームは、電界が液晶により深く浸透するよう電極を突出させた構造にすることで、高い光透過率を維持しながら、各画素を駆動するのに必要な電圧を低下できることを発見したという。

 実験では、カラーフィルタ同様に各ピクセルを1つのトランジスタで駆動する場合と比較しても十分低い動作電圧を実現し、かつ1ミリ秒未満の応答時間を達成したという。

 Wu氏によると、AU Optronicsは既に突出電極構造のプロトタイプを持っているため、JNCと協力し新しい材料をそのプロトタイプに組み込むだけのため、2018年にも動作可能なプロトタイプを利用可能になるとしている。