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D-Wave、”GeForce GTX 1080比で1万倍高速“な量子コンピュータ「D-Wave 2000Q」

~量子ビット数が前製品から2倍に

D-Wave 2000Q

 カナダD-Wave Systemsは24日(現地時間)、量子コンピュータ「D-Wave 2000Q」の商用利用提供開始を発表した。出荷開始予定は今四半期(2017年第1四半期)で、加入者に対し同システムへインターネット経由でリモートアクセスができるサービスも提供される見込み。

 D-Wave 2000Qは、量子アニーリング方式の量子コンピュータ。D-Waveは2年毎に量子プロセッシングユニット(Quantum Processing Units: QPUs)の量子ビット数を2倍にするとしており、今回その宣言通り、D-Wave 2000Qでは、量子ビットを1,000搭載した2015年8月発表の「D-Wave 2X」の倍にあたる、2,048-qubitを達成した。

 また、今回新たに搭載された「アニールオフセット制御機能」では、個々の量子ビットのアニーリングを調整することが可能となった。これによって小規模の整数の因数分解のデモンストレーションでベースライン性能が大幅に向上し、演算内容によっては、同機能を使用せずに問題を実行した場合よりも1,000倍以上高速に計算が可能であるとする。

 ベンチマークテストでは、最新のサーバーで実行される高度なアルゴリズムを、従来の単体CPUと2,500コアのGPUと比較して、1千~1万倍高速に処理できたという。量子モンテカルロ法を用いた比較では、GeForce GTX 1080比で1万倍高速であるとする。

 また、D-Wave 2000Qシステムは、消費電力で比較した場合でも、同じ問題解決性能のGPUベースの実装よりも、100倍の高効率を達成しているという(D-Wave 2000Qシステムは全体で25kW以下なのに対し、従来のスーパーコンピュータは2,500kWとしている)。

 電力効率は大規模なコンピューティングにおいて深刻な問題だが、D-Waveシステムは、連続する世代の場合、消費電力が前世代と同じで、今後も演算性能が向上しても消費電力量は継続されると予想されるため、今後ワットあたりの演算性能は、従来のシステムよりもD-Wave QPUが大幅に上回るという。

 量子力学の法則を用いて計算を行なう量子コンピュータにおいて、量子ビットは不安定なため、可能な限り安定した環境を用意することが必要とされる。

 D-Wave 2000Qシステムは、全体で約213.36×304.8×304.8cm(幅×奥行き×高さ)という大きさだが、システムのほとんどはQPUを格納するエンクロージャと制御のためのサブシステムが占めており、消費電力も同様だという。

 なお、D-Wave 2000Qでは、QPUの動作のため、絶対零度に近い0.015Kの極低温(-273°C)環境、大気圧の100億分の1の超真空空間、地球の5万分の1にあたる1ナノテスラにまで磁気の影響を防ぐシールドを備えるとしている。

 システムの価格は明らかにされていないが、同社は米国のセキュリティ企業Temporal Defense Systems(TDS)が初の購入を行なったことを発表しており、それによると、システムの価格は1,500万ドル(約17億円)となっている。なお、TDSとは将来的なQPUのアップデートも含んだ合意がなされたとあることから、価格にもそれらが含まれていると見られる。

設置時の様子
QPU