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富士通、人工光合成で従来比100倍以上の酸素発生効率を実現

~太陽光エネルギー反応を高効率化する新材料技術

高い電子電動特性を持つ薄膜形成プロセス技術。形成された薄膜は、ミクロ・マクロな欠陥がないため結晶性が良く、材料中の粒子間の電子伝達特性に優れた緻密な構造となっている。これにより太陽光で励起された電子を効率的に電極に伝えることが可能となる

 株式会社富士通研究所は7日、人工光合成技術で使われる明反応電極について、従来の光励起材料と比較して酸素の発生効率を100倍以上向上させる新しい薄膜形成プロセス技術を開発したと発表した。

 これまで太陽光と水が反応する明反応の電極において、半導体材料や比較的大きい粒子状の光励起材料を密度の低い構造で固めた材料が用いられていたが、太陽光(可視光波長)の中で利用できる波長範囲が狭いことから化学反応に十分な電流を取り出せなかった。

 同研究所は、フレキシブル実装シート上にキャパシタなどの受動素子を形成するための電子セラミックス成膜法を改良し、光励起材料の原料粉末をノズルで吹き付ける際、原料粉末を薄い板状に破砕しながら基板上に積層させる薄膜形成プロセス技術を開発。これにより、太陽光を吸収できる最大波長を490nmから630nmへと広げ、利用可能な光の量を2倍以上向上。この技術を用いることで、材料と水との反応表面積を50倍以上に拡大することに成功し、電子および酸素の発生効率を100倍以上向上できることを確認した。

 今後はさらなる改良を進め、特性の向上を図るとともに、暗反応部(二酸化炭素還元反応)や全体システムの技術開発についても取り組み、人工光合成技術の実用化を目指すとしている。

開発材料の太陽光の反射率