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デジタルインクの標準化を目指す団体が正式に発足

株式会社ワコム 代表取締役社長 兼 CEO 山田正彦氏

 株式会社ワコムは、東京都内の会場において同社が業界各社に呼びかけて設立準備を進めてきたデジタルペン/ペーパーの標準化を目指す非営利団体「デジタルステーショナリーコンソーシアム」が、米国デラウェア州で設立されたことを発表した。

WILLとユニバーサルペン構想がデジタルステーショナリコンソーシアムの鍵となる

 冒頭で挨拶に立った株式会社ワコム 代表取締役社長 兼 CEO 山田正彦氏は「ワコムが創業した30年前は、コンピュータグラフィックスも小さな業界だったが、今や多くのユーザーがCGでイラストを描いたりということがあたり前になりつつある。そして、製造業の現場でもペンは使われるようになっており、メルセデスやフェラーリのような自動車メーカーも、ナイキのようなスニーカーのメーカーも我々のデジタルペンを利用してデザインしている。そうしたペンで描かれるデジタルインクをもっとパワフルなツールにしていきたい」と述べ、同社が訴求しているデジタルペンで作られるデジタルインク(ペンの軌跡や筆圧、傾きなどを1つにしたもの)が、徐々にクリエイターの世界で一般的になっていったように、今後はコンシューマの世界でも普通にユーザーがペンを利用してデジタルインクを日々作り出すような世界がすぐに来るだろうというビジョンを説明した。そして、それを実現するための非営利の業界団体としてデジタルステーショナリーコンソーシアムを設立するとした。

デジタルステーショナリーコンソーシアムを設立
デジタルステーショナリーコンソーシアム

 続いて、ポートフォリオ管理・テクノロジーマーケティング担当副社長 ハイディ・ワン氏が登壇。ワン氏はWILL(Wacom Ink Layer Language)というデジタルインクデータの互換性確保とクラウド環境での共有を可能にする仕組みを説明した。「WILLはOSやソフトウェアから独立した仕組み」と述べ、OSなどから独立した中間言語としてWILLが規定されていることで、プラットフォームやソフトウェアに縛られていないことが特徴だと説明した。

株式会社ワコム ポートフォリオ管理・テクノロジーマーケティング担当副社長 ハイディ・ワン氏
WILLの仕組み
WILLはOSから独立している

 また、株式会社ワコム テクノロジーソリューションビジネスユニット担当上席副社長 井出信孝氏は、同社が推進しているデジタルペンの互換性への取り組みとなる「ユニバーサルペン」について説明し、ペンカートリッジ型のデジタルペン、同社のペンで採用されているプロトコルの開示およびライセンス提供、ペンIDナンバーなどについての説明を行なった。

株式会社ワコム テクノロジーソリューションビジネスユニット担当上席副社長 井出信孝氏
ワコムのペンを採用した電子ペン
ペンカートリッジ型の電子ペン
電子ペンのプロトコルを他者にも開示、ライセンスを行なう
ペンにIDナンバーを付加する
ペンIDナンバーを利用すると、特定のIDに特定の色を割り当てたりもできる
色が割り当てられたペンの例

 なお、詳しい内容は、9月にベルリンで行なわれたIFAでのイベントと重複しており、より詳しい内容に関してはそのレポートをご参照頂きたい。

コクヨや呉竹など、文房具メーカーがワコムペンを利用したソリューションをデモ

 引き続き、同社のパートナー企業の講演が行なわれた。コクヨ株式会社 事業開発センター ネットソリューション事業部長 長司重明氏は、コクヨが推進しているCamiAppS(キャミアップエス)に関する説明を行なった。「手書きのデジタル化ということでCamiAppSに取り組んだ。お客様とお話をすると、ITを使って便利にしたいということだが、現場では忙しいので使いこなせないという話があり、シンプルにCamiAppSで、デジタル化しそれをクラウドサービスのKintoneにアップロードするという仕組みを用意した」と述べ、CamiAppSを利用した、訪問介護の日報、朝礼の議事録、工場での日報、営業情報などの顧客の例を紹介した。長司氏は「ビジネスの現場では手書きへのニーズは沢山有ると感じている。手書きの世界をもっともっと広げていくことでもっともっと便利になっていく」とした。

コクヨ株式会社 事業開発センター ネットソリューション事業部長 長司重明氏
紙の帳簿は現在でも月間120万冊もでているという
CamiAppSを利用したソリューション
顧客の具体的な事例

 また、墨汁・書道道具メーカーの呉竹は、ワコムのペンを利用した筆先のデジタル化の取り組みについて紹介し、同社とワコムが共同して開発している筆のような書き心地を実現するペンのプロトタイプのデモを行なった。

呉竹とワコムがコラボレーション
筆ペンのような書き心地をデジタルペンで実現

デジタルステーショナリーコンソーシアムが正式に発足

 発表会の最後にはワコムの山田社長が再度登壇し、パートナーと設立を準備してきた非営利団体、デジタルステーショナリーコンソーシアムを、10月26日に米国デラウェア州で設立したことが明らかにされた。「デジタルステーショナリーコンソーシアムはグローバルな取り組みとして行なっていく。WILLをプラットフォームをインクフォーマットとして確立することを目的として活動していく」と述べ、グローバルに参加企業を集め、WILLをデジタルインクのデファクトスタンダードとすることを目指していくと述べた。

 デジタルステーショナリーコンソーシアムのメンバーシップには2種類がある。1つはコントリビュータで、日本語にすれば幹事企業と言ったところ。コントリビュータは10社程度が想定されており、メンバーシップフィーは2万ドル/年になる。もう1つはプロモーターで、デジタルステーショナリーコンソーシアムのソリューションを盛り上げる役割を担い、メンバーシップフィーは営利企業であれば3,000ドル/年、スタートアップ企業であれば1,000ドル/年、ユーザーグループなどの非営利団体やアカデミックなどであれば500ドル/年が予定されているという。

 山田氏によれば、現在メンバー募集の案内を行なっている段階で、来年(2017年)の1月に行われるCESの時期にラスベガスで行なわれる予定の次のイベントでは、主催がワコムからデジタルステーショナリーコンソーシアムに替わり、そこでコントリビュータやプロモーターなどのメンバーが発表される予定ということだ。

デジタルステーショナリーコンソーシアムの目的
デジタルステーショナリーコンソーシアムの活動
デジタルステーショナリーコンソーシアムのメンバーシップの種類
今後の予定
参加が期待されている企業