やじうまミニレビュー
4,980円のSIMロックフリースマホは安物買いの銭失いか?
2016年7月7日 06:00
「安物買いの銭失い」という諺がある。安いと思って買ったのは良いが、使い物にならなかったりすぐ壊れたりして、結局損したり高くつくという意味だ。だがIT業界では、この諺があまり当てはまらない。安さは絶対的な正義であり、自らの目で目的にあった安いものを選んだのなら、安物買いの銭失いにはならない。
しかし「安いにしても程がある」と思わせるような製品も世の中には存在するものだ。例えば今回ご紹介するGEANEE製のSIMロックフリースマートフォン「CP-D403」もその類である。Amazon.co.jpでの価格は4,980円だ。
本製品の主な仕様は、CPUMediaTekのMT6572、メモリが512MB、ストレージが4GB、4型のIPS液晶、OSがAndroid 4.2などとなっている。通信は3Gしかないのだが、それでもデュアルSIMスロットを備えているほか、Android 4.2の動作に必要な最低限のスペックは備わっている。安さが気になって仕方ないので、注文した次第である。
4,980円をどう見るかだが、確かに動作に必要な最低限スペックのスマートフォンとしてみれば、特別に安くは感じられない。1万円台前半でそこそこのスペックを持つLTEスマートフォンは多いからだ。そこから差し引けば本機の4,980円は納得できる。
しかしコンピュータ的な考え方で、デュアルコアCPU、マザーボード、512MBのメモリ、4GBのストレージ、モデム、バッテリ、そして4型のタッチ対応IPS液晶を、4,980円以内で調達できるかと聞かれれば、中古を持ってしても微妙である。色々仕組みや用途が違うので単純比較はできないが、安いと言われるボードコンピュータ「Raspberry Pi」ですら4,900円だから。
さて、いよいよ製品を見ていこう。パッケージについてこれといった特徴はないが、あちらこちらシールによって隠された跡がある。パッケージ内容物は、本体のほかに、ACアダプタ、Micro USBケーブル、バッテリ、そして説明書などがある。このうち説明書は今どきのスマートフォンにしてはそこそこのボリュームで、初回セットアップからプリインストールアプリの簡単な使い方まで網羅されているのが特徴である。
一方、付属するACアダプタはShenzhen Flypower Technology製の5V/1A出力のもの。発売元は株式会社メガハウス、製造元は株式会社コヴィアとされている。本体の背面にもGEANEEブランドのシールがはられており、その下に別の刻印があるようだ。そこでシールを剥がしてみたところ、「Fairisia MegaHouse」といった文字列が確認できた。
ACの情報も組み合わせると、このCP-D403の正体は、株式会社メガハウスが出している女の子向けスマートフォン「Farisia」から、プリインストールアプリやテーマを省いて、専用SIMの制限を排除し、SIMロックフリーにしたモデルだと見ていい。Farisia自体、発売は終了しているので、コヴィアは本来メガハウス向けに出す予定だった製品を、ジェネシスホールディングス向けに出したと言ってもいいだろう。
さらに付け加えると、CPU-Zなどの情報によれば、本製品の製造自体はSK Telesysという、韓国SKグループの企業が行なっているもののようだ。整理すると、本製品はメガハウスがFarisiaとして企画してコヴィアに製造を受託、SK TelesysがODMでコヴィアに製品を納入。しかし在庫に余剰があったので、シールを貼ってファームウェアを書き換え、ジェネシスホールディングスに納入した、と言ったところか。
物流に関してはこれぐらいにしておいて実際の使い勝手を見ていこう。液晶は4型という、今となってはもっとも小さいクラスなのだが、これがiPhone 5sなどと同様手にピッタリフィットして、ほぼ全ての操作を片手でできる。本製品はもともとスマートフォンを初めて手にするような女の子向けに設計されているだけあって、手が小さなユーザーでも片手で操作できるよう配慮されている。
本体はシンプルなアイボリー塗装で指紋が付きにくく、清潔感があるのだが、液晶表面は透過率がさほど高くないカバーがされているからか、比較的指紋が目立ちやすい。また、ダイレクトボンディングといった技術は採用されていないらしく、今どきのスマートフォンと比較すると視差があるのが気になった。
液晶はIPSパネルを採用しているため、発色は比較的よく、上下左右いずれの角度から見ても色変化が少なく概ね快適である。ただし残像はそれなりにある印象だ。ちなみにカメラは200万画素で、パーンフォーカスしか備えていなく、コントラストもキツめで、見栄えが良い写真が撮れるとは言い難い。
OSに関してはほぼ素のAndroidであり、プリインストールアプリもGoogle系がメイン。「データ通信設定(STG:CP-D403」という独自アプリが1個あるのだが、起動するといきなり会員IDとパスワードを聞かれ、用途がよく分からない。そのほかは日本語入力の「FlickWnn」がプリインストールされている程度。いずれにしても素のままのAndroidなので、特筆すべき点はない。
さて、本機で最も気になるのが性能だが、Antutu Benchmarkで計測したところ、結果は11,664と、今どきの端末としてはかなり低いスコアとなった。もっとも、本機はAntutu 3D Benchmarkを実行できなかったので、その分スコアが不利なのだが、いずれにしても価格なりの性能である。
ただし実際の操作については我慢しなければならないというレベルではない。メモリが512MBしかないので、Chromeで複数のタブを開いたりすると、直前まで起動していたアプリが終了し、切り替えると再起動になったりするのだが、メモリが512MBしかないと意識した上で、軽いソフトを動かす程度であれば、さほど問題にはならない。
通信速度はIIJmioのSIM(NTT回線利用のMVNO)を使用し、7月4日午後12時31分にRBB TODAY SPEED TESTを実行してみたところ、下り3.3Mbps、上り0.4Mbpsとなった。3Gとしては平均的な速度だろう。PC Watchの閲覧程度では特にストレスを感じることはなかった。
ヘッドフォン出力もかなり良好であり、ホワイトノイズが比較的少なく、素直な音である。先述の速度計測結果も含めて考えると、格安のデータ容量無制限SIMを入れておき、Google Play Musicで音楽を垂れ流すと言った用途には好適かも知れない。
なお、本機のもう1つの特徴として、2枚のSIMを挿せることも挙げられる。ただ、SIM管理画面でデータ通信や通話、メッセージをそれぞれどのSIMを介して行なうかという設定はあるものの、実際に有効になるSIMは1つだけで、同時待ち受けや同時利用はできなかった。用途は限られるので、あくまでもオマケ的な機能だ。
価格なりの部分もあるのだが、その辺りを割り切って使うのであれば面白い使い方ができそうだ。端末が故障した時の一時期の凌ぎや、一時的な海外旅行/出張での利用はもちろん、PCと組み合わせて、マザーボードのリモート監視ユーティリティをインストールしておき、常時PCをモニタリングしたりコントロールしたりといった用途にも使える。そう考えれば、手元に1台置いておいて損はない製品ではある。