やじうまミニレビュー

覚えるパスワードは1つでOK、パスワード管理デバイス「ミルパス PW20」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
ミルパス PW20

 サイバー攻撃は、個人を対象としたものよりも企業や団体を対象にしたものが多く、情報が漏洩してしまうことを自身で制御することが難しい時代になった。すると、複数サービスで同じID/パスワードを使い回すということは、どこかが攻撃を受けてしまうと、使い回している全てのサービスのアカウントが危険に晒されてしまう。

 つまり、何らかのSNSやECサイトなど、多くのサービスを利用するためには、それぞれIDとパスワードを考えなくてはいけない。かといって、増え続けていくサービス毎にIDやパスワードを変えていては、人間の記憶力には限界がある。

 パスワードを忘れてしまって、誰もログインできないアカウントをいくつか生み出してきた筆者としても、パスワードの管理は中々悩ましい問題だ。

 そんな悩みを解決してくれるのが、株式会社キングジムが発売するID/パスワードを管理する専用デバイス「ミルパス PW20」だ。

 21日に紹介(キングジム、液晶サイズが1.5倍になったパスワード管理デバイス)した本製品は、マスターパスワードを設定して、そのほかのID/パスワードを管理するデバイス。発売は7月8日だが、今回は発売前ながら、サンプル品をお借りすることができたので、レビューしてみたい。サンプル品のため、製品版とは仕様が異なる可能性があることを予めお断わりしておく。

 外観は黒のプラスチック製で、本体サイズは約84×68×11mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約57g。前機種「PW10」から、画面とタッチペンが大型化しているという。

 搭載する3.0型FSTN液晶は抵抗膜式タッチパネルで、本体に収納可能なタッチペンを備え、200件のパスワードと20件のグループを保存できる。Micro USBケーブルでPCとの接続が可能。

 電源はCR2032電池×2。バッテリ寿命は1日3分の使用で約8カ月としている。価格は6,480円。

パッケージ
内容

 初回起動時にタッチパネルのキャリブレーションとマスターパスワードを設定したら、個別のIDとパスワードを追加していけば使い始められる。

タッチパネルのキャリブレーション
マスターパスワードの設定

 設定を見ると、万が一の紛失や盗難時などに備え、マスターパスワードの入力間違いによって内部データを削除する機能もある。間違えた回数を何度まで許容するか設定することもできるが、マスターパスワードの入力以外に内部のデータを閲覧する方法はないため、マスターパスワードは絶対に忘れないように気を付けておきたい。

設定一覧
セキュリティ設定

 ID項目では、パスワードは自分で文字入力を行なって設定することも可能だが、文字数などを決め、パスワードジェネレータを利用して強固なパスワードを設定することもできる。

アカウントを登録
メモ項目も設定できる
パスワードジェネレータ

 抵抗膜式タッチパネルは、スマートフォンなどでお馴染みの静電容量方式に慣れた今となっては、操作性に優れているとは言えない。しかし、タッチペンが付属するため、思ったほど操作に苦労はしない。項目を選択する程度なら、爪の先でも十分な精度だ。

 問題は文字入力で、ID/パスワードの新規追加や、保存済みのIDの編集などを行なおうとすると、フルキーボードではなくキーパッド入力方式を採用していることもあり、中々難儀する。いわゆるケータイ入力なので、「お」を入力するのに「あ」キーを4回タップしなくてはいけないなど、抵抗膜式タッチパネルが連続タップと相性が良くないこともあり、誤入力が起きてしまう。記号入力は小さいキーを羅列したUIを採用しているのを見ると、せめてアルファベットは、多少キー間隔が狭くてもQWERTYで並べた方が良かったのではないかと思ってしまう。

 とはいえ、本製品はPCと接続し、専用ソフトウェアを介してデータを編集できるため、本体で入力せず、PCで編集してしまうのが基本的な運用になるだろう。

Mirupass PC Soft

 付属ソフトの「Mirupass PC Soft」では、項目の編集のほか、グループの編集、バックアップなどが行なえる。まだ公式ホームページには掲載されていないが、バージョン2.0とPW20の組み合わせでは、従来製品から通信速度を向上させているという。

 ソフトの対応OSは、Windows 7/8/8.1/10。Mac OSは非対応。インストール時には、PW20のドライバも一緒にインストールされる。

 PCと接続すると本体パスワードの入力を求められ、ログイン後にミルパスからデータ取得処理が行なわれる。

Mirupass PC Softインストール時に、ミルパス PW20のドライバもインストールされる
マスターパスワードを入力

 バックアップ処理を行なう場合は、マスターパスワードとは別に、バックアップを暗号化するためのパスワードを設定する。復元処理にはそのパスワードが必要となるため、こちらも忘れてはいけない。万が一マスターパスワードを忘れてしまっても、バックアップパスワードを覚えていれば復元できるため、同じパスワードを設定するのはオススメしない。

 本ソフトには、Webブラウザ上のフォームを認識し、自動入力を行なうといったような機能はないが、IDやパスワードといった項目上で右クリックをすれば、メニューから一発でコピーが可能なため、入力が面倒な複雑なパスワードを設定していても、入力の手間を省くことができる。

アカウント編集画面
右クリックでコピーできる

 パスワード管理という分野は、いくつかのセキュリティソフトベンダーなどがサービスを提供しているが、基本的にクラウドにデータを預けるというシステムのものが多く、確実に自分の手の届く範囲で制御したい(万が一の流失も自己の責任として納得できる)というニーズに応えられる物が少ない。そういった観点からいえば、ハードウェアとして存在するというのは、それだけでメリットとなる。

 また前述のサービスは月額課金のモデルが多いため、6,480円で買い切りとなることも踏まえて見れば、自身にとって「買い」かどうかも決まるはずだ。