Windows 8ユーザーズ・ワークベンチ
さらばWindows 8、初めましてWindows 8.1
(2013/6/19 00:00)
かつてのWindows 3.0は、PCの世界にGUIをもたらし、3.1で大きな進化を遂げた。同様に、随分と船出に時間がかかったものの、Windows 8はPCの世界にタッチをもたらし、今、8.1で、また何らかの進化をもたらそうとしている。今回は、そのタッチというオペレーションについて考えてみたい。
コンテンツに没頭するための全画面表示
Windowsは伝統的に、マウスとキーボードで、できることの違いがないように考慮されている。例えば、マウスでしかやりようがなさそうに思えるウィンドウサイズの変更すら、Alt+スペースによるコントロールメニューの中に「サイズ変更」が用意され、方向キーを使ってウィンドウサイズを自在に調整することができる。
かつてはタスクバーの左端にコントロールボタンがあったのだが、今は、そのウィンドウのアイコンが表示されているが、これをタップするとコントロールメニューが表示され、各種の操作ができるようになっている。キーボードショートカットならAlt+スペースだ。
こんな具合に、例えマウスが手元になかったとしても、キーボードだけを使って各種の操作をすることができるようになっている。これは、アクセシビリティの点でも優れた点だと言えるだろう。なんらかの事情でマウスを使うのが困難なユーザーでも困る場面がほとんどないからだ。もちろん、一般的なユーザーでも、マウスが壊れてしまったり、マウスを使うスペースが確保できない場合がある。そのようなケースでも困ることがないわけだ。
同様に、Windows 8は本格的なタッチの世界をPCの世界にもたらしたが、ここでもまた、タッチだけでWindowsを使っていても困ることがないように、さまざまな工夫が凝らされている。今までマウスやキーボードを使って簡単にできていたことが、タッチ操作だけになってしまってイライラさせられる場面は少なくないのだが、探してみれば、いろいろな操作方法が隠されている。
例えば、最初困ったのが全画面表示されたウィンドウを、元のサイズに戻す方法だ。例えばデスクトップ版のInternet Explorerは、キーボードのF11を押すことで、全画面表示に遷移する。この表示では、デスクトップのタスクバーと、Internet Explorerのウィンドウのタイトルバーとツールバーが非表示になり、スクリーン全体をコンテンツ表示のために広く使える。
マウス操作の場合はポインタをスクリーン上部に押し当てることでこれらのバーが再表示され、離すと再び非表示になる。これは「自動的に隠す」機能が有効に働いているからだ。表示されているときには、通常通りに各ツールやタブにアクセスすることができる。
タッチの場合はどうすればいいかというと、スクリーン最上部をタップ&ホールド、すなわち長押しすることでツールバーが再表示される。これを見つけるのに結構時間がかかってしまった。
ただし、再表示されたツールバーを元のように非表示にする方法がない。そのせいで、まるで、ツールバーつき全画面表示とツールバーなし全画面表示の2種類のモードが存在するかのようにも見える。これは、おそらくInternet Explorerのバグで、現在のところ回避する方法はなさそうだ。
ストアアプリのIntenet Explorerも、没頭型のインターフェイスのために全画面表示をするようになっている。タブに相当する同時に開いているページに移動するには、スクリーン上方からスワイプインすることで、その一覧が表示されるようになっている。また、アドレスバーはスクリーン下部にあって、これもまたスクリーン下方からのスワイプインでアクセスできる。
ストア版IEでは、上部をつかんでスクリーン下部にスワイプすることで、アプリそのもの、つまり、開いているIEを閉じることができる。
一方、全画面表示したデスクトップ版のIEをタッチ操作だけで閉じるにはどうするか。ストアアプリのように上部をつかんでのスワイプでは、デスクトップそのものが「閉じて」しまい、スタートスクリーンに遷移してしまう。
ただ、タイトルバーは非表示でも、通常はタイトルバーの右端に並ぶ3つのボタン、つまり、最小化、元のサイズに戻す、閉じるは、ツールバーの右端に表示されているので。ツールバーを表示させた上で、それをタッチすればウィンドウを閉じることはできる。
新しいOfficeの新しい試み
全画面表示と、通常のウィンドウ表示については、新しいOfficeの試みが今後の方向性を示している。まず、新しいWordでは「閲覧モード」と呼ばれるモードが用意され、このモードでは、用紙を前提としたレイアウトが無視され、横方向のフルスクリーン表示で横方向のスワイプ操作によって読み進めることができるようになる。
また、一般の編集画面には、ウィンドウ右上に「リボンの表示オプション」がある。「リボンを自動的に非表示にする」を実行すると、ウィンドウは自動的に最大化され、ほぼフルスクリーンに近い状態になる。そして、「…」ボタンをタップすることで、いつでもリボンが再表示され編集作業に使うことができる。この方法はタッチ操作もたやすいし、スクリーンも広く使えるので便利だ。
ただ、Wordの全画面表示では、Windowsのタスクバーは表示されたままだ。Internet Explorerのようにタスクバーまで乗っ取ってフルスクリーンになるようなことはない。
個人的には、いくら没頭型とはいえ、現在の時刻もわからなくなってしまうのはどうかと思っているので、タスクバーは表示されたままでもいいんじゃないかと思っている。それに、タスクバーがあれば、カンタンに他のアプリに移動することもできる。文字列等のオブジェクトをコピーしてペースト先に移るといった場合にも、そのほうが都合がいい。
また、Windowsのソフトウェアキーボードをタッチ操作で表示させるには、どうしてもタスクバーの通知領域上のアイコンをタップする必要がある。文字を入れたいのにタスクバーがなくてキーボードを表示できないというのは困る。だから、タスクバーはいつも表示されていた方が何かと便利なのだ。
もちろん、タスクバーを隠す方法もある。これは、Windowsの昔ながらのもので、タスクバーのプロパティで「タスクバー自動的に隠す」をオンにしておくのだ。
自動的に隠れたタスクバーを再表示するには、スクリーン下部エッジをタップすればいい。ところが、この隠れたタスクバーも、IEが全画面表示になっているときに再表示させる方法がない。こうした点を見ると、IEの実装は、相当特殊なものだということが言える。
ちなみに、タスクバーは、デスクトップの左右上下、任意の位置に置くことができる。「タスクバーを固定する」をオフにした状態で、バーそのものをドラッグすればいいのだが、この操作がタッチではできない。
つまり、クラッシックデスクトップ環境においては、タッチではできないこと、不自由なことがいくつか残されていると言える。
見えない敵をやっつけろ
つまるところ、GUIにしてもタッチにしても、確かにあるけれども目には見えないものにアクセスするのがとても大変だということだ。Windowsのタスクバーにしても、アプリのツールバーにしても、開いているコンテンツに没頭するためにあえて隠す。そして隠したことを知っている当人だけが、何らかの方法で、それを再表示させるといったことを考える。わかってしまえば簡単なことだが、ユーザーが新しい操作方法を直感で探っていくというのは、なかなか大変かもしれない。例えば、センサーの標準装備が当たり前といった時代、フルスクリーン表示の解除を本体のシェイクで行なうといったこともカンタンにできそうだが、果たして、それが受け入れられるかどうか。
いずれにしても、Windows 3.0が3.1で画期的によくなったように、Windows 8は8.1で生まれ変わるかもしれない。その期待を込めて来週のMicrosoft Buildの取材にでかけることにしよう。
そんなわけで、この連載もいったんここで区切りとしたい。といっても、これでおしまいというわけではない。例によって「カウントダウンWindows 8.1」として連載を開始することになっている。今年はIntelの第4世代プロセッサの登場や、8型台のWindowsタブレットなど、Windows PC周辺の話題には事欠かない。いろいろとおもしろい話が書けそうだ。ぜひ、ご期待いただきたい。