Windows 8カウントダウン

Metroとクラシックデスクトップの八合わせ



 Windows 8には、Metroスタイルというアプリケーションの新しい実行環境が用意される。従来のWindowsアプリケーション実行環境は、「クラッシックデスクトップ」と呼ばれるようになり、まるで、レガシーであるかのような扱いだ。だが、本当のところはどうなのか。

●クラッシックデスクトップあってこそのMetroスタイル

 結論を先に言ってしまうと、Windows 8にはシェルが2つあると考えた方がいい。1つはMetroのスタートスクリーンで、もう1つがクラッシックデスクトップだ。

 見かけの上では、Metroのスタートスクリーンに「デスクトップ」というシェルが登録されている。まるで、クラッシックデスクトップが、あたかもMetroスタイルアプリの1つであるかのようだ。

 だが、これはあくまでもメタファであり、実際にはそうではない。ちょうど、Windows 7までは、デスクトップがツリーの頂点とされ、その下に、個人用フォルダや、コンピューター、ネットワークなどがぶら下がっていたが、実際のフォルダツリーを見てみると、相変わらず、システムドライブであるCドライブのルートが頂点で、その下に各種フォルダがぶら下がっていたのに似ている。

 クラッシックデスクトップを実現しているのは、explorer.exeで、これはWindows 8になっても、Windows 7時代と何も変わらない。それを確認するには、タスクマネージャを開き、explorer.exeのプロセスを終了させてみればいい。これによって、いわゆるシェルとしては機能しなくなってしまうことがわかる。

 Windows 7でExplorer.exeを終了させると、デスクトップに横たわっていたタスクバーが消えてしまうものの、起動済みのアプリケーションはそのままで、自在に切り替えることができた。Windows 8でもこれは同様だ。

 そして、Windows 8のExplorer.exeを終了してしまうと、キーボードのスタートボタンを叩いても、Metroのスタートスクリーンは表示されない。また、起動済みのはずのMetroスタイルアプリはタスクマネージャーには表示されているが、そちらに切り替えることもできなくなる。

 これらからわかるのは、Windows 8は、あくまでもExplorer.exeがメインのシェルであり、その下でMetroスタイル環境が動いているということだ。また、Win32 APIは健在で、Metroスタイルを実現するWin RTは、Win 32に依存すると考えてよさそうだ。

スタートスクリーン。Metroスタイルアプリのライブタイルは、通信で得た内容の変更をダイナミックに表示する
タスクマネージャーには、explorer.exeを見つけることができる。このプロセスを殺すと、タスクバーが表示されなくなり、スタートスクリーンにも戻れなくなってしまう。起動済みのMetroスタイルアプリへの切り替えもできない

●2つのアプリを同時表示

 Metroスタイルのアプリは、スタートスクリーンから起動する。複数のアプリを起動することができ、あまり終了するということを考えることはない。

 起動済みアプリの切替には、キーボードからならWindows+Tabを使うのが順当なところだろう。タッチ操作ができる場合は、いったん左からスタートスクリーンにスワイプインし、そのまま手をはなさずに左にスワイプアウトすると、起動済みアプリがサムネールとして一覧表示されるので、そこから任意のアプリを選択すればいい。マウス操作なら左上コーナーをクリックし、その状態で左にドラッグするという手順になる。これは結構慣れるのが大変そうだ。

 Metroアプリ、デスクトップアプリ双方ともに、Metroではアプリを右または左にスナップすることで、少なくとも2つのアプリ画面を同時に表示させることができる。スナップできる条件としては、横方向に少なくとも1,366ドットが必要だ。仮に、一般的な1,366×768ドットであったとしても、この解像度を横方向に使っている場合はスナップができるが、縦方向に使った場合は解像度が不足しスナップができなくなる。縦方向へのスナップという考え方は用意されていないようだ。もちろん、横方向が1,366ドットを下回る場合は、スナップができない。つまり、Metroスタイルアプリを2つ同時に表示させることはできない。

起動済みのアプリをサムネールで一覧して切り替えることができる

●アプリ間の連携と共有

 たった2つとはいえ、複数のアプリを表示したいことはよくある。実際、何かを参照しながらメモをとるといったことはよくあるはずだ。

2つのアプリを表示することができる。ここではIE10とメッセージングアプリを並べてみた

 たとえば、ブラウザで、さまざまなサイトを巡りながら、各サイトで有用な記事をクリップしていきたいとしよう。

 普通に考えつくのはテンポラリのお気に入りフォルダを作り、有用な記事を見つけるたびにそこに登録していく方法だ。だが、MetroスタイルのInternet Explorer 10は、いわゆるお気に入りの概念がなく、スタートスクリーンにタイルとしてピン留めするかたちになってしまうので、ちょっとやっかいだ。

 あるいは、見ているページのURLを誰かにメールで知らせたいとしよう。この場合は、URLをコピーして、メールに貼り付けるという方法を考えつく。いわゆるクリップボードは健在なので、Metroスタイルアプリ間でもコピペの操作は可能だ。

 Metroスタイルアプリには、今風のモバイル環境では当たり前のように使われている「共有」という考え方がある。これを使えば、あるURLを見ていて、それを誰かにメールで伝えたいという場合には、チャームを出して共有をタップし、メールを選択すれば、今見ているページがサムネールとともに貼り付けられたメール作成画面が表示される。

 だが、これを実際にやってみると、実作業では困るなとも思う。たとえば、すでに書き始めているメールの中で、そういえば、あのURLを伝えたいと思ったときに、ブラウザを開いて共有しようとしても、書きかけのメールの中に共有してくれるわけではなく、新規のメール作成が行なわれるからだ。

ブラウザを使っているときにチャームを出すと、共有メニューから別のアプリを呼び出せる
メールに共有すると、開いていたページがメール本文に埋め込まれる

 いずれにしても、Windows 8に添付されているMetroアプリは、まだまだサンプルのようなもので、実操作環境に見合った使いやすいものに洗練されていくには時間がかかるだろう。これまでだって、Windowsのメモ帳アプリがマクロ機能を持たないとか、ペイントがレイヤー機能を持たないといったことでは腹もたたなかった。それと同じことだ。

 とにかく優れたアプリがいろいろ出てきて、パワフルな環境でMetroスタイルアプリを使ったときの使い勝手が高まることに期待したい。それはWindowsがWindowsであり続けるための必須の要件ではないだろうか。