Windows 8カウントダウン

Windows 8を束ねるWindows Live



 個人が複数台のデバイスを所有し、TPOに応じてそれらを使い分けるのが当たり前の時代がやってきている。当然、Windows 8もそのための仕組みを取り入れている。そのキーとなるのがWindows Liveだ。今回は、Windows 8とWindows Liveの関係を見ていくことにしよう。

●Microsoft IDをユーザーIDとして使う

 Windows 8は、そのセットアップ時に、Microsoft IDとしてのメールアドレスをユーザーIDとして使うようにナビゲートされる。Microsoft IDは、これまでWindows Live IDと呼ばれてきたものだ。もし、サービスに未登録で、IDを所有していない場合は、その場でサインアップすることもできる。当然、Microsoft IDにはパスワードが必要だ。つまり、Windows PCは必ずパスワードを設定するということを、ゆるやかに強制したいのではないだろうか。また、任意のメールアドレスを使い、Microsoftアカウントとは無関係な同期用アカウントを設定することもできる。

PC設定のユーザーでは、ローカルアカウントをMicrosoft IDに関連付けることができる。この関連づけはセットアップと同時に行なうこともできる

 Windows Liveは、Microsoftのクラウドサービスを総称するブランドで、最終的には、Windows 8との緻密な統合が予定されている。だからこそ、Microsoft IDと呼ばれるようになったわけだ。メールのHotmailや、ストレージサービスのSkyDrive、インスタントメッセージのLive Messengerなど、すべてがWindows Liveサービスだ。

 これらのサービスは、1度どれかにログオンすれば、シングルサインオンができ、他のサービスを利用する際にもIDとパスワードを入れる必要がなくなる。サインインアシスタントサービスが機能していたため、これまでも見かけの上では同様だったのだが、これをWindowsのログオンとも内部的に統合しようというのがWindows 8の新しいところだ。

 Microsoft IDは、メールアドレスを兼ねることができ、それがそのままHotmailのメールアドレスとしても使われるが、現状で、自分が普段メールアドレスとして使っているものをWindows Live IDとして登録することもできる。たとえば、Gmailでもかまわないし、通常使っている会社や学校のメールアドレス、プロバイダのものでもいい。この場合、文字列は「@」を含むメールアドレスのように見えて、Windowsにとっては、単なる記号的文字列として扱われる。

 もし、メールアドレスとWindows Live IDを別個に管理したい場合は、セットアップの際に、従来通り、任意のユーザー名を自分で決めてセットアップを完了し、あとで別のWindows Live IDに関連づけるなり、メールアドレスを別に設定すればいい。Windows Liveでは、任意のメールアドレスをアカウントとして指定することもできるが、その場合、Hotmailメールサービスは利用でき、受信トレイも準備され、自分のメールアドレスを差出人としたメールを送信することはできても、そのメールアドレス宛のメールは当然、そこには届かず、いつも通りのメールサーバーに届く。そのサーバーにアクセスしなければ、メールを読むことはできない。これについては、Hotmail側の設定で、POPサーバーを読みに行くようにするといった対処が必要になる。

 つまり、Windowsにログインするためのユーザー名は、

・Windows Live IDをローカルユーザー名として使う
・任意のローカルユーザー名を自分で決める

という2種類から選択することができ、後者を選んだ場合は、あとでMicrosoftアカウントと関連づけるか、あえて関連づけないという選択ができることになる。

任意のメールアドレス、または、Microsoftアカウントとローカルユーザーアカウントを関連付ける

●PC設定の同期で、複数台のPC環境を同一に保つ

 MicrosoftアカウントをWindowsのユーザー名として使ったり、Windowsのユーザー名を任意のMicrosoftアカウントや任意のメールアドレスと関連づけることで、PC設定の同期が行なわれるようになる。複数台のPCでWindows 8を使うときはもちろん、1台のPCしかなくても、PCを工場出荷状態に戻したりしたときに、元の環境に戻すのがラクになる。複数台のPCでWindows 8を使っている際には、1台のPCでの設定変更が、すべてのPCに連動するようになる。たとえば僕は、Windowsデスクトップの壁紙は白に近い単色で、タスクバーはデスクトップの上部だが、1台でそう設定すれば、他のWindows 8 PCも同じようになる。これは実用上便利きわまりない。

 何を同期させるか、あるいは、同期させないかは、MetroStyleの設定メニューから指定しておく。設定メニューの「PC設定の同期」では、同期する設定として、

・パーソナル設定 - 色、背景、ロック画面、アカウントの画像
・デスクトップのパーソナル設定 - テーマ、タスクバー、ハイコントラストなど
・パスワード
・アプリ、Webサイト、ネットワーク、ホームグループのサインイン情報
・簡単操作 - ナレーター、拡大鏡など
・言語設定 - キーボード、その他の入力方式、表示言語など
・アプリ設定 - アプリごとの設定とアプリ内で購入した商品
・ブラウザー - 設定と履歴やお気に入りなどの情報
・その他のWindows設定 - エクスプローラー、マウスなど

といった項目をオン/オフできる。

関連付けではさまざまな項目のオン/オフを決めておける。この設定はあとで変更することも可能だ

 また、Windows 8では、従量制課金の接続を特別なネットワーク接続として扱い、いわゆるパケ死を抑制することができるようになる。そのため、従量制課金接続での同期をするかしないか、ローミング中でも同期するかどうかをあらかじめ決めておくことができる。

●身近になるドメイン構成

 同期ができる項目のうち、パスワードに関するものは、PCの信頼を設定しないと同期することができない。これは最初の一度だけ、改めてMicrosoft IDを使って認証を行ない、確かにそのPCで、しかるべきユーザーが、しかるべきMicrosoft IDとの関連づけを認めていることを明示するわけだ。

 信頼済みPCとして追加をすると、Windows Liveアカウントセキュリティの確認メールが届く。そこに書かれたリンクをたどることで、各種の確認ができるようになっている。

 ただし、個人環境以外では、ドメインログオンなどとの関連とセキュリティポリシーの関連で、パスワードの同期などはできなくなっているようだ。このあたり、Windows Live IDのサービスと、Microsoft IDのサービスの整合性など、まだ、準備ができていなようで、詳細がわかるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

 ちなみに、ドメインユーザーは、目の前のPCに、ローカルユーザーとして、または、ドメインユーザーとしての双方でログオンすることができるのは今まで通りだ。実際のセットアップ作業では、いったんテンポラリの管理者ユーザー名でセットアップし、PCをドメインに参加させた上でドメインユーザーとしてログオンし直し、さらに、必要に応じてMicrosoft IDと関連づけをするという手順をとるのがいいだろう。

同期の設定は、後で自由に変更できる。ドメインユーザーの場合は、セキュリティポリシーによって制限があるようだ

 Windows Server 2012のエディション構成も発表され、特に、中小企業向けに提供されるEssentialsエディションは25ユーザーまで425ドルと、かなり廉価な価格設定にされるようだ。小規模のオフィスでもコスト的なハードルが低くなり、ActiveDirectoryを使った管理の恩恵を受けることができるようになりそうだ。Windows Home Serverの引退も発表されたことから、Exchange Serverの価格も戦略的なものになることが予想される。

 こうした点にも、クラウドと、ローカルの両面からクライアントPCを支えるMicrosoftの新しい戦略が見え隠れしている。

 ちなみに、Android端末でも、設定したGoogleアカウントに紐付けすることで、設定のバックアップ等が行なえるようになっている。この機能を有効にしておくと、その端末を初期化しても、もう1度セットアップをしてGoogleアカウントと紐付けすれば、過去にインストールしていたアプリなどが自動的にダウンロードされるようになっている。これがすべてではなかったりして、多少の不具合も散見されるのだが、Microsoft IDとの関連づけは、それと似たような環境を、Windows 8でも提供しようとしているということだ。

 こうしたことから、少なくとも、有料MetroStyleアプリの多くは、何台のPCにインストールしてもいいということになる可能性もある。Windows 8の登場によって、さまざまなエコシステムに大きな変化が起こることになるだろう。