Windows 8カウントダウン

iOSやAndroidを強く意識したWindows 8



 Windows 8はクラウドとの連携を比較的強く意識したOSだ。iOSやMac OS、AndroidといったOSが、その方向性を強める中で、こうした機能を実装してくるのは当然のことだといえるだろう。今回は、そのあたりを含めて、Windows 8のPC設定まわりについて見ていくことにしよう。

●マルチデバイスでWindows 8

 Windows 8は、そのセットアップ時にMicrosoftアカウントを使ってサインインすることを求めてくる。それをスキップした場合は、ローカルアカウントを作成することもできるが、あとで、そのローカルアカウントにMicrosoftアカウントを関連づけることもできる。

 ここでいうMicrosoftアカウントは、現時点でWindows Live IDなどが相当する。これによって、パスワードを設定せずにWindowsが使われることを抑止する意図もあるのかもしれない。ユーザーには、自分のMicrosoftアカウントに関連づけられたPCは、設定などをオンライン同期して、複数のPCで同様の環境を得られるというメリットもある。たとえば、ブラウザのお気に入りや履歴などの設定が同期されるといった便宜だ。

 以前には、Windows LiveサービスのSkyDriveとWindows 8との統合もアナウンスされていたが、まだ間に合っていないようだ。現在、Windows Live Meshとして提供されている機能でフォルダの内容を同期させたりすることができるというものだ。

 Consumer Preview(CP)には、 MetroStyleアプリの1つとして、SkyDriveがプリインストールされているが、今のところは単にウェブでSkyDriveを使っているのと変わらない。

 SkyDriveは、クラウド上のストレージサービスで、各PCからそのストレージを利用できるほかに、各PCと同期する「同期ストレージ」と呼ばれる独立した領域を提供している。これは通常の25GBのストレージとは別に、独立した5GBの領域が与えられ、その内容を各PCと同期することができるというものだ。この領域と、各PCの任意のフォルダを関連づけておくと、その内容が各PCに同期されるというものだ。今のところ、この設定は、Windows Live Meshを使って設定するしかない。

 Windows 8では、この設定がOSに統合され、通常のエクスプローラなどからも簡単に使えるようになるはずだが、CPの時点での実装はまだのようだ。

 いずれにしても、AndroidやiOSなどと同様に、アカウントとローカルデバイスを関連づけることで、複数台のデバイスでWindowsを使うユーザーの便宜をはかったり、PCの買い換えや、買い増しなどにも容易に対応でき、短時間でいつもの環境を入手できるようにするという方向性を提供しようとしている。

●PCの詳細設定を覗いてみよう

 こうしたアカウント設定を含め、PCに関する設定は、スタートスクリーンのチャームから「設定」を選択し、下部の「PCの詳細設定」から呼び出して、各種の設定を行なうようになっている。これは、従来で言うところのコントロールパネルに相当するものだと考えていいだろう。

 PCの詳細設定では、次のような要素を設定していける。見ればわかるが、クラッシックデスクトップのコントロールパネルから設定できる内容に対して圧倒的にシンプルだ。とりあえず、それぞれを紹介しておこう。

・パーソナル設定
ロック画面やスタート画面、アカウントを示すために使う画像を設定できる。また、ロック画面にはバックグラウンドで実行されているアプリの通知が表示されるが、そのアプリをここで指定することができる。

・ユーザー
アカウントのMicrosoftアカウントへの関連づけやパスワードの変更のほか、別のローカルユーザーの追加などができる。

・通知
アプリの通知の表示の有無など、通知関係全般の設定。

・検索
検索機能を呼び出したときに、検索に使うアプリを指定する。ここで指定しておいたアプリを検索時に使うことができる。たとえば地図なら地名を検索させたり、プレーヤーなら楽曲を探すといった具合だ。

・共有
個々のアプリにおける情報を、他のアプリに送る機能。デフォルトではメールのみが共有設定されていて、たとえば、ブラウザなどからURLをメールに貼り付けて送信するといったことができる。AndroidやiOSではお馴染みの機能だ。アプリ間のデータのやりとりは、この共有が主流になる可能性がある。

・全般
一般的な設定項目はここ。タイムゾーンや言語の設定を行なうほか、PCのリフレッシュや初期状態に戻す作業が行なえる。

・プライバシー
個人情報をどう扱うかについての許可について設定する。

・デバイス
接続されている周辺デバイスのリストを表示する。Windows 7における「デバイスとプリンター」と同様だ。

・ワイヤレス
Wi-Fiのオンオフの設定。電波を出さないようにするフライトモードなどをここで設定できる。ネットワークの詳細設定については、ここではできない。

・簡単操作
従来からコントロールパネルにあった「コンピューターの簡単操作センター」に相当する機能。

・PC設定の同期
同じアカウントでどのような情報を同期するかをここで設定しておく。各種の設定を同期できるが、インストールしたアプリが、他のPCにもインストールされるようなことはない。もしかしたらMetroStyleアプリでは、そのようなことができるようになる可能性もある。特定のアプリについては設定だけを同期させることができそうだ。

・ホームグループ
・Windows Update

この2つについてはWindows 7までと同様だ。

スタートスクリーンのチャームから設定をクリックし、「PCの詳細設定」で設定画面に入れる
PCの詳細設定画面。各種の設定項目がカテゴリに分類されている
アカウントは基本的にMicrosoftアカウントを使うが、ローカルアカウントに関連づけしてもいい
アプリ間で情報を共有する仕組みが取り入れられる。iOSやAndroidではお馴染みの機能だ

●まだ見ぬWindows 8の真実

 設定項目のうち、興味深いのは「全般」だ。まず、「PCをリフレッシュする」と「PCを初期状態に戻す」が用意されている。メーカー製のPCではリカバリと呼ばれていた操作だが、これをOS標準でサポートするようになった。両者の違いは、個人データを残すか、残さないかだ。「PCの調子が悪いとき」といった用語が使われているのは、ちょっと興味深い。

 また、「言語」については、クラッシックコントロールパネルの「言語」が呼び出されて、ここでWindowsで使う言語を指定することができる。入力言語は Windows+スペースで簡単に切り替えられる。また、オプションとして「表示言語」を指定することができ、ダウンロードすることで世界各国語のWindowsを楽しめる。どこの国でどのような言語のWindowsを使っていても、コントロールパネルをなんとか開くことさえできれば、「言語」に相当するものを開いて、日本語を見つけ、それをその環境に追加できるかもしれないし、メニュー表示なども日本語にすることができそうだ。そのためにも、コントロールパネルの言語アプレットのアイコンはぜひ覚えておくようにしたい。

 Windows 7では、表示言語についてはLanguage PackとしてUltimateでWindows Updateのオプションとして提供されていたが、それがごっそりとこちらに移動して統合された形だ。CPはUltimate相当なので、他のエディションでどのような扱いになるのか分からないのだが、iOSやAndroidでさえ各国語をサポートしているのだから、ここはひとつ、誰でも使えるWindowsの標準機能として提供してほしいものだ。

 また、少なくとも、現在のCPにおけるMetroアプリは、クリップボードを介してデータをコピー/ペーストできるようになっている。これに加えて「共有」という考え方が加えられているのは興味深い。アプリ間でコピペのできない環境は、ちょっと想像したくないのだが、メトロアプリの多くがクラウドと密接につながっている以上、本当にアプリ同士でコピー/ペーストが、無条件に許されてしまっていいのかとも思う。

 いずれにしても、CPはあくまでもCPであり、「油断は禁物だが、とりあえずエンドユーザーがインストールして次世代のWindowsもどきを体験できるビルド」というレベルにすぎない。本来なら実装されるはずの各種機能も、内部にコードは実装されているかもしれないが、UIが未実装で隠れて見えないといったものもたくさんあるのだろう。

 インターネットで目にする論調として、このCPを体験して、Windows 8に失望したといった声をよく見かけるのだが、それは早計だ。今の段階では、雰囲気を楽しめればそれでいい、くらいのつもりで、現バージョンを判断してほしい。

全般設定では、言語設定やPCのリカバリなどができる
用意されたさまざまな言語。追加するとそのIMEを使えるようになる。
メニュー表示などに使われる言語もダウンロードして追加できる。
コントロールパネルにある言語アイコンを覚えておこう。
MetroStyleのEvernoteアプリ。文字列を選択してコピーやペーストができることがわかる。他のアプリにもデータを渡せるようだ。