山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

圧縮ファイルとWindows 7



 PCで利用できる帯域幅とストレージは時とともに大きくなり続けている。テラバイトクラスのHDDが、バルクパーツなら1万円以下で買えるようになった今、果たして圧縮という行為が意義を持つのかどうか。今回は、Windows 7と圧縮フォーマットについて見ていくことにしよう。

●圧縮とアーカイブ

 ファイルの圧縮は、ストレージや帯域幅が小さかった頃には極めて重要で重宝する手段だった。ファイルを圧縮することで、転送時間は短縮できるし、ディスク容量の節約にもなるからだ。個人的に最初に愛用したのはarcだったが、lzhの登場以降はそちらに移行し、さらに、今は、zipを使っている。ちなみに、Windows 7は、標準で、lzhとzipに対応している。

 圧縮には2つの意味合いがある。それは、文字通りファイルサイズの低減、そして複数のファイルを1つにまとめるアーカイブだ。例えば、jpegファイルは、それを圧縮してもファイルサイズはほとんど変わらない。なぜなら、jpegそのものが、データを圧縮するフォーマットであるからだ。今、ファイルサイズが大きくて転送に時間のかかるファイルといえば、ディスクにコピーするにしても、クラウドにアップロードするにしても、そのほとんどが動画や静止画で、すでに圧縮済みの形式だ。だから、あまり、圧縮機能は重要視されないともいえる。

 それでもjpegやmpegファイルを圧縮するのは、意味のあるファイルの集合を、1つのファイルにまとめるためで、ちょうどHDDにフォルダーを作ってファイルを整理するのと似ている。この場合、圧縮ファイルの役割はファイルサイズの低減ではなく、ファイルのアーカイブということになるわけだ。

 さらに、圧縮は、ファイルが壊れていないかどうかを確認するためにも役に立つ。メールの添付ファイルとしてファイルを送る場合など、受け取った側が、添付ファイルとしての圧縮ファイルを正しく展開できるということは、そのファイルが正しく伝送されてきたということを意味する。壊れた圧縮ファイルは、それを正常に開くことができないからだ。

 かつて妙な経験をしたことがある。原稿を書き上げて、それを添付ファイルにしてインターネットメールとして送信したところ、受け取った編集者から行数が足りないという返信があったのだ。そのときは、ものの2,000字程度の文字だけの原稿だったので、テキストファイルをそのまま添付したのだが、行数はきちんと確認したし、手元にあるファイルを調べてみても規定の原稿量になっている。

 不思議に思って編集者に電話をかけて確認したところ、段落が1つスッポリと抜け落ちていた。以来、どんな小さなファイルでも、とりあえず圧縮してから送るようにしているが、その圧縮ファイルがほどけないという連絡をもらったことはない。だから、テキストファイルのままで送っても大丈夫なのだとは思うが、まあ、念のためにというわけだ。

 ファイルを圧縮することには、リスクもある。セキュリティソフトの監視をくぐり抜けてしまう脆弱性があるからだ。今年は、lzhの展開モジュールの作者が、セキュリティソフトの対応が進んでいないことから、使用の中止を申し出るようなこともあった。

●標準で展開できるlzhとzip

 さて、Windows 7だが、標準で扱える圧縮フォーマットはlzhとzipだ。lzhは展開のみ、zipに関しては、圧縮と展開の両方の機能を装備している。

 Windows 7では圧縮ファイルのことを「圧縮フォルダー」と呼んでいる。文字通り、ファイルそのものをフォルダーのように扱うことができ、その中にサブフォルダーを作って階層構造を作ることができる。

 拡張子lzhに関しては、それを展開するだけの限定的な操作しかできないが、zipに関してはひと通りのことができるようになっている。

 zipファイルを作成するには2つの方法がある

・適当な空の圧縮(zip形式)フォルダーを作り、その中にファイルをコピーする。
・まとめたいファイルを選択し、それを圧縮(zip形式)フォルダーに送る。

 前者では先に好きなファイル名をつけられる。後者では、複数のファイルの中の最初のファイルの名前がフォルダー名として使われる。あとでファイル名を付け替えても大丈夫だ。

フォルダー内を右クリックして圧縮(zip形式)フォルダーを新規作成できる
ファイルを選択して圧縮(zip形式)フォルダーに送ってもいい

 また、展開については、通常のフォルダーと同様に、普通にダブルクリックすれば、圧縮フォルダーの内容を確認することができる。このフォルダーウィンドウの上部には「ファイルをすべて展開」というコマンドリンクが表示され、これをクリックすることで、圧縮フォルダー名と同名のフォルダーが作成されて、その内容が展開される。

圧縮フォルダーを開くと通常のフォルダーのようにウィンドウが開く。上部に「ファイルをすべて展開」のコマンドリンクが表示される
「すべてのファイルを展開」をクリックすると、圧縮フォルダーと同名の通常フォルダーが作成され、そこにファイルが展開される

 Windows XPでは、パスワード付きのzipファイルを作成できたのだが、現在はできなくなっている。ただし、展開はできる。zipファイルを開くと、ファイル名の一覧はパスワードを入力しなくても表示されるが、それを開こうとすると、パスワードの入力を求めるダイアログボックスが表示される。そこで正しいパスワードを入力すれば、その内容を確認できる。フォルダー外にファイルをドラッグしたり、「ファイルをすべて展開」をクリックしても、同様にパスワードの入力を求められる。

パスワード付きの圧縮ファイルはファイルを参照する時点でパスワードの入力を求められる

 パスワード付きのzipファイルは、セキュリティソフトの対策を回避するための有効な手段にもつながる可能性があるので、あまり使ってほしくないというのが本音ではないだろうか。

●圧縮目的からアーカイブ目的へ

 世の中には、lzhやzip以外にも、さまざまな圧縮形式、アーカイブ形式がある。Windows 7が、その中の代表的な形式であるlzhとzipに標準で対応していることで、日常的にこれらの形式を使っていないユーザーも、特に違和感を感じることなく圧縮ファイルを扱うことができるようになった。PCスキルの高いユーザーにとっては、フォルダーをメールに添付するというのは、何か違うぞという気持ちも抱くかもしれないが、一般的な考え方では、それはできて当然のことで、それをかなえるための方法が圧縮フォルダーだ。

 最近は、PC以外のデバイスでメールを読み書きすることが多くなり、添付ファイルが圧縮されていることを嫌うユーザーも増えている。裸のファイルであれば、その場で開いて内容を確認できるのに、圧縮されていることで、それができなくなってしまうことがあるからだ。ただ、異なる形式のファイルを1つにまとめ、どれをどの順序で読んでほしいのかを指定したい場合もある。それぞれのファイルの優先順位を明示したい場合もある。そういったときにフォルダーで分類した状態で送れるのは都合がいい。そういう使い方に便利なよう、今後の圧縮ファイルの定番は、アドビのPDFや、そのポートフォリオ機能的なものに移行していくのかもしれない。圧縮よりも、アーカイブに意義が認められる時代だということだ。