山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

デスクトップの今を伝える標準ユーティリティ



 コンピュータの操作方法がGUIになって以来、離れたところにいるユーザーに的確な操作方法を伝えることが、とても難しくなった。これでは、トラブルが起こったときのサポートも難しい。そんなときに重宝するのがWindows 7に標準搭載されている「問題ステップ記録ツール」だ。今回は、簡単画面キャプチャのSnipping Toolと共に、その使い勝手を紹介しよう。

●ユーザーは必ずしも正確ではない

 「何もしていないのに、PCがおかしくなった」。

 この連載を読んでいる方の多くは、そんな相談を知人友人から受けたことがあるはずだ。何もしていないのにおかしくなることはまれだ。ハードウェアの故障くらいだろうか。コンピュータは指示したことを忠実に実行するだけで、おかしなことが起こるとすれば、たいていの場合、それは、自分、あるいは自分以外の人間の仕業だ。

 コマンドプロンプトでのコマンド入力でさえ、エラーなどのメッセージが目に入らないユーザーもいれば、GUIにおいては、警告のダイアログをよく読みもしないで閉じてしまっておきながら、何も表示されなかったといったりもする。

 ともあれ、目の前で何が起こっているのか、どのようなことをしたのかを正確に把握することができなければ問題を解決することはできない。Windows 7には、こうした状況を切り抜けるための便利なユーティリティが標準添付されている。それが「問題ステップ記録ツール」だ。

 このプログラムは、psr.exeという名前で、スタートメニューには登録されていないので、“Windows キー+R”で「ファイル名を指定して実行」する。あるいは、コントロールパネルのトラブルシューティングアプレットのナビゲーションペインから「友人の支援を受ける」をクリックし、ウィンドウ下部の「問題ステップ記録ツール」をクリックしてもいい。

psr.exeを起動するとボタンだけのウィンドウが開く。

 このツールを起動すると、ボタンが並んだだけの小さなウィンドウが開く。「記録の開始」をクリックして、PCの操作を開始し、一通り手順をなぞったところで「記録の停止」をクリックする。

 記録が停止すると、そのファイルを保存するためのコモンダイアログが表示される。ファイルの種類としてはzipとして保存されるようになっているが、保存したzipファイルの中には、Problem_日付_時間というファイル名がついたMHTMLドキュメントが格納されている。MHTMLドキュメントは、1つのファイルの中に画像やテキストなどすべての情報をアーカイブしたもので、デフォルトではInternet Explorerに関連づけられている。

MHTMLドキュメントの例。(アーカイブファイルのため、右クリックでダウンロードして解凍してください。psr.exeを使って記録したステップで、詳細に内容がわかるようになっています)

 このファイルを開くと、操作の様子がステップごとにキャプチャされて表示され、ユーザーがどんな操作をしたのかが詳しくわかるというわけだ。

 ユーザーは、操作の途中に、コメントを入れることもできる。操作の途中で「コメントの追加」をクリックすると、コメント入力のダイアログボックスが表示され、マウスポインタで特定箇所をドラッグして範囲指定することで、そのコメントが、どの部分に対するものなのかを特定することができるようになっている。

 また、直前に保存したファイルは、このツールからメールクライアントを呼び出し、添付ファイルとして特定の相手に電子メールで送ることもできる。

●論より証拠、百聞は一見に如かず

 デフォルトでは、画面の取り込みが有効になっていて、保存する最新の取り込み画像数は25画面となっている。この画面数は1~100までの任意の数に指定することができる。たいていの操作はデフォルトの25で間に合うだろう。MHTMLファイルでは、操作ステップごとの画面をスライドショー表示することもできる。

 このユーティリティは、問題に直面したユーザーが、誰かにヘルプを求める際に、目の前で起こっていることを正確に伝えるために便利なのはもちろん、よくわかっている誰かが、特定の操作方法を、別の誰かに伝えるためにも重宝する。

 携帯電話を耳にあて、双方がPCを目の前に置いて、ああでもない、こうでもないと口頭で伝えるよりも、ずっとスムーズに伝えたいことが伝わるだろう。リモートアシスタンスなどでは、相手に自分のコンピュータを勝手に操作させるという不安がつきまとう。でも、こうしたユーティリティを使えば、あくまでも、操作手順を情報として相手に伝えることができるので心理的な抵抗も少ないはずだ。

 保存したファイルは、当然、自分でもあらかじめ参照できるので、プライバシー的にまずいものが取り込まれていないかどうかも確認してから相手に送ることができる。ステップごとの詳細情報には、ユーザーのキー入力も含まれているが、Ctrl+文字キーなどの機能キーの打鍵以外の通常の文字入力は、“・・・・” と省略して表現されるようで、ここでもプライバシーは守られている。

●簡単にキャプチャして落書き

 こうした高度な記録ツール以外にも、今、目の前で起こっていることを記録するためのツールがある。Snipping Toolは、画面キャプチャ用のユーティリティで、次の4種類を選択して、ある瞬間のデスクトップで起こっていることを記録することができる。

・自由形式の領域
・四角形の領域
・ウィンドウの領域
・全画面領域

Snipping Toolのウィンドウ。さまざまな画面領域の切り取りができる。

 キャプチャしたイメージには、蛍光ペンツールでマーキングしたり、ペンで図やコメントを手描きしたりしてわかりやすいものにすることができる。

 イメージは、その場で電子メール送信したり、JPEG、PNG、GIF、MHTMLといった各種形式で保存することができる。また、キャプチャした領域は自動的にクリップボードに入っているし、書き込みなどをした場合は、もういちどクリップボードにコピーし、任意のプログラムに貼り付けられる。

画面の領域を任意の形に切り取って落書きするといった加工ができる。

 ということは、使いようによっては、Twitterでつぶやくときの画像に、ちょっとした落書きを施すような用途にも便利かもしれない。Windowsの画面キャプチャは、Print Screenキーや、Alt+Print Screenなどがよく知られているし、ちょっと探せばフリーのユーティリティもたくさんある。でも、標準でどのWindows 7にも含まれているSnipping Toolの存在は、覚えておくと重宝するかもしれない。