山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

OSとしてサポートするメディアストリーミング



 前回は、Windows 7がサポートするメディアファイル形式の多様さと、Windows Media Player(WMP)やエクスプローラーによるコンテンツ管理について見てきた。今回は、引き続き、各種メディアコンテンツのネットワーク対応について見ていくことにしよう。

●DLNAに対応したWindows 7

 Windows 7にはネットワークを介してコンテンツを他のデバイスに配信する機能が用意されている。興味深いのはプルとプッシュの双方がサポートされている点だ。

 いわゆるコンテンツサーバーをネットワーク内に見つけ、それが公開しているコンテンツを再生することと、コンテンツサーバーとして配信することの両方をサポートする以外に、別のデバイスに再生を指示することができるのだ。

 標準化対応という意味ではDLNA対応だ。現在、DLNAでは3つのカテゴリに分類された12種類のデバイスクラスが規定されているそうだが、Windows 7は、そのうちホームネットワークデバイスカテゴリの中のサーバーとプレーヤーの両方になれるのに加え、コントローラ、レンダラーとしても機能する。なお、Windows 7としてはDLNAという用語を使わず、メディアストリーミングという言い方をしている。

 Windows 7のDLNA関連の機能をまとめると、

  • 【サーバー】 コンテンツのディレクトリ情報の配信などを含めて各種リクエストに応える
  • 【プレーヤー】 サーバーからディレクトリ情報をもらい、コンテンツを選択してリクエストし、それを自力で再生する
  • 【レンダラー】 サーバーからコンテンツを受け取って表示するがリクエストはコントローラが担当
  • 【コントローラ】 サーバーにリクエストして、レンダラーにコンテンツを配信させる

以上、4つの役割をサポートする。

 これらはOS標準の機能であり、アプリケーションとしてのWMP12の機能ではないということになっている。実際に、WMP12のストリームメニューから設定する「その他のストリームオプション」は、コントロールパネルのホームグループにある「共有の詳細設定の変更」で「メディアストリーミングオプションの選択」を実行したものと同じだ。

 コントロールパネルからのアクセスでは、かなり階層が深く見つけにくい。しかも、これらの機能はホームグループと明確にひもづけられているわけではない。さらに、WMPを起動していないとレンダラーにはなることはできない。これはWMPがプレーヤーであると同時に高機能レンダラーでもあるということだ。関連APIを用意しているのがOSとしてのWindows 7であり、それを呼び出して機能を目に見える形にするのがアプリケーションとしてのWMP12であるということになる。

コントロールパネルのネットワークと共有センター内から深い階層をたどってたどりつく
WMPとコントロールパネルアプレットの双方からメディアストリーミングオプションの設定ができる

●エクスプローラーからもリモート再生ができる

 サーバーやプレーヤーの機能はなじみ深いが、レンダラーやコントローラはどうだろうか。Windows 7では、コントローラとしてレンダラーを指定して再生を指示する機能を「リモート再生」と呼んでいる。

 サーバー、コントローラ、レンダラーはすべて別のPCであってもかまわない。ただし、メディアストリーミングオプションで、コンテンツのストリーミングやアクセスを許可しておく必要がある。許可設定はストリームメニューからも簡単にできるようになっている。そしてレンダラー役PCでWMP12を起動しておき、コントローラ役PCのWMP12でローカル、または、別サーバーのコンテンツを右クリックし、ショートカットメニューから「リモート再生」を実行し、再生させたいレンダラー役のPCを選択すればいい。

AACファイルはリモート再生が表示される
AACファイルならエクスプローラでもショートカットメニューからリモート再生ができる

 レンダラー側でいったん再生が始まると、以降は、レンダラー側でも停止や早送りといったコントロールができる。

 ちなみに、エクスプローラー上でファイルを見つけ、それを右クリックしても、ショートカットメニューの中にリモート再生が表示される。これらの機能がOSに実装されたものであると言わんばかりだが、結局は、WMP12のモジュールが呼び出されるにすぎないようだ。

 ファイルの種類によってはショートカットメニューにリモート再生が表示されないものもある。たとえば、BMPファイルは、デフォルトではWMP12の画像として登録されないが、強引に追加すれば「その他のメディア」として登録される。そして、WMP12内で追加したBMPファイルを右クリックすればリモート再生ができるのだが、エクスプローラ上でBMPファイルを見つけて右クリックしてもショートカットメニューにリモート再生は出現しない。このあたりの仕様はちょっと複雑だ。

BMPファイルは右クリックしてもショートカットメニューにリモート再生が表示されない

●さまざまなシーンでリモート再生を楽しもう

 リモート再生のレンダラーにPCを使うくらいなら、そのPCで直接再生した方がてっとり速いと考えるユーザーもいるかもしれない。確かに1人ならそうだろう。大画面TVにHDMIなどでPCを接続し、操作はPCで行ない迫力ある画面でコンテンツを楽しめばいい。でも、数人がPCを持ち寄り、おのおののコンテンツを見せ合いながら、ああでもない、こうでもないといった楽しみ方をするなら、ちょっと事情が違ってくる。そのような場合は、PCを1台だけ大画面TVにつなぎ、それをレンダラーとして各自がリモート再生させれば、複数人が自分が見せたいコンテンツを大画面TVに出力することができる。

 たとえばビジネスシーンであれば、視察の報告会を写真やビデオを見せながら順にプレゼンテーションするようなときに使うと便利だ。順にPCをつなぎ替えればよさそうなものだが、順不同に割り込みを繰り返して再生できることが便利なのだ。カジュアルシーンであっても、コレクションを見せ合うようなケースは少なくないはずだ。

 意外に便利なリモート再生なのだが、これがOSの機能であるというのであれば、そのPCでアプリケーションがあれば表示再生できるコンテンツは、すべてリモート再生できるようになっていればよかったと思う。リモート再生では、レンダラーの能力やネットワーク帯域幅を調べ、それにあわせてトランスコードやビットレートの抑制などが行なわれる。だったらPowerPointのスライドショーなどはもちろん、PDFやWord、Excelのファイルなどでもリモート再生ができたら便利そうだ。画面のスナップショットを簡単にとれるSnipping Toolユーティリティを使ってJPEGファイルを作れば済む話なのだが、もう少しうまい方法があればと思う。例えば「リモート再生」という名前のプリンタを用意して、そこに出力すればレンダラーで再生されるような機構でもいいかもしれない。

●専用機の導入も検討したい

 リモート再生を頻繁に楽しむようになると、そのたびにPCを接続するのがめんどうくさくなる。古いノートPCを1台専用に使うという手もあるが、おそらく、古いノートPCにはHDMI端子などが用意されていないだろう。

AVeL Link Player

 そこで導入をおすすめしたいのが、レンダラー専用機だ。例えば、アイ・オー・データ機器のDTCP-IP対応ネットワークメディアプレーヤー「AVeL Link Player(AV-LS700)」のような製品がある。13,000円前後で売られているようで価格的にもリーズナブルだ。

 この製品は名前が示す通り、DLNA的にはプレーヤーであり、DLNAクライアントとして有線でローカルのネットワークに接続し、HDMIやコンポジットで接続した大画面TVにサーバー上のコンテンツを再生できる。DTCP-IPに対応し、アイ・オー・データ機器の地デジチューナで録画したコンテンツもプレーヤーとして再生ができる。

アイ・オー・データ機器のAvel Link Playerでのストリーミング再生の許可情報を細かく設定することができる

 さらに、このプレーヤーはレンダラーとしても機能する。残念ながら地デジコンテンツのリモート再生はできないのだが、WMP12がサポートするような、それ以外のコンテンツであれば大丈夫だ。

 プレーヤーとして利用する場合は、10フィートのGUIなので、サーバー側のコンテンツが多いと、見たいものを探すのが大変だ。でも、リモート再生なら手元のノートPCで素早くコンテンツを探し出し、それを再生させればいい。つまり、手元のノートPCが高度な検索機能つきのリモコンとして機能するわけだ。この製品はUSB端子を持ち、接続されたマスストレージ内のコンテンツを再生することもできるし、SDカードスロットもあって写真や動画など各種のコンテンツを再生できるが、PCが手元にあるなら、操作性のよいUIを持つWindows上からのリモート再生が圧倒的に便利だ。