山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

多彩なファイル形式対応で使いやすくなった
Windows Media Playerとエクスプローラー



 Windows 7は多くのファイル形式に対応した点は高く評価したい。Vistaまでは、コンパクトデジカメで撮影したQuickTimeムービーのような古くから使われているフォーマットでさえ、それを再生するためにはユーティリティ等のインストールが必要だったからだ。今回は、多彩なフォーマットに対応し、使い勝手も高まったWindows Media Playerについて見ていくことにしよう。

●OSとしての対応とアプリとしての対応

 Windows 7に搭載されているWindows Media Playerはバージョンでいうと、12.0.7600.16415だ。以降は便宜上「WMP12」と呼ぶことにする。

HDビデオムービーカメラで撮影したm2tsファイルも、AVCHDビデオとして認識され、プレビューもできる。撮影日時の問題はあるが、ファイル単体で管理することもできそうだ

 新たに各種フォーマットに対応したことで、iTunesのデフォルト形式であるAACや、HDビデオムービーカメラが作成するAVCHDムービーのm2ts、QuickTimeムービーのMOVなどがダブルクリックするだけで再生できるようになった。もちろん一般的なMPEGファイルはもちろん、H.264エンコードのMP4ファイルなどもスンナリと再生できる。欲をいえば、FLVなどもサポートしてほしかったところだ。

 奇妙なのは、たとえば、アナログテレビの時代に作成したDVDをドライブにセットして、その内容をのぞくと、VIDEO_TSフォルダの中に、動画の実体であるVOBファイルが並んでいるが、それをダブルクリックしても再生できないのに、エクスプローラーのプレビューでは先頭の映像が確認できる点だ。OSとしてのWindowsはしっかりファイルの形式を理解しているが、アプリケーションとしてのWMP12は知らないふりをしているといった印象だ。

一部の楽曲ファイルはメディア使用権限がないという表示になり、その他のメディアに分類されてしまう

 もう1つ不思議なのは、同じiTunesのm4aファイルであっても、音楽と認識するものとしないものがある点だ。音楽と認識しないものは左側のナビゲーションウィンドウに「その他のメディア」としてはじかれて表示されている。だが、それらのコンテンツは再生はできるのだ。プロパティを見ると「このファイルに、メディア使用権限がありません」という表示される。CDからiTunesを使って取り込んだだけのファイルであり、その理由がわからないし、同じCDの中には音楽として認識されている楽曲もある。それにこれらは楽曲としてMP3プレーヤーにもちゃんと同期できるのだ。手元にある直近のCDでは、木村カエラの「5 Years」というベストアルバムのDisk 2をiTunesで取り込むと、その中の多くの曲がうまく認識できないようだ。

●転送時にコンテンツを相手に合わせる

 多少、不可解な面もあるが、多くの場合、ファイルの種類をユーザーが意識することなく、ただダブルクリックするだけで再生、表示ができるというのはうれしい。それに加えて、WMP12では、相手の能力に合わせて転送時にファイルの形式をトランスコードをするという機能も実装されている。

 たとえば、比較的廉価なMP3プレーヤーは、サポートファイル形式として、MP3とWMAのみというものが多い。デザインも多様で、本体にクリップがついているものなど、ジムでトレーニングするときなどはiPodよりも使い勝手がいいものがたくさんあるのだが、個人的には楽曲ファイルをm4aで統一している関係で、変換してから転送しなければならない。

 だが、WMP12は、接続したMP3プレーヤーに、その能力を尋ね、再生可能な形式に変換して同期する機能を持っている。音楽ファイルの再エンコードなので時間もそれほどかからない。ここでもまた、ユーザーは、自分が所有している音楽データのファイル形式を意識することなく、つないだプレーヤーに音楽を転送できるのだ。

 これは、動画ファイルも同様だ。たとえば手元では、まだアナログ多チャンネル録画機であるX Video Staitonが現役で毎晩の番組を録画し続けているが、それが生成するファイルはMPEG形式だ。一方、愛用のメディアプレーヤーである東芝のGigabeat V80はWMVのみの対応で、MPEGを再生することはできない。だが、これも同様に、MPEGファイルを同期すれば、自動的にWMVに変換されて転送される。

 1時間ドラマを録画したMPEGファイルは、ビットレート8Mbps程度、サイズは約1.61GBで、アナログなので、フレームサイズは720×480だが、それが手元の環境では、5分ほどで変換を終了し、10秒程度で転送される。転送結果をチェックしてみると、ビットレートは803Kbpsに落ち、フレームサイズも360×270にリサイズされ、333MBにダイエットされていた。

 一方、HDムービーカメラで撮影した m2ts形式のフルHDムービーファイルは、30秒ほどのファイルでビットレートは17Mbps程度、サイズは75MBだが、これも何も考えずに同期させると、フレームサイズ480×270、ビットレート800KbpsのWMAファイルに変換して転送された。サイズは4MB以下になっていた。

 これで同じように地デジの録画済み番組も同じように転送できればどんなに便利かと思う。さらには、この変換機能をエクスプローラーなどから明示的に、あたかもコピーの一種のように使えるようになっていてほしかった。

●エクスプローラーとの連携で高まる使い勝手

 多彩な形式に対応したことはうれしい限りだが、コンテンツの管理機能はどうだろう。WMP12では、Windows 7のライブラリと連動してコンテンツを分類するようになっている。デフォルトでライブラリとして表示されるのは、

・再生リスト
・音楽
・ビデオ
・画像
・録画一覧
・その他のメディア
・CD、DVDおよびデータディスク

となっている。このうち音楽、ビデオ、画像が個人用ライブラリに連動している。残念なのは、メモリカードリーダーや、USBメモリ、USB外付けHDDといったリムーバブルメディアをライブラリに追加できないことだ。

 だが、Windows 7には便利な機能が用意されている。エクスプローラーで、リムーバブルディスクに割り当てられたドライブを右クリックし、ショートカットメニューから「ポータブルデバイスとして開く」を実行すると、あたかもポータブルメディアプレーヤーであるかのように、ドライブ名がナビゲーションウィンドウに表示され、そこに記録されたコンテンツを扱うことができるようになる。

iTunesのミュージックフォルダもライブラリとして表示される。ファイルにジャケット画像を埋め込んでおけばジャケット情報が表示されるが、iTunesが自動的に取得したものに関しては音符のマークになる。ミュージックフォルダをエクスプローラーで表示させたところ。その場で再生もできる。ファイル形式はAACのm4aだ。

 もちろんファイルを同期させることもできる。ただし、リムーバブルメディアは、WMP12の問いかけに対して自分の能力を告げることができないため、同期の際には、単にファイルのコピーが行なわれるだけだ。

 デバイスのプロパティには「品質タブ」が用意され、同期時の変換について設定ができるようになっているが、音楽に関しては品質レベルを選択してビットレートを落としたりしておくと同期時にエラーとなってしまうし、ビデオに関しては設定内容すらグレーアウトされる。こんな状況なので、リムーバブルメディアには普通にコンテンツファイルをコピーし、WMP12は再生専用に使うのがよさそうだ。

 いずれにしても、WMP12の進化によって、エクスプローラーのプレビューがとても使いやすくなった。特に、プレビューボタンをクリックするだけで、プレビューのオンオフが切り替わり、その場で再生や頭出しができ、必要に応じてWMP12に再生を移行できる。ファイルの整理はエクスプローラーを使い、WMP12は再生専用に使うというのもありだろう。

 振る舞いが奇妙なところもあり、まだまだ謎の多いWMP12だが、次回は、ネットワークを介したコンテンツ配信について見ていくことにしたい。

リムーバブルメディアはポータブルデバイスとして開くことができるポータブルデバイスのプロパティでは、同期時の品質を指定できるが、リムーバブルメディアの場合、手動で指定しようとすると同期時にエラーになる。また、ビデオに関する設定はグレー合うとされている