笠原一輝のユビキタス情報局

Intelが第4世代Coreプロセッサの内蔵GPUのブランドと性能を公開

〜第3世代に比べて2〜3倍の性能向上を実現

 米Intelは5月1日(現地時間)、米国カリフォルニア州サンタクララ市内において記者会見を開催。6月4日に正式発表を予定している第4世代Coreプロセッサの内蔵GPUの新ブランド名を発表し、同時にベンチマークデータを公開して内蔵GPUが従来製品に比べて高い性能を持つとアピールした。

 開発コードネーム「Haswell」で知られる同製品は内蔵GPUが大きく強化されており、Intel内部のコードネームで「GT3」と呼ばれる最上位の構成の内蔵GPUとなる「Intel Iris Pro graphics」では、Direct3D 11.1でサポートされる新機能に対応したり、ディスプレイキャッシュ(eDRAM)により高い性能を実現。記者会見の会場においても実際に「Intel Iris Pro Graphics 5200」(GT3+eDRAM)を搭載したノートPCを利用した3Dゲームのデモを行なった。

CPUにGPUが統合され最新プロセスを利用、2006年に比べて75倍の性能を実現

 Intel PCクライアント事業部グラフィックスマーケティング課長ジョン・ウェア氏は「第4世代CoreプロセッサのGPU性能は、2006年の統合型GPUの75倍に達する」とアピールした。実際、Intelの内蔵GPU性能は向上し続けている。特に大きなジャンプとなったのは、“Sandy Bridge”の開発コードネームで呼ばれた第2世代Coreプロセッサだ。この世代では、以前チップセット側などにあった統合型GPUがCPUと同じダイに統合された。

 このことは、Intelの内蔵GPUの性能強化にとって大きな意味があった。Intel副社長兼アーキテクチャ事業本部戦略担当部長エリック・メンター氏は「従来の統合型GPUは、GPUがチップセット側にあり、CPUのプロセスルールに比べると1〜2世代前のプロセスルールで製造されていた。しかし、現在のGPUはCPUと同じ最先端のプロセスルールを利用して製造されている」と述べ、最先端のプロセスルールを利用して製造されることになったことでGPUに利用できるトランジスタも増え、それにより性能向上が実現できているとした。

 Intelでは経済的なスケールメリットも考慮して、プロセッサを最先端のプロセスルールで製造し、ノースブリッジを1〜2世代前、サウスブリッジを2〜3世代前のプロセスルールで製造するというビジネスモデルを採用していた。こうした仕組みを採用していたのは、CPUの製造に利用されなくなった古い製造プロセスルールのラインを有効活用するためだ。古いプロセスルールの製造ラインは製造装置の原価消却なども終わり、非常に低コストで作ることができるからだ。

 しかしこうした仕組みは、当然のことながらGPUに集積できるトランジスタの数が減ってしまうことになる。集積できるトランジスタ数が増えることは、性能を上げることができることと同義であるため。チップセット内蔵GPUでは性能を上げることは難しかった。これがIntelの統合型GPUが、ディスクリートGPUに比べて性能面で大きく劣っていた1つの理由になっていた。

 Sandy Bridge世代から、GPUがCPUに統合された結果、最先端のプロセスルールを利用して製造することができるようになった。第4世代Coreプロセッサでは22nmプロセスルールを利用して製造されているが、これは現在NVIDIAがAMDが単体型GPUの製造に利用している28nmプロセスルールに比べても1世代進んだプロセスルールになる。より微細化されたプロセスルールであれば、CPUと共有するとしても、それなりのトランジスタをGPUにも割くことが可能になる。その結果、内蔵GPUの性能を向上できるわけだ。

Intel PCクライアント事業部グラフィックスマーケティング課長ジョン・ウェア氏
Intel副社長兼アーキテクチャ事業本部戦略担当部長エリック・メンター氏
最先端のプロセスルールを統合型GPUにも利用できるようになって飛躍的に性能が向上した

28WのSKUは、単体型GPUを搭載していたUltrabook向けのSKUとなる

 ウェア氏は第4世代Coreプロセッサに内蔵されているGPUの新機能については「パッケージに統合されたeDRAMバージョンが用意されているなど、GPUそのものの性能が大きく引き上げられている。さらに、Direct3D 11.1、OpenGL 4.0など最新のAPIにも対応している。このほか、4Kサポート、DisplayPort 1.2対応、より高速でより変換品質が向上した“Quick Sync Video”、OpenCL 1.2のサポートなどが追加されている」と述べ、多くの点で現行製品の第3世代Coreプロセッサ(Ivy Bridge)に比べて向上していると説明した。

 すでに明らかになっている通り、Intelは第4世代Coreプロセッサには、3つのGPUのSKUを用意している。「GT3」、「GT2」、「GT1」がそれで、このうちGT3の一部モデルに関してはeDRAMと呼ばれる一種のディスプレイキャッシュとして動作するパッケージに統合される。これを利用することで、レイテンシ削減や帯域幅の有効利用が可能になり、より高い性能を実現できる。なお、GT3、GT2、GT1のエンジン数などについて具体的な情報は今回の記者会見では公開しなかった。

 この第4世代Coreプロセッサに内蔵されるGPUの正式なブランド名も明らかになった。それによれば、GT3e(GT3+eDRAM)のSKUは「Intel Iris Pro Graphics 5200」、TDPが28WになるUプロセッサに搭載されるGT3が「Intel Iris Graphics 5100」、TDPが15WになるUプロセッサに搭載されるGT3が「Intel HD Graphics 5000」、GT2のクライアントPC向けが「Intel HD Graphics 4600/4400/4200」、GT2のワークステーション向けが「Intel HD Graphics P4700/P4600」、GT1が「Intel HD Graphics」となる。ハイエンド向けの製品に別ブランドであるIris(アイリス)が与えられて、差別化されることになる。

 このうち解説が必要なのは、Uシリーズの第4世代Coreプロセッサのグラフィックスだろう。以前の記事でも触れたが、UシリーズにはTDPが15Wと25WのSKUがあると言われてきた。今回Intelは正式にUシリーズに2つのTDPの枠があることを明らかにしたが、正確には15Wと28Wであることが判明した。この28Wの枠に関しては「OEMメーカーの中には、Ultrabookに単体型GPUを搭載してリリースしているベンダーがある。そうしたベンダー向けに28W枠を用意した」(ウェア氏)としている。

 今回の会見では、第4世代Coreプロセッサの詳細を説明しなかったが、以前の記事でも触れた通り、Uシリーズの第4世代CoreプロセッサはPCI Express x16がない見通しであり、OEMメーカーが単体型GPUを搭載するのは事実上不可能になっている。そこで、高いグラフィックス性能を必要とするユーザーに向けて28WのTDP枠を用意することで、GPUのクロック周波数などを引き上げられ、ディスクリートGPUを搭載した場合と同じような性能を実現することが可能になる。

 現行のIvy Bridgeを搭載したシステムでは、CPUが17W、チップセットが2W前後、単体GPUが10W前後となっており、トータルで30W弱のTDPとなっている。このため、GPUを強化したUシリーズが28WのTDPであれば、現在Ivy Bridge+ディスクリートGPUとして提供されているUltrabookの筐体に十分収まることになり、OEMメーカーは現在の熱設計をそのまま利用し、Haswell世代のUltrabookを製造することが可能になる。

第4世代Coreプロセッサの内蔵GPUの特徴
ハイエンドの内蔵GPUに新しいブランド「Iris」(アイリス)が導入される
GT3e(GT3 + eDRAM)、GT3(TDP 28WのUシリーズに内蔵されているバージョン)がIris Pro、Irisの別ブランドで呼ばれる事になる

前世代に比べて2〜3倍のGPU性能を実現する第4世代Coreプロセッサ

 さらにIntelは、初めて第4世代Coreプロセッサの内蔵GPUの性能を公開した。Ultrabook向けとしては、現行製品Core i7-3687U(TDP 17W、Ivy Bridgeデュアルコア+GT2)と比較して、Core i7-4558U(TDP 28W、Haswellデュアルコア+GT3)が2倍、Core i7-4650U(TDP 17W、Haswellデュアルコア+GT3)が1.5倍という性能を実現しているとした。

Ultrabook向け(Uプロセッサ)第4世代CoreプロセッサのGPU性能

 フルサイズのノートPCでは、現行製品Core i7-3840QM(TDP 45W、Ivy Bridgeクアッドコア+GT2)と比較して、Core i7-4900MQ(TDP 47W、Haswellクアッドコア+GT2)が1.5倍程度、Core i7-4950HQ(TDP 47W、Haswellクアッドコア+GT3e)が約2倍、さらにCore i7-4950HQをcTDPで55Wに枠を引き上げた時には2倍を超える性能を実現するとした。

フルサイズノートPC向け(M/Hプロセッサ)の第4世代CoreプロセッサのGPU性能

 デスクトップPCには2つのSKUが紹介され、現行製品のCore i7-3770K(TDP 77W、Ivy Bridgeクアッドコア+GT2)と比較して、Core i7-4770K(TDP 84W、Haswellクアッドコア+GT2)が約1.5倍、Core i7-4770R(TDP 65W、Haswellクアッドコア+GT3e)が3倍近いパフォーマンスを発揮されるとした。

 なお、Core i7-4770Rはこれまで存在が明らかになっていなかった製品で、AIO(ディスプレイ一体型デスクトップPC)向けのSKUとなる。この製品はもともとノートPC向けとして開発されてきたBGAパッケージをAIO向けに転用した製品となるため、デスクトップPC向けでありながらGT3eが採用されている。デスクトップPC向けとしてはハイエンド向けとなるKプロセッサ(倍率ロックが外れているオーバークロック向けのSKU)だがGT2を統合しているCore i7-4770Kよりも高い3D性能を発揮しているのはそのためだ。

デスクトップPC向け(K/Rプロセッサ)の第4世代CoreプロセッサのGPU性能

 なお、今回の記者会見では第4世代Coreプロセッサの一部SKUが明らかにされたが、そのほかのSKUや価格などに関しては公開されなかった。ウェア氏によれば「正式な発表は6月にCOMPUTEX TAIPEIで行なう。その場で詳細は明らかになるだろう」とのことだ。

デモに利用されたIntel Iris Pro graphics 5200(GT3e)を搭載したノートブック
【動画】Intel Iris Pro Graphics 5200を搭載したノートブックによるデモ。1080pのディスプレイでコードマスターズの「GRID 2」という3Dゲームをプレイしているところ。自動車が発生する煙などの表現にはDirect3D 11.1(いわゆるDirectX 11.1)が利用されている

(笠原 一輝)