PC使いこなし塾

Microsoft Office 2016をこれから使うあなたへ【第8回】

~Excel中級編その3。意外に知られていないExcelの隠れた便利機能

 Excelというと表を作成するツール、というのが多くの人の認識です。しかし表を作るのは、ほんの一部の機能でしかありません。Excelの本当の実力が発揮されるのは、表を作成した”そのあと”です。今回は、そのあとに使う機能の中で、あまり知られていない「え? こんなこともできるの!」という、隠れた便利機能を紹介します。

 次の3つは、簡単な操作ですぐに結果を目に(耳にも)することができます。今すぐ必要なくても使ってみたくなる機能です。

  • フラッシュフィル - 自動的に文字列を整えてくれる!
  • 条件付き書式 - 目的のデータやセルが一目で分かる!
  • セルの読み上げ - セル内容をExcelが読み上げる!
図のような表を作成するのは、そう難しくはありません。必要なデータを入力し、列幅やセルの色を調整するくらいです。このあとデータの修正、検索、チェックを行なう時に役に立つ便利な機能を紹介します

文字列を自動的に整える!ルールに従ってデータを修正する「フラッシュフィル」

 一覧表に入力したデータの構成をあとから変更したいということはよくあります。例えば、「氏名」に入力した名前を「姓」と「名」に分けたい、あるいは、「都道府県」と「市区町村番地」に分けて入力したデータを1つにしたい、そんな時に役に立つのが「フラッシュフィル」です。

 フラッシュフィルは、ルールに従ってデータを自動的に編集する機能です。方法は、サンプルとしていくつかのデータを編集します。あとはフラッシュフィルを実行するだけです。これで、ほかのデータがサンプルと同じように編集されます。もしフラッシュフィル機能を使わなければ、関数を駆使してデータを作り直す必要がありますが、フラッシュフィルならアッという間です。難しい関数の知識も必要ありません。

「氏名」を「姓」と「名」に分けます。サンプルとして1件目の「姓」を入力します。ここでは、空白より前の文字列を「姓」とします。あとは、[データ]タブの[フラッシュフィル]をクリックします
「氏名」の空白より前の文字が「姓」に取り出されました。「名」の方も同じように1件目を入力し、[フラッシュフィル]をクリックします。取り出された「姓」や「名」は求めるものになっているか必ず確認しましょう
ほかにも「分類」と「番号」を繋げて「会員番号」にしたり、「氏名」の最後に「様」の文字を追加したり、規則的に変更するデータなら、いろいろなことが可能です

 フラッシュフィルは、サンプルとして入力したデータから規則を認識し、それに従ってほかのデータを変化させます。複雑な規則の場合は認識しないこともあるので、とりあえず試してみましょう。なお、フラッシュフィルは、Excel 2013、Excel 2016に装備されている比較的新しい機能です。

目的のデータやセルが一目で分かる!自動的に書式が変わる「条件付き書式」

 データの中から条件に合うものを探す時、「条件付き書式」なら色ですぐに見つけられます。Excelでデータを探すというと、まず思い浮かぶのは「検索」機能ですが、「検索」は条件に合うセルに移動するのが目的です。「条件付き書式」は、条件に合うデータを目立たせる機能です。

 「条件付き書式」は、セルに条件を設定し、その条件が満たされた時、書式(セルや文字の色、罫線など)が変わります。条件は、特定の文字を指定したり、数値なら「~より大きい」や「~から~まで」のような細かい指定も可能です

数値データを対象に「20,000より大きい」データに色を付けてみましょう。対象のセルを選択し、[ホーム]タブの[条件付き書式]→[セルの強調表示ルール]→[指定の値より大きい]をクリックします。文字データを対象にする場合は、[文字列]をクリックして条件を指定します
ダイアログボックスが表示されるので、条件となる「20000」を入力します。セルや文字の色を指定するなら、「書式」をクリックして変更します。「20,000より大きい」値に色が付きます。値を修正して条件に合わなくなると色はなくなります。

 「条件付き書式」の基本をマスターしたら、さらに応用的な使い方にもチャレンジしてみましょう。条件付き書式は、入力データを目立たせるだけでなく、空白セルを目立たせることもできます。特定のセルが空白の時色が付くように設定しておけば、入力箇所を色で示すことができ、入力漏れを防げます。

入力するセルを選択し、[ホーム]タブの[条件付き書式]→[新しいルール]を選びます。表示されるダイアログボックスで[指定の値を含むセルだけを書式設定]、[空白]を設定し、[書式]をクリックしてセルの色を指定します。
色が付いているセルが入力箇所です。その場所にデータを入力すると色は消えます。これなら誤った箇所への入力を防ぐことができます。「条件付き書式」の応用的な使い方です。

 このように「条件付き書式」は、工夫次第でいろいろな使い方ができます。[条件付き書式]→[上位/下位ルール]では、トップ10や平均値以上に色を付けるなどのバリエーションもあります。どんな場面に使えるか考えて見てください。

セル内容をExcelが読み上げる!「音声読み上げ機能」

 Excelに読み上げ機能があることは、意外に知られていません。というのは、画面上のリボンには読み上げ機能のボタンが存在しないためです。使うにはボタンを「クイックアクセスツールバー」に表示しておくと便利ですす。一度表示しておけば、必要な時すぐに利用できます。セルで「Enter」キーを押すとデータを音声で読み上げてくれる読み上げ機能は、入力データのチェックなどに利用できる実用的な機能です。

まずクイックアクセスツールバーにボタンを追加表示します。[クイックアクセスツールバーのユーザー設定]をクリックし[その他のコマンド]をクリックします。するとExcelの設定を行なう「Excelのオプション」画面が表示されます
[コマンドの選択]の[▼]をクリックして「リボンにないコマンド」を選びます。下の枠から[Enterキーを押した時にセルを読み上げ]を選択し、[追加]ボタンをクリックします。右側の枠に表示されたら、[OK]ボタンをクリックします
クイックアクセスツールバーにボタンが追加されるので、クリックして機能をオンにします。あとは、読み上げたいセルをクリックして[Enter]キーを押します。[Enter]キーを次々に押していくと、列の内容が順に読み上げられます。読み上げをやめるには、ボタンをクリックして機能をオフにします

 「読み上げ機能」は、実はExcelの古いバージョンから存在します。昔はボタンが表示されていたのですが、現在よく使われるExcel 2013や2016では、ボタン表示がなくなったため、本当に隠れた機能になってしまいました。日本語の読み上げ精度はかなりのものです。入力データを目と耳でチェックしたい時に重宝します。

Excel 2016新機能紹介

 Excel 2016の新機能「予測シート」は、既存のデータから将来のデータを予測します。月々の売上金額のデータから、今後の売上を予測し、数値とグラフで確認することができます。このような予測は、これまでのExcelでも関数を使えばできましたが、使い慣れない人にとってはハードルの高いものでした。Excel 2016の「予測シート」なら、今あるデータを崩すことなく、別の新しいシートに予測結果が表示されるので、気軽に使うことができます。

 予測シートの使い方の詳細はできるネットの記事(Excel 2016の新機能「予測シート」の使い方。ワンクリックで将来の数値をグラフ化!)を参照ください。

週単位や月単位など一定間隔で蓄積したデータを用意します。データ内の1つのセルをクリックしたあと、[データ]タブの[予測シート]をクリックします。グラフが表示されるので、色の違う部分の予測データを確認し、[作成]をクリックします
元々のデータとは違う、新しいシートに予測された値を含む表とグラフができます。予測値は、FORECAST.ETS 関数を始め、Excel 2016で追加された関数を用いて計算されています
製作協力:日本マイクロソフト