多和田新也のニューアイテム診断室

Phenom II/Athlon IIが一歩前進。1月発表のPhenom IIを試す



 AMDは1月25日、Phenom IIおよびAthlon IIの新製品を発表した。いずれも既存モデルのクロックアップ版となる製品だが、今年のAMD製CPUの方向性を垣間見ることができる製品といえるだろう。ここでは、Phenom II各製品およびAthlon II X4の新製品をチェックしてみたい。

●DenebのC3リビジョンを採用

 1月25日に発表されたAMD製CPUのラインナップについては、当日のニュース記事をご覧いただきたい。この製品群のうち、ここでは「Phenom II X4 910e」、「Phenom II X2 555 Black Edition(以下、Black EditonをBEと表記)」「Athlon II X4 635」の3製品を取り上げる。

 Phenom II X4 910eは、末尾の「e」が示すとおり低消費電力版としてラインナップされるモデルだ(写真1)。クアッドコア製品としてはこれまで、Phenom II X4 905eが提供されていたが、これに次ぐ低消費電力版となる。

 CPU-Zの結果は画面1に示しているが、ここで分かるとおり、コアは昨年11月に登場したC3リビジョンを採用している。C3リビジョンはこれまで、Phenom II X4の既存モデルへの適用が中心だったが、クロックアップ版という新製品を投入してきたことになる。

 そのクロックはPhenom II X4 905eから逓倍を半段アップして、200MHz×13の2.6GHz動作となった。TDPは従来と変わらず65Wだ。

【写真1】Phenom II X4 910e。OPNは「HD910EOCK4DGM」 【画面1】Phenom II X4 910eにおけるCPU-Zの結果

【表1】Phenom II X4 910e の仕様

Phenom II X4 910e Phenom II X4 905e
OPN HD910EOCK4DGM HD905EOCK4DGI
動作クロック 2.6GHz 2.5GHz
L1データキャッシュ 64KB×4
L2キャッシュ 512KB×4
L3キャッシュ 6MB
HT Linkクロック 2.0GHz
対応メモリ DDR3-1333/DDR2-1066 DDR3-1333/DDR2-1066
動作電圧 0.85〜1.25V 0.825〜1.25V
周辺温度(最大) 71℃ 70℃
TDP(最大) 65W

 Phenom II X2 555 BEも、同じくDenebのC3リビジョンを用いてクロックアップした製品となる(写真2、画面2)。動作クロックはPhenom II X2 550 BEからやはり半段アップの200MHz×16で3.2GHz動作。TDPも従来と変わらず80Wを維持している。

【写真2】Phenom II X2 555 Black Edition。OPNは「HDZ555WFK2DGM」 【画面2】Phenom II X2 555 Black EditionにおけるCPU-Zの結果

【表2】Phenom II X2 555 Black Edition の仕様

Phenom II X2 555 Black Edition Phenom II X2 550 Black Edition
OPN HDZ555WFK2DGM HDZ550WFK2DGI
動作クロック 3.2GHz 3.1GHz
L1データキャッシュ 64KB×2
L2キャッシュ 512KB×2
L3キャッシュ 6MB
HT Linkクロック 2.0GHz
対応メモリ DDR3-1333/DDR2-1066
動作電圧 0.875〜1.40V 0.850〜1.425V
周辺温度(最大) 70℃
TDP(最大) 80W

 Athlon II X4 635はブランド名が示すとおり、L3キャッシュレスのクアッドコア製品となる(写真3)。Athlon II X4 630の2.8GHzに対して、同じく半段アップの200MHz×14.5で2.9GHz動作となった。

 本製品はPropusコアのC2リビジョンが使われており、これはAthlon II X2 630と同じ。先述したDenebコアの製品とは異なり、コアのリビジョンを上げることなくクロックアップ製品を投入していることになる。

【写真3】Athlon II X4 635。OPNは「ADX635WFK42GI」 【画面3】Athlon II X4 635におけるCPU-Zの結果

【表3】Athlon II X4 635 の仕様

Athlon II X4 635 Athlon II X4 630
OPN ADX635WFK42GI ADX630WFK42GI
動作クロック 2.9GHz 2.8GHz
L1データキャッシュ 64KB×4
L2キャッシュ 512KB×4
L3キャッシュ なし
HT Linkクロック 2.0GHz
対応メモリ DDR3-1333/DDR2-1066
動作電圧 0.875〜1.425V 0.925〜1.425V
周辺温度(最大) 71℃
TDP(最大) 95W

●新旧モデルの性能比較

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表4に示したとおりで、ここでは比較対象にAMD製の従来モデルを2製品用意した。性能や消費電力の傾向の上下関係を知る参考にしてほしい。

 なお、ビデオカードのドライバであるが、テスト開始が最新のCatalyst 10.1リリース前であったため、ここでは1つ前のCatalyst 9.12を用いている。

CPU Phenom II X4 910e
Athlon II X4 635
Athlon II X4 630
Phenom II X2 555 Black Edition
Phenom II X2 550 Black Edition
チップセット AMD 785G+SB710
マザーボード ASUSTeK M4A785TD-V EVO
メモリ DDR3-1333(2GB×2,9-9-9-24)
グラフィックス機能
(ドライバ)
Radeon HD 5870
(Catalyst 9.12)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.12(ST3500418AS)
電源 KEIAN KT-1200GTS
OS Windows 7 Ultimate x64

 まずは、Sandra 2010aのProcessor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark(グラフ1)、PassMark Performance Test 7のCPU Test(グラフ2)、PCMark05のCPU Test(グラフ3〜4)の結果から見ていきたい。

 CPUベンチマークにおける性能はマルチコアへの最適化も進んでおり、価格帯が近い製品はあるものの、クアッドコア製品とデュアルコア製品は分けて見る必要があるだろう。大局的にはコア数が同じであればクロックが高いほど良い結果を出す傾向にある。

 しかしながら、L3キャッシュを6MB持つDenebコアを用いたPhenom II X4 910eが、より動作クロックが高いL3キャッシュレスのAthlon II X4の両製品を上回るケースも見られる。こうした傾向は後述する実際のアプリケーションを用いたベンチマークテストでも見られるものだ。

【グラフ1】Sandra 2010a (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PassMark Performance Test 7(CPU Test)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−シングルタスク)
【グラフ4】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−マルチタスク)

 メモリ周りの性能は、Sandra 2010aのCache & Memory Benchmark(グラフ5)と、PCMark05のMemory Latency Test(グラフ6)でチェックする。キャッシュの性能についてはコア数とクロック差で性能が左右されている。

 メインメモリの実効帯域は、少々バラつきのある結果となった。いずれの環境もDDR3-1333で、設定上はレイテンシも同じ。実際のレイテンシテストの結果もPhenom II X4 905eがやや遅いものの、全体にはそれほど大きい差ではない。にも関わらず、Phenom II X2を使った場合に実効アクセス速度が落ち込む傾向が見られる。少々気になるポイントであり、こうした傾向が発生し得ることは気に留めておくべきだろう。

【グラフ5】Sandra 2010a(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ6】PCMark05 Build 1.2.0(Memory Latancy Test)

 続いては実際のアプリケーション、ゲームなどを用いたベンチマークテストの結果を紹介する。テストは、SYSmark 2007 Preview(グラフ7)、PCMark Vantage(グラフ8)、CineBench R10(グラフ9)、POV-Ray(グラフ10)、ProShow Gold(グラフ11)、動画エンコード(グラフ12)、3DMark Vantage/3DMark06のCPU Score(グラフ13)、3DMark VantageのGraphics Score(グラフ14)、BIOHAZARD 5 ベンチマーク(グラフ15)、Far Cry 2(グラフ16)、Tom Clancy's H.A.W.X(グラフ17)である。

 全般にクアッドコア製品が優秀な結果だ。クアッドコア製品同士の比較では、Athlon II X4 635が動作クロックの高さもあって優秀な傾向にある。ただ、Phenom II X4 910eもL3キャッシュを持つことのメリットによって動作クロックの不利を覆すシーンが見られる。この傾向はとくにゲーム系ベンチで表れているのは納得できる結果といえよう。

 デュアルコア製品は上下関係がはっきりした製品同士の比較ということで、新モデルとなるPhenom II X2 555 BEが良好な結果だ。動作クロックの上がり幅は100MHzに過ぎないが、安定した性能アップが見られるのは好印象を受ける。

【グラフ7】SYSmark 2007 Preview(Ver. 1.06)
【グラフ8】PCMark Vantage Build 1.0.1
【グラフ9】CineBench R10
【グラフ10】POV-Ray v3.7 beta 35
【グラフ11】Photodex ProShow Gold 4.0
【グラフ12】動画エンコード(SD動画)
【グラフ13】3DMark Vantage Build 1.0.1/3DMark06 Build 1.1.0 (CPU Test)
【グラフ14】3DMark Vantage Build 1.0.1(Graphics Test)
【グラフ15】BIOHAZARD 5 ベンチマーク
【グラフ16】Far Cry 2(Patch 1.03)
【グラフ17】Tom Clancy's H.A.W.X

 最後に消費電力の測定である(グラフ18)。今回のテスト製品は大きく3つのTDPに分かれる。95WのAthlon II X4両製品、80WのPhenom II X2両製品、65WのPhenom II X4 910eである。消費電力もこの3つに区分できるといって良いだろう。

 Phenom II X4 910eはさすがに消費電力が低く抑えられており、ピーク時にもデュアルコアのPhenom II X2両製品を下回ることができている。

 面白いのは、クロックアップ製品となった、Athlon II X2 630/635、Phenom II X2 550/555 BEの比較だ。同じリビジョンのコアを使ったクロックアップ製品であるAthlon II X4は高クロック製品であるAthlon II X4 635の消費電力が増してしまっているのに対し、リビジョンの変更もあったPhenom II X2 555 BEは、前モデルと同等の消費電力に留まった。性能アップについては先述のとおりであり、新リビジョンの効果が表れた結果といえる。

【グラフ18】消費電力

●Phenom II/Athlon IIが着実な進化をすべき1年

 新製品とはいえ、前モデルからのクロックアップのみということで、全体的にインパクトには乏しい結果となったが、逆にいえば順当な性能向上、ブランド毎の個性が表れた結果だった。

 既存のモデルの価格が下がってきている中、これらは元の価格帯を埋める(各ブランドの)最上位モデル投入であり、価格面でも妥当性の高いものといえる。これまでどおりコストパフォーマンスの魅力はあるし、アップグレードパスとしても単純なクロックアップということで安心感がある。

 ちなみに、AMDの次世代CPUであるBulldozerが2011年とされる以上、今年は昨年登場したDeneb、Propus、Regorの3つのコアが主力となる。今回登場した製品はDenebの新リビジョンを採用しており、こうした、より素行の良いコアでPhenom II/Athlon IIブランドの価値を維持、向上させていく。こうした今年のAMDの方向性を見て取ることができた新モデル投入といえるだろう。