多和田新也のニューアイテム診断室

DDR3対応のハイエンド製品「Phenom II X4 955 Black Edition」



 AMDは23日、Phenom IIシリーズの最上位モデルとして「Phenom II X4 955 Black Edition」を追加した。DDR3に対応したPhenomシリーズのハイエンド製品で、同シリーズでは過去最高クロックの製品となる。このパフォーマンスをチェックしてみたい。

●Socket AM3対応の3.2GHz動作モデル

 今回発表されたPhenom II X4 955 Black Edition(Black Editionは以下、BEと表記)の主な仕様は表1にまとめた通り。

【表1】Phenom II X4 955 Black Editionの主な仕様

Phenom II X4 955 Black Edition Phenom II X4 940 Black Edition Phenom II X4 920 Phenom II X4 810
OPN HDZ955FBK4DGI HDZ940XCJ4DGI HDX920XCJ4DGI HDX810WFK4FGI
リビジョン Rev.C2 Rev.C2 Rev.C2
ソケット種別 Socket AM3 Socket AM2+ Socket AM3
動作クロック 3.2GHz 3.0GHz 2.8GHz 2.6GHz
L1データキャッシュ 64KB×4 64KB×4 64KB×4
L2キャッシュ 512KB×4 512KB×4 512KB×4
L3キャッシュ 6MB 6MB 4MB
HT Linkクロック 2.0GHz 1.8GHz 2.0GHz
対応メモリ DDR3-1333/DDR2-1066 DDR2-1066 DDR3-1333/DDR2-1066
動作電圧 0.875〜1.5V 0.875〜1.5V 0.875〜1.425V
周辺温度(最大) 62℃ 62℃ 71℃
TDP(最大) 125W 125W 95W

【写真1】Phenom II X4 955 Black Edition

 OPNは「HDZ955FBK4DGI」(写真1)。モデルナンバーを示す“955”の数字のほか、それに続く“FB”がSocket AM3の125W TDP製品であることを示し、それに続く“K”がSocket AM3パッケージであることを示す。

 そのほかの部分では、基本的にはPhenom II X4 940 BEからクロックを200MHz引き上げ、Socket AM3化した製品という解釈で良い。動作電圧やTDPなどの仕様も、そのままである。

 コアのリビジョンも同じ“C2”が使われており、Cool'n'Quiet3.0を有効にするとアイドル時に800MHzまでクロックが下がる点も同様だ(画面1、2)。

【画面1】CPU-Zの結果。コアはPhenom II X4 940 BEと同じC2リビジョン 【画面2】Cool'n'Quiet3.0によりアイドル時は800MHzまで下がる。今回の個体では、このときのコア電圧は0.975Vとなった

●ハイエンドにおけるDDR3の効果とCore 2製品との性能差をチェック

 それでは、さっそくベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表2に示した通りである。テストに使用したマザーボードは写真2〜4の各製品である。

 今回特に注目したいのは2点。1つは、Phenom II X4 940 BEからの性能向上と、DDR3化によって、さらにどの程度の伸びが期待できるかという点である。そのため、Phenom II X4 940/955 BE双方で利用できるSocket AM2+環境で両CPUをテストした上で、Phenom II X4 955 BEのみ、DDR3環境でもテストを行なうこととした。

 なお、Socket AM2+でSocket AM3用CPUが利用できるのは周知の通りであるが、今回は最高クロックを更新した製品ということでBIOSには特に注意が必要といえよう。実際、今回のK9A2 Platinumにおいても、公開中のBIOSでは定格クロックで起動できないという問題が発生した。今回は、MSIに提供いただいた最新のベータBIOSを適用してテストを行なっている。正式リリースに合わせて、各社から正式版のBIOSがリリースされるだろう。ただし、このベータBIOSを適用することで、CPUは定格クロックで動作させられたものの、DDR2-1066での起動ができない問題が発生したため、ここではDDR2-800でのテストとなっている。

 もう1点は、Intel製品との比較である。今回のモデルナンバーが955であることから、Core 2 Quad Q9550/Q9550sを意識した製品であることが分かる。とくにCore 2 Quad Q9550とは価格帯でも競合する製品となる。ここでは、省電力版とはなるため多少価格帯は上となるがCore 2 Quad Q9550sとの比較を中心に、さらに上位モデルであるCore 2 Quad Q9650も併せてテストすることで、Phenom II X4 955 BEの立ち位置を確認しておきたい。

【表2】テスト環境
CPU Phenom II X4 955 Black Edition Phenom II X4 955 Black Edition
Phenom II X4 940 Black Edition
Core 2 Quad Q9650
Core 2 Quad Q9550s
チップセット AMD 790FX+SB750 AMD 790FX+SB600 Intel P45+ICH10R
マザーボード MSI 790FX-GD70 MSI K9A2 Platinum MSI P45 Diamond
メモリ DDR3-1333(1GB×2,9-9-9-24) DDR2-800(1GB×2,5-5-5-18) DDR3-1333(1GB×2,9-9-9-24)
ビデオカード NVIDIA GeForce GTX 280(GeForce Release 182.50)
HDD Seagete Barracuda 7200.11(ST3500320AS)
OS Windows Vista Ultimate Service Pack 1

【写真2】AMD 790FX+SB750を搭載するSocket AM3対応マザーボードMSI「790FX-GD70 【写真3】AMD 790FX+SB600を搭載するSocket AM2+対応マザーボードMSI「K9A2 Platinum 【写真4】Intel P45+ICH10Rを搭載するマザーボードMSI「P45 Diamond

 では、順に結果を見ていくことにする。まずはCPUベンチマークである。テストはSandra 2009 SP2のProcessor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark(グラフ1)、PCMark05のCPU Test(グラフ2〜3)だ。

 Phenom II X4 940 BEから安定した伸びを示しているのはクロック差があるからだ。とはいえ、6〜7%というクロック比通りの伸びをキッチリ示すあたりは、当然のこととはいえ、まずは評価したいポイントといえる。DDR2環境とDDR3環境における差はほとんどないが、より実アプリに近いCPUテストとなるPCMark05では、わずかながらDDR3環境の方が良好な結果を示す傾向が見て取れる。

 Core 2 Quadとの比較においては、演算の種類によって多少の上下はあるものの、おおよそCore 2 Quad Q9550sに近い性能となっている。

【グラフ1】Sandra 2009 SP2 (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−マルチタスク)

 続いてはメモリ性能である。テストは、メモリアクセスの実効速度をチェックするSandra 2009 SP2のCache & Memory Benchmark(グラフ4)と、PCMark05のMemory Test(グラフ5)。メモリのレイテンシをチェックするSandra 2009 SP2のMemory Latency Benchmark(表3)、PCMark05のMemory Latency Test(グラフ6)である。

 まず、メモリアクセス速度であるが、キャッシュ速度はPCMark05のReadテストでスコアが暴れてしまったが、Phenom II X4 955は同940に対してクロック増加分の速度アップが見られる妥当な傾向を見せている。

 Core 2製品に対しては過去にテストした結果と似たものとなった。今回のクロック差においても、L1キャッシュ同士ではCore 2が高速で、L2キャッシュ同士ではPhenom IIが高速、ただしPhenom IIのL3キャッシュとCore 2のL2キャッシュでは後者の方が高速で容量差の影響も出るといった傾向になる。

 実メモリへのアクセス速度は、Phenom IIとDDR3の組み合わせがはっきりと良好な結果を見せている。PCMark05の16MBブロックサイズのテスト条件ではCore 2もまずまずの結果を見せているが、これはキャッシュメモリの影響が残っている可能性もある。より参考にすべきはSandraの256MBブロックサイズの結果であろう。

 一方、実メモリのレイテンシに関しては、Phenom IIのDDR3とCore 2(Intel P45)のDDR3はほぼ同等か、Core 2の方が若干良い結果を見せている。

【グラフ4】Sandra 2009 SP2(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ5】PCMark05 Build 1.2.0(Memory Test)
【グラフ6】PCMark05 Build 1.2.0(Memory Latancy Test)

 次に実際のアプリケーションを用いたベンチマークテストの結果を紹介していく。テストは、テストはSYSmark 2007 Preview(グラフ7)、PCMark Vantage(グラフ8)、CineBench R10(グラフ9)、動画エンコードテスト(グラフ10)である。

 まず、Phenom II X4 955 BEとPhenom II X4 940 BEの差は歴然としており、この性能アップは非常に魅力的な結果となっている。DDR3環境にすることでスコアを伸ばす結果も多い一方で、ちょっと意外な結果も見られる。

 1つはSYSmark2007だ。ここでは全般にDDR2環境の方が良い傾向にある。決してメモリアクセスが少ないテストではなく、いくらなんでもDDR3環境のスコアが低いというのは意外な結果なのだが、Phenom II X4 810でもDDR2が目立って良い傾向を見せるシーンが多かったテストだ。このテストにおいてはDDR3にしても目立った性能向上は得られないと見るのが妥当な解釈だろう。

 また、PCMark Vantageもテストによってバラつきがあるが、メモリアクセス速度の影響が大きいGamingの結果はDDR3が良好なので納得できるとして、データ処理系テストであるProductivityも、もう少しDDR3がスコアを伸ばしてしかるべきだったように思う。

 一方で動画エンコードではかなり安定してDDR3環境がスコアを伸ばしており、こちらは一定の導入効果を期待できるジャンルといえそうだ。

 Core 2とはPhenom II X4 955 BEのDDR3環境で比較するのが妥当であるが、多少の得手不得手はあるものの、Phenom II X4 955 BEがCore 2 Quad Q9550sを上回る結果が多いのは好印象だ。また、H.264エンコードやPCMark Vantageの一部で見られる通りPhenom IIが強い場面においては価格帯で完全に上位に立つCore 2 Quad Q9650をも上回る結果となっている点も特筆しておきたい。

【グラフ7】SYSmark 2007 Preview(Ver. 1.05)
【グラフ8】PCMark Vantage Build 1.0.0.0
【グラフ9】CineBench R10
【グラフ10】動画エンコード

 続いては、3D関連のベンチマークテストだ。テストは、3DMark 06/VantageのCPU Test(グラフ11)、3DMark VantageのGraphics Test(グラフ12)、3DMark06のSM2.0 TestとHDR/SM3.0 Test(グラフ13)、Crysis(グラフ14)、LOST PLANET COLONIES(グラフ15)である。

 Phenom II X4 955 BEはCore 2 Quad Q9550sに対して、3DMark VantageとCrysisで少々分の悪いところ見せているが、ほかはまずまずの結果だ。ここでもPhenom II X4 955 BEがCore 2 Quad Q9650を上回るシーンが見られ、Phenom II+DDR3の良さを感じさせる。

 一方、Phenom II X4 955 BEのDDR2環境とDDR3環境の比較において、3DMarkシリーズでDDR2環境が上回るという結果も見られるが、実際のゲームソフトであるCrysis、LOST PLANETではおおむねDDR3環境が良いスコアを出しており、このジャンルにおいても導入効果が得られそうである。

【グラフ11】3DMark06 Build 1.1.0 / 3DMark Vantage Build 1.0.1(CPU Test)
【グラフ12】3DMark Vantage Build 1.0.1(Graphics Test)
【グラフ13】3DMark06 Build 1.0.1(SM2.0 Test,HDR/SM3.0 Test)
【グラフ14】Crysis(Patch 1.2.1)
【グラフ15】LOST PLANET COLONIES(DX10,Patch v1.0.2.0)

 最後は消費電力の比較だ(グラフ16)。ここはPhenom II X4 955 BEが、Phenom II X4 940 BEからクロック上昇相応に消費電力も増す結果になった。アイドル時は両製品とも800MHzで一定であるため誤差程度であるが、ピーク時の差は10Wを超えており、無視できない。

 DDR3環境もピーク消費電力が増している。もちろんマザーボードの違いはあるので参考程度の結果ではあるのだが、気になるところでもある。

 Core 2両製品とはマザーボードの違いを差し引いても大きな消費電力差がついてしまった。Core 2 Quad Q9550sは低消費電力であるので加味する必要があるが、Core 2 Quad Q9650との差を見てもPhenom II X4 955 BE環境の方が消費電力が大きいことは間違いないだろう。この点ではCore 2に利がある結果となった。

【グラフ16】消費電力

●PhenomのDDR3化を本格化させそうな製品

 以上の通り、Socket AM3で登場したPhenom II X4 955 BEの性能をチェックしてきた。Phenom II X4 940 BEからの性能向上は安定しており、まずはPhenom IIの性能ピークが上がったことは歓迎したい。

 DDR3に対応したSocket AM3としては初めてのハイエンド製品となるが、いくつかのテストで明確にその効果を得られていることが分かる。先に登場したPhenom II X4 810とは異なり、このプラスアルファの性能を得るためにメモリへ投資をする価値があるセグメントの製品である。

 折しも、DDR2の値上がりが続いている昨今。まだまだDDR2に比べて高価とはいえ相対的にお得感は高まっているし、1年前のDDR2並みの価格にまで下がっていることを考えれば、DDR3にすることが極端に大きな投資を必要とするものではなくなっている。多くの人はマザーボードの新規購入が必要にはなるだろうが、実質的なプラットフォーム始動のタイミングであることを考えれば、将来性の面でも導入する意味は大きいと思う。

 いずれにしても、Socket AM3対応CPUのハイエンドモデルが登場したことで、今後、Phenom II+DDR3の構成を導入するユーザーが増える可能性は高い。AMD、Intel両社の製品が本格的にDDR3をメインストリームに据えることで、自作ユーザーにおけるメモリのメインストリームもDDR2からDDR3へ完全に移行するのではないだろうか。自作市場において大きな転機をもたらす可能性のある、重要な意味を持った製品といえる。

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