瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Thermalright「TRUE Spirit 140 Power」

~TDP 360W対応の薄型サイドフローCPUクーラー

 今回は、Thermalrightの140mファン搭載サイドフローCPUクーラー「TRUE Spirit 140 Power」を紹介する。購入金額は7,538円だった。

8mm径ヒートパイプ6本搭載のハイスペックなヒートシンク

 Thermalright TRUE Spirit 140 Powerは、2014年11月に国内での販売がスタートした薄型のサイドフローCPUクーラーである。Thermalrightのラインナップにおいて、薄型サイドフローの頂点である「Archon IB-E X2」の下位に位置する製品だが、製品パッケージに記載された「Thermal Design Power 360 Watt」という一文から、TRUE Spirit 140 Powerの冷却性能に対するThermalrightの自信が伺える。対応CPUソケットは、IntelのLGA775/115x/1366/2011(2011-v3)と、AMDのSocket AM2(+)/AM3(+)/FM1/FM2(+)。

 TRUE Spirit 140 Powerのヒートシンクは、ニッケルめっきを施した純銅板(C1100)を接地面に採用したベースユニットと、46枚のアルミニウム製放熱フィンを備える放熱ユニット、ベースと放熱フィン間の熱輸送を担う6本の8mm径ヒートパイプによって構成されている。ヒートパイプとベースユニットにはニッケルめっき処理を施し、放熱ユニット最上段のフィンは黒色にカラーリングしている。

 標準で搭載する冷却ファンは、140mm径26.5mm厚ファンの「TY-147」。Thermalrightの製品ページではTY-140と表記されているが、これは誤りだ。TY-147はPWM制御に対応し、900~1,300rpmの回転数域を範囲をカバーする。

 ヒートシンクへのファンの取り付けには、専用の金属製クリップを用いる。このクリップはTY-147向けに設計されており、120mm角ファンとネジ穴位置が同じで、なおかつリブの無いフレームを採用したファンをヒートシンクに固定できる。ファンクリップは2セット同梱されており、別途ファンを用意することで、デュアルファン構成での運用が可能となる。

Thermalright TRUE Spirit 140 Power
リテンションキット
製品パッケージには「Thermal Design Power 360 Watt」と記載されている
ヒートシンク本体。放熱フィンの傾斜を除けば、ほぼ左右対称のデザインを採用している
冷却ファン「TY-147」。900~1,300rpm動作のPWM制御対応140mm径26.5mm厚ファンである
防振ゴム、ファンクリップ、サーマルグリス。ファンクリップと防振ゴムは2セット同梱されている
ファンの固定。交換または増設する冷却ファンは、120mmファンとネジ穴位置が同じで、なおかつリブなしタイプのフレームを採用している必要がある
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)

 シングルタワーで薄型の放熱ユニットを採用するTRUE Spirit 140 Powerは、メモリスロットと干渉しにくいタイプのヒートシンクであり、テストに用いたASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、ギリギリながらメモリスロットとの干渉は発生しなかった。

 一方、拡張スロットとのクリアランスについては、上位モデルのArchon IB-E X2のように放熱ユニットとベースユニットをずらして配置するようなデザインを採っていないため、ヒートシンクが最上段の拡張スロットを完全覆ってしまった。ゲーミングマザーボードなど、最上段の位置に拡張スロットを備えるマザーボードとの組み合わせには要注意だ。

 リテンションキットは、Thermalright TRUE Spiritシリーズでは標準的なブリッジ式リテンションを採用している。基本的な構造は最近紹介したTRUE Spirit 90M Rev.Aなどと同じだが、TRUE Spirit 140 Powerには金属製のバックプレートと、LGA2011-v3対応のスタッドナットが同梱されている。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定。それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

【グラフ】テスト結果

 3.4GHz動作時にTRUE Spirit 140 Powerが記録したCPU温度は53~60℃。これはCPU付属クーラーより25~32℃低い結果だ。オーバークロック動作時の温度については、4.4GHz動作時69~83℃を記録したが、4.6GHz動作時については、PWM制御20%設定時にCPU温度が94℃を超えたため、テストを打ち切っている。テストが完走した50%設定時とフル回転時のCPU温度は、それぞれ84℃と80℃だった。冷却性能に関しては、概ね良好なものであると言えるだろう。

 動作音に関して、TRUE Spirit 140 PowerとTY-147の組み合わせは、想像以上に優れた静粛性を実現している。風切り音が目立ち始めるのは、回転数が1,000rpmを超えたあたりから。冷却性能テストの結果から、回転数1,000rpm以下でも十分な冷却が可能であり、回転数を絞るだけで高い静粛性を得ることができる。また、フル回転時の1,310rpm動作でも、軸音やヒートシンクとの共振は発生しなかった。

ファン交換を試したくなるハイスペックなヒートシンクが魅力

 パッケージのTDP 360W表記から冷却性能志向の製品かと思いきや、実際に試してみると、静粛性に優れた薄型サイドフローCPUクーラーという印象を受けた。これは、標準の冷却ファン「TY-147」の特性によるものだろう。

 だが、TRUE Spirit 140 Powerのヒートシンクそのものは、中~高速回転のファンに適したフィンピッチの狭い放熱ユニットや、最大熱輸送能力の高い8mm径ヒートパイプを6本も備えた、紛れもない冷却志向のヒートシンクである。TY-147単体でも、その高いポテンシャルにより必要十分な冷却性能を発揮しているが、Thermalright TY-143(600~2,400rpm)のような高速ファンを組み合わせてみたくなるヒートシンクである。

 TRUE Spirit 140 Powerの実売価格は8,000円弱程度。1万円超えが珍しく無くなったハイエンドCPUクーラーに比べればまだ安い方だ。ヒートシンク自体はハイエンド製品に引けを取らない出来なので、この価格差を活かし、自分の好きなファンを搭載してみるのも面白いだろう。

Thermalright「TRUE Spirit 140 Power」製品スペック
メーカーThermalright
フロータイプサイドフロー
チューブ長8mm径6本
放熱フィン46枚
サイズ(ヒートシンクのみ)53.4×155×171.2mm(幅×奥行き×高さ)
重量(ヒートシンクのみ)725g
付属ファン(※)140mm径26.5mm厚ファン「TY-147」
電源: 4ピン (PWM制御対応)
回転数: 900~1,300rpm
風量(最大): 28.3~73.6CFM
ノイズ: 17~21dBA
サイズ: 152×140×26.5mm
対応ソケットIntel:LGA 775/115x/1366/2011(2011-v3)
AMD:Socket AM2(+)/AM3(+)/FM1/FM2(+)
※TRUE Spirit 140 Powerの商品情報において、付属ファンがTY-140と誤表記されているため、TY-147のスペックを記載しています。

(瀬文茶)