■瀬文茶のヒートシンクグラフィック■
今回はSilverStone製のCPUクーラー「SST-HE02」を紹介する。購入金額は6,980円だった。
●静音とパフォーマンスの両立を目指した新設計クーラー今回紹介するSST-HE02は、今年8月に登場した「SST-HE01」と共にリリースされたSilverStoneの新CPUクーラーブランド「Heligonシリーズ」の第2弾となる製品だ。Heligonシリーズの製品は、いずれも静音性とパフォーマンスの両方を考慮した新設計のCPUクーラーであるとされているが、独自仕様の140mmファンとミッドシップレイアウトの大型ヒートシンクの組み合わせというパフォーマンス志向の製品であったSST-HE01に対し、SST-HE02ではファンレス動作向けのヒートシンクを採用した静音志向の製品であり、それぞれ異なる方向性をもった製品となっている。
SST-HE02のヒートシンクは、6本の6mm径ヒートパイプと30枚のアルミ製放熱フィンを備えたサイドフロー型ヒートシンクである。幅170mm、奥行130mm、高さ160mmという巨大なヒートシンクは、フィンの枚数を少なくすることでフィンピッチを確保して風の通りを良くする一方、フィン1枚当たりのサイズを大きくすることで放熱面積を稼ぐ設計を採用している。このような設計は、静音ファンやケースのエアフローなど指向性の弱いエアフローを利用した冷却に適しており、SST-HE02はケースのエアフローのみでTDP 95W、ケースに900rpm以上の120mmファンを搭載している条件ではTDP 150WまでのCPUを冷却できるとしている。
また、SST-HE02には冷却用のファンが同梱されていないが、ファンを固定するためのワイヤークリップは同梱されており、リブ無タイプの120mm角ファン、または140mm径ファンを搭載できる。SilverStoneによれば、120mmファンを1基ヒートシンクに取り付けて運用することで、TDP 150Wを超える発熱にも対応可能としている。このあたりが、「静音とパフォーマンスの両方を考慮した設計」ということなのだろう。
放熱面積を稼ぐために巨大な放熱フィンを備えるSST-HE02だが、ベースユニットの位置をオフセットするなど、左右非対称のレイアウトを採用することで、周辺パーツとの物理的な干渉を避けるよう工夫されている。そのため、見た目から受ける印象に比べれば、物理的な干渉問題は回避しやすい製品ではあるのだが、ASUS MAXIMUS V GENEでは最上段のPCI Expressスロットの上空に放熱フィンが被ってしまった。取り付け方向を変えればPCI Expressスロットとの干渉を回避することは可能だが、その場合メモリスロットの上空に放熱フィンが被ってしまう。物理干渉に配慮した設計がされているとは言っても、これだけの大型ヒートシンクである。多少の妥協は必要だろう。
●冷却性能テスト結果
それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、PWM制御対応の120mm角ファン「X-FAN RDL1225S-PWM」を1基搭載し、搭載ファンフル回転時とPWM制御を20%に設定した際の温度をそれぞれ取得したほか、ファンを搭載しないファンレス状態でのテストも行なった。
テストの結果を見ていこう。まずファンレス動作については、Intel Core i7-2600K(TDP 95W)の定格動作クロックである3.4GHz動作時でも94℃を超えてしまい、今回のテストでは温度を取得することができなかった。SST-HE02はTDP 95Wのファンレス動作対応を謳っている製品だが、それはケースのエアフローがあることを前提とた数値であり、本連載のテスト環境のようにエアフローの無い条件でのファンレス動作に対応しているわけではない。
一方、ファンを搭載した際のパフォーマンスについては、3.4GHz動作時にCPU付属ファンより21℃~26℃低い温度を記録し、最も発熱量の大きくなる4.6GHz動作もこなしている。傾向として特徴的なのが、フル回転時と20%制御時の温度差が比較的小さい点だ。これを高速ファンの効果が薄いと見るか、低速ファンでも十分な性能を発揮できると見るかで印象が違ってくるが、いずれにせよ、SST-HE02にファンを搭載するのであれば低速ファンの方が魅力的だろう。
動作音については、ファンレス時のファンノイズが無音なのは当然として、搭載ファンが約850rpmで動作していた20%制御時もほとんど動作音は気にならなかった。ケースに収めてしまえばファンレスも20%制御時も大差ないだろう。また、約1,750rpmで動作しているフル回転時についても、フィンピッチが広いためか、他のハイエンドCPUクーラーに同じファンを搭載した時に比べて風切り音はかなり小さく感じた。ただ、ファンの回転数が高いと、ファンの振動がヒートシンクに伝わってビビリ音が発生していた。ファンレス志向の製品なので仕方ないのかもしれないが、ヒートシンクとファンの間に挟む防振材が付属していない事が惜しまれる。
●ファンレス動作はケースのエアフロー次第本連載のテスト方法がファンレスでの検証に適していないため、ファンレスクーラーとしてのSST-HE02の実力を今回のテストでは測り切れていない。ただ、120mmファンで約850rpmという低回転数ながら4.6GHz動作時の発熱に対応できているところを見ると、ケースのエアフロー次第でCPUに高負荷を掛けるような使い方でもCPUをファンレスで運用できるように思えてくる。
ただ、ケースファンを無くせるわけではないことを考えると、どこまでCPUクーラーのファンレス化にこだわる価値があるのかという事は一考してみる価値はあるだろう。SST-HE02はファンレス専用ヒートシンクではなく、2基のファンを搭載可能なCPUクーラーでもあるので、極低速の静音ファンを搭載するという方向で静音化を図ってみても良いだろう。
SilverStone「SST-HE02」製品スペック | ||
メーカー | SilverStone | |
フロータイプ | ファンレス(サイドフロー型) | |
ヒートパイプ | 6mm径×6本 | |
放熱フィン | 30枚 | |
サイズ | 170×130×160mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 990g | |
付属ファン | なし | |
対応ソケット | Intel:LGA775/1155/1156/1366/2011 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2 |