■西川和久の不定期コラム■
4月25日、株式会社マウスコンピューターは、11.6型のコンパクトなノートPCにも関わらず、第3世代Core i7とGeForce GT 650M搭載したゲーミングノートPCを発表、同月29日より発売を開始した。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けする。
●コンパクトな11.6型に詰め込んだハイパワー
ここのところレビューと言えば、13.3型か15.6型のノートPCばかりだ。一時期ネットブックが流行った頃は、これ以下のサイズのものも多数あったが、最近ではめっきり見かけなくなってしまった。
そこに届いたのが、この「G-Tune NEXTGEAR-NOTE i300」。コンパクトな11.6型液晶ボディは、ネットブックを彷彿させる雰囲気で、パッと見はIntelのAtomプロセッサか、AMDのAPUが入っていそうな筐体だ。
ところがそのスペックを見ると、驚きの第3世代Core i7-3612QMを搭載。このプロセッサは、4コア8スレッド、クロック 2.1GHzでTurbo Boost時3.1GHzまで上昇する。キャッシュは6MB、そしてTDPは35W。これだけでもサイズのわりに超強力なのに、さらにディスクリートGPUとしてGeForce GT 650M(2GB)までも搭載している。
NVIDIAのサイトを見ると、現在ノートPC用GeForceは、「GeForce GTX」、「GeForce GTS/GT」、「GeForce(無印)」の3種類あり、この650Mは、ミドルレンジの中では最上位のモデル。それがこのサイズに収まっているのだからさらに驚きだ。主な仕様は以下の通り。
□「G-Tune NEXTGEAR-NOTE i300」の仕様CPU | Intel Core i7-3612QM (4コア/8スレッド、2.1GHz/TB3.1GHz、cache 6MB、TDP35W) |
チップセット | Intel HM76 Express |
メモリ | 8GB/PC3-12800 |
SDD | 240GB(SATA6Gbs) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | Intel HD Graphics 4000/GeForce GT 650M(2GB)、 HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+HS |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×1、カードスロット、 音声入出力、130万画素Webカメラ |
サイズ/重量 | 87×207×31.7mm(幅×奥行き×高さ)/約1.8kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約4.07時間 |
価格 | 119,700円 |
チップセットはIntel HM76 Express、メモリは8GB(モデル上の最大16GB)、OSはWindows 7 Home Premium SP1。言うまでもなくIvy BridgeなノートPCだ。ストレージは240GBのSSDを搭載している。ただし、現在同社のサイトでSSDは256GBと表記されているので、手元に届いたタイプと違う可能性がある。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000に加え、冒頭に書いた通り、ミドルレンジ最上位のGeForce GT 650M(2GB)。NVIDIA Optimus Technologyにも対応しているので、必要に応じて自動的に切り替わる。外部出力はHDMI出力、ミニD-Sub15ピンを装備。液晶パネルは光沢式11.6型のHD解像度/1,366×768ドットだ。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 3.0+HSにも対応している。その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1、メモリカードスロット、音声入出力、130万画素Webカメラ。
ここまでのスペックを見れば分かるように、筐体が小さいと言って何1つ失っているものは無く、逆にBluetoothやGeForce GT 650Mまでも内蔵しているのがポイントだ。
サイズは287×207×31.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.8kg。クラスの割りに、少し厚みと重量はある。価格は今回の構成で119,700円。なお、プロセッサをCore i3-2350M、メモリ4GB、ストレージHDD 320GBにすると69,930円となる(GeForce GT 650Mも含め、他は同じ構成)。
とにかく久々に見る11.6型のノートPCは小さい。扉の写真などを見るとまるでネットブックのようだ(コンパクトでキュートと言う意味で)。カラーリングは液晶パネルと裏はブラック、他はダークブランでまとめられている。このダークブラウンの部分、トップカバーやパームレストはエンボス加工により、少しねっとりした質感で、ツルツルでは無い。また高さが31.7mmあるため、各コネクタは標準サイズのものが使われ、変換コネクタ的なものは不要だ。
11.6型のHD解像度液晶パネルは、15.6型の同解像度と比較して、密度が高く個人的には好み。少し色温度が高い感じがするものの、コントラストも高く、自然な発色。視野角は、上下左右共に同程度だ。
キーボードはアイソレーションタイプで、筐体が小型な分、キーピッチは一般的な13.3型や15.6型と比較して若干狭い。中央を強く押すと全体がたわむが、通常の入力には全く支障の無い範囲だ。タッチパッドはパームレストと同じ質感でねっとりした感じ。ボタンには物理的に2つで、ストロークが少し深めだが、クリック感はしっかりある。
ステレオスピーカーは裏側奥に配置。サウンドは後述する「THX TruStudio PRO」をONにすると、(サイズを考慮すれば)かなり迫力のあるサラウンドが得られる。ゲームだけでなく、映画などの動画コンテンツも楽しめそうだ。最大出力も十分ある。
振動に関してはもともとSSDモデルなのでほとんど無い。またノイズや発熱も通常使用レベルなら大丈夫だ。ただし、3DMark 11などプロセッサや外部GPUに負荷がかかるアプリケーションでは、左サイドのスリットから、かなり暖かいエアーが出る。小さい分、熱処理には限度があるため仕方ない部分だろう。
●全て7越えのハイパフォーマンスOSは64bit版Windows Home Premium SP1。初期起動時のデスクトップは、ご覧のようにあっさりしたもの。「HD VDeck」は各音声入出力の切替えや調整ができるパネル、THXアクティベーションは、「THX TruStudio PRO」が未だ使用可能状態になっておらず、このショートカットを使ってアクティベートする。
SSDは240GB/SATA6Gbsの「ADATA S511」が使われている。C:ドライブのみの1パーティションで約223GBが割当てられ197GB空き。用途によっては、容量不足になる可能性もあるだろうが、その分システムは高速に動く。Bluetoothは「CSR Bluetooth Device」、Gigabit EthernetとWi-FiはRealtek製だ。
インストール済みのソフトウェアは、各デバイスのドライバやコントロール系が主で、アプリケーション系では「マカフィー インターネットセキュリティ」程度となる。
特徴的なものとして、少し触れた「THX TruStudio PRO」が挙げられる。調整できる項目は、「SURROUND」(スピーカーの数2~6)、「CRYSTALIZER」(イコライザーの一種)、「SPEAKER」(スピーカーの口径をエミュレーション)、「SMART VOLUME」(急激な音量の変化を最小限に抑える)、「DIALOG PLUS」(会話の明瞭化)の5つだ。
この内容からもわかるように、全てONにすればより効果的と言うわけでもなく、音楽だったり映画だったりゲームだったり、再生するコンテンツの内容に応じて調整するのがベターだ。
THX TruStudio PRO | Control Center | NVIDIAコントロールパネル |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。Optimus Technologyの設定はBBench以外、GeForce GT 650M固定。
また参考までに3DMark 11の結果も掲載した。テスト中、内容にもよるが6~16FPSとなっていた。Intel HD Graphics 4000やエントリークラスのGeForce 610Mでは、どのテストでも3FPS程度の紙芝居状態だったので、これらと比較すると随分良い結果と言えるだろう。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.1。プロセッサ 7.4、メモリ 7.7、グラフィックス 7.1、ゲーム用グラフィックス 7.1、プライマリハードディスク 7.9。全ての項目で7越え。このコンパクトな筐体としてはかなりハイパワーと言える。
CrystalMarkは、ALU 64158、FPU 52019、MEM 57063、HDD 44713、GDI 16135、D2D n/a、OGL 24936。D2Dは画面キャプチャ上では低い値を示しているものの、実際はブラックアウトしていたので、正しく計れていない。前回のASUS「K55VD-SX3610」も同様だったので、現行のOptimusドライバとの相性なのだろう。それ以外は、Windows エクスペリエンス インデックス同様、高スコアをマークしている。
BBenchは、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で12,260秒/3.4時間。スペック上は4.07時間なので結構近い。11.6型と小型なので持ち歩くのは容易だが、1日中バッテリ駆動というのは難しい結果と言えるだろう。
以上のように「G-Tune NEXTGEAR-NOTE i300」は、11.6型のコンパクトな筐体に、第3世代Core i7とGeForce GT 650Mを搭載、Windows エクスペリエンス インデックスが全て7越えのハイパフォーマンスノートPCに仕上がっている。ゲーム用途はもちろん、デスクトップPCに負けないパワーを小型ノートPCに求めているユーザーにもお勧めしたい1台だ。