西川和久の不定期コラム

ASUSTeK「K55VD-SX3610」
~Ivy BridgeとGeForce 610Mを搭載したノートPC



 5月7日、ASUSTeK ComputerはIvy Bridgeを搭載したノートPCを2機種発表した。1つはゲーミングノートPC「G75VW-91128V」、もう1つは15.6型の液晶パネルを搭載したスタンダードノートPC「K55VD-SX3610」だ。今回、後者が編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けする。筆者にとって少し前のデスクトップPCに続いて、初のIvy BridgeノートPCとなる。


●スタンダードな15.6型ノートPCにGPUをプラスα

 この原稿を書いている時点では、同社のWebに製品情報は載っていないものの、Kシリーズは、15.6型の液晶パネルを搭載したスタンダードノートPCとなる。

 以前(2011年6月)に「K53E」(Intel Core i7-2630QM、Intel HM65 Express、メモリ4GB、HDD 650GB、DVDスーパーマルチドライブ、15.6型1,366×768ドット、Intel HD Graphics 3000、USB 2.0×3、79,800円)をご紹介しているが、写真を見ると筐体やカラーリングなどデザイン、そして価格も同じ。実質的にそのままIvy Bridge対応モデルになった感じだ。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUSTeK「K55VD-SX3610」の仕様
CPUIntel Core i7-3610QM(4コア/8スレッド、2.3GHz/Turbo Boost 3.3GHz、
キャッシュ6MB、TDP45W)
チップセットIntel HM76 Express
メモリ8GB(2スロット/空き0)
HDD750GB
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 7 Home Premium(64bit)SP1
ディスプレイ15.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット
グラフィックスCPU内蔵Intel HD Graphics 4000/GeForce 610M(2GB)、
HDMI出力、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n
その他USB 3.0×2、USB 2.0×1、SDカードスロット、
音声入出力、30万画素Webカメラ
サイズ/重量378×251×21.7~31.9mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg
バッテリ駆動時間最大約4.7時間(6セル)
価格79,800円

 プロセッサは第3世代CoreプロセッサーとなるCore i7-3610QMで、4コア8スレッドでクロックは2.3GHz。Turbo Boost時3.3GHzまで上昇する。キャッシュは6MB、TDPは45Wとなる。チップセットはIntel HM76 Express。メモリスロットは2つあり、4GB×2の8GB実装済だ。ストレージは5,400rpmの750GB HDDと光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブ。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000に加え、GeForce 610Mでビデオメモリ2GBを搭載。NVIDIA Optimusテクノロジーで使用するソフトウェアによって自動的に切り替わる仕掛けが入っている(どちらかに固定も可能)。バッテリ駆動時は省電力の内蔵グラフィックス、電源供給時は外部GPUと言った使い方も可能だ。

 ディスプレイ出力は、HDMI出力、ミニD-Sub15ピンの2系統。液晶パネルは、15.6型の光沢型で、解像度は1,366×768ドットとなる。個人的には15.6型でHD解像度は少し間延びして見えるので、できればもうワンランク上の解像度が欲しいところだが、コストとの兼ね合いなのだろう。

 ネットワークは、有線LANにGigabit Ethernet、無線LANにIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは非搭載だ。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1、SDカードスロット、音声入出力、30万画素Webカメラ。Ivy BridgeになってUSB 3.0対応になっている。

 サイズは378×251×21.7~31.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.6kg。外出時に常に持ち歩くタイプではないものの、ちょっとした移動に関しては問題無い範囲だろう。バッテリは6セルタイプで最大4.7時間の駆動が可能だ。価格は79,800円。

 こうして見ると、冒頭で触れた「K53E」と比較して、プロセッサのパワーアップはもちろん、メモリが2倍の8GB、HDDが640GBから750GBへ、USB 2.0×3からUSB 3.0×2+USB 2.0×1、内蔵Intel HD Graphics 3000からIntel HD Graphics 4000+GeForce 610M/2GBと、価格はそのままかなりパワーアップしているのがわかる。1年足らずでコストパフォーマンスが高くなり嬉しい限りだ。

トップカバー。濃いブラウンで細かいメッシュが刻まれているため指紋が付きにくい正面HDDアクセスLEDなどは全て左側側面にある。その下にSDカードスロットを備える底面ネジ2本外せば手前/内部にアクセスできる。メモリやHDDなどが見える
左側面。電源入力、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、Gigabit EthernetEthernet、USB 3.0×2を装備キーボードはアイソレーションタイプでテンキー付き。[2]キーの下に[0]があるので事務処理には使いにくいかも知れない右側面。ロックポート、DVDスーパーマルチドライブ、USB 2.0×1、音声入出力
キーピッチは実測で約19mm。一部狭くなっているキーもあるが、破綻するほどではない背面側面にはバッテリのみと特に何も無いACアダプタなど付属品。コネクタはメガネタイプ。ACアダプタは小さくないものの、このクラスとしては一般的

 トップカバーはヘアライン仕上げのブラウン。細かい凹凸があるため指紋がつき難い構造になっている。液晶パネルのフチとキーボード周り、そして裏はブラック、パームレストは深めのブラウン(渋めのゴールド?)と、シンプルにまとめられている。

 光沢タイプの15.6型液晶パネルは、サイズの割りにHD解像度ということもあり、若干荒い感じがする。視野角は上下左右ともほぼ同じ。発色もクラスを考えると一般的だ。

 メモリやHDDは、裏手前にあるパネルをネジ2本で外せ、簡単にアクセス可能。SSD化なども容易でメンテナンスしやすい。

 キーボードはアイソレーションタイプでテンキー付き。若干たわむが、許容範囲内に収まっている。パームレストは15.6型と言うこともあり十分広く、同社の「ICE Cool Design」によって熱くならない。タッチパッドはボタンが無く、パネル一枚で手前が左右に傾きボタン替りになるタイプだ。

 サウンドは「K53E」同様、Altec Lansing社製スピーカーを搭載。パワーは十分あり、最大だと煩いほどの音量となる。音質は中高域は抜けが良いものの、若干ドンシャリ気味なのが気になる部分だ。

 「K53E」では電源コネクタが左側中央にあり、やや使いにくいと指摘したが、今回は左側奥に場所が変更されている。キーボードのたわみも含め、細かい点であるものの、改善されているのは純粋に嬉しい。

●普段使いとしては十分以上のパフォーマンス

 OSは64bit版Windows Home Premium SP1。メモリが8GBあるため、Intel HD Graphics 4000と併用しても余裕がある。デスクトップは同社のツール類などのショートカットが並んでいる。タスクトレイには、「フリック」、「ASUS USB Charger Plus」、「Intel HD Graphics」、「RealTek HDオーディオ」、「Wireless Console」、「ELAN Pointing Device」、「ASUS Live Update」、「NVIDIA設定」などが常駐。

 HDDは750GB/5,400rpm/キャッシュ8MB/SATA 3Gbpsの「HTS547575A9E384」。システム用のC:ドライブ約254GBと、データ用のD:ドライブ約419GBの2パーティションとなっている。初期起動時C:ドライブの空きは220GBとなっている。

 そのほかIvy BridgeのノートPCとしては特に変わったものは無く、Wi-Fiに「Atheros AR9485」、Gigabit Ethernetコントローラに「Realtek PCIe GBE」、光学ドライブは「Slimtype DVD A DS8A8SH」が使われている。またデバイスマネージャには表示していないが、USB 3.0はIvy Bridgeの特徴である「Intel USB 3.0 eXtensibleホストコントローラ」だ。

起動時のデスクトップ。OSは64bit版Windows Home Premium SP1。ショートカットは同社お馴染みのものは並んでいるHDDは「HTS547575A9E384」。光学ドライブは「Slimtype DVD A DS8A8SH」システム用のC:ドライブ約254GBと、データ用のD:ドライブ約419GBの2パーティション

 プリインストールのアプリケーションは、「ASUS AI Recovery」、「ASUS FaceLogon」、「ASUS Live Update」、「ASUS USB Charger Plus」、「ASUS Virtual Touch」、「Fast Boot」など同社のツール系に加え、「Kingsoft Office 2012」、「i-フィルター5.0」、「CyberLink Media Suite」、「CyberLink Power2Go」、「ウィルスバスター2012クライド」など、オフィス系やセキュリティー系も装備。購入してすぐに使える構成になっている。

 また独自の「Super Hybrid Engine II」と省電力テクノロジーを組み合わせた「InstantOn for NB」によって、通常より短時間でPCが起動/復帰、長時間のスリープが可能など、より使いやすくなっているのも魅力的だ。デスクトップ右側にあるウィジェットで簡単にON/OFFできる。

初期起動時表示されるInstant On!へようこそ!ASUSパネルE-Driver
ASUS Fast BootASUS Ai RecoveryASUS VirtualCamera

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。またどちらもNVIDIA Optimusの設定をGeForce 610M固定にしている。参考までに3D Mark 11を試したところ、P725 3DMarksでテスト中の画面を見ていると3FPS程度だった。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.6(7.4)、メモリ 7.8(5.9)、グラフィックス 6.5(4.8)、ゲーム用グラフィックス 6.5(6.1)、プライマリハードディスク 5.9(カッコ内は「K53E」の値)。第2世代Core i7搭載機と比較して確実にパフォーマンスアップしているのがわかる。

 CrystalMarkは、ALU 62319、FPU 55041、MEM 57032、HDD 10551、GDI 17391、D2D n/a、OGL 33391。なぜかD2Dが動かなかったが、OGLに関してはGeForce 610Mが効いている。いずれにしても普段使いのノートPCとしては、これだけのパワーがあれば十分以上。欲を言えば、HDDはSSDにしたいところか。

 BBenchは、Battery Savingモード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で12,304秒/3.4時間。最大の4.7時間には届かなかったが、15.6型としては平均的な値と言えよう。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 5.9。プロセッサ 7.6、メモリ 7.8、グラフィックス 6.5、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 5.9CrystalMark。ALU 62319、FPU 55041、MEM 57032、HDD 10551、GDI 17391、D2D n/a、OGL 33391BBench。省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で12,304秒/3.4時間

 以上のようにASUSTeK「K55VD-SX3610」は、クアッドコアのIvy Bridgeを搭載した15.6型のスタンダードノートPCだ。NVIDIA Optimusによる内蔵Intel HD Graphics 4000とGeForce 610Mの自動切換えも魅力的で、価格もスペックを考えると結構安価に設定されている。いち早く最新環境のスタンダードノートPCを手軽に試してみたいユーザーにお勧めの1台と言えよう。