■西川和久の不定期コラム■
「ASUSTeK EeeBox PC EB1501」
EeeBox PC EB1501 |
IONプラットフォームを採用したネットトップに限らず、多くのネットトップは光学ドライブを搭載していないことが多い。その替わりにケースが薄型で省スペース、もしくはVESAマウンタで液晶ディスプレイの裏に設置できる工夫がなされている。
しかし今回ご紹介するASUSTeKのネットトップ「EeeBox PC EB1501」は、39mmと比較的薄型で、スロットイン形式のDVDスーパーマルチドライブを搭載と、使い勝手は良さそうだ。早速使用レポートをお届けする。
●DVDスーパーマルチドライブ搭載のION機
12月の「買い物山脈」のコラムに、筆者が購入したION搭載機「AspireRevo ASR3610-A44」の記事を掲載した。もちろん今でも結構お気に入りなのだが、DVDビデオを観たり、ソフトウェアのインストールなど、何かの時、外部にUSB接続の光学ドライブをつなぐのは面倒だ。「内蔵タイプのネットトップがあればいいのに!」と日頃思っていた。そして約1カ月後、今回のASUSTeKの「EeeBox PC EB1501」が発表されたのだ。「しまった! もう1月だけ待てばよかったかも」と後悔したのは言うまでもない。詳細はこれから記事の中でご紹介するものの、スペック的にはほぼ同じ。一番の違いはDVDスーパーマルチドライブの有無となる。
前回のマウスコンピューター「LUV MACHINES(Lm-mini20)シリーズ」もIONプラットフォームを採用したネットトップだったが、CPUはシングルコアのAtom 230プロセッサ。このASUS「EeeBox PC EB1501」のCPUは、デュアルコアのAtom 330プロセッサ(512KB×2 L2 キャッシュ/1.60GHz/533MHz FSB)を搭載している。CPUクロックは同じでも、最近のWindowsは、バックグラウンドでいろいろなプロセスが動いているので、デュアルコアの方が操作した時に余裕がある。またHyper-Threadingにも対応し見かけ上は4CPU。例えばWindows エクスペリエンス インデックスのCPUの値は3.3となり、シングルコアのAtomプロセッサより1.0ポイント近く向上する。
同社のHPを見ると「テレビをパワーアップするデジタルホーム時代のPCです。」と書かれている。なるほど、家庭用の液晶TVに接続し、ネットやコンテンツなどを楽しむネットトップとして設計されていることが分かる。デザインもリビングに馴染むよう、ちょっと洒落た雰囲気だ。
ASUS「EeeBox PC EB1501」
・CPU:Atom 330プロセッサ(512KB×2 L2キャッシュ/1.60GHz/533MHz FSB)
・チップセット:NVIDIAION
・メモリ:2GB/SO-DIMMスロット×2(2スロット/空き0)
・HDD:250GB
・光学ドライブ:スロットイン形式DVDスーパーマルチドライブ
・OS:Windows 7 Home Premium(32bit)
・ディスプレイ:チップセット内蔵GeForce 9400M G、HDMI出力×1、ミニD-Sub15ピン出力×1
・ネットワーク:Gigabit Ethernet、IEEE802.11b/g/n
・その他:USB 2.0 前面×2/背面×4、eSATA×1、音声入出力+背面出力(S/PDIF対応)、4in1カードリーダ、赤外線リモコン、2.4GHz無線式キーボード&マウス付き、VESAマウンタ付属
・サイズ/重量:サイズ39×193×193mm(幅×奥行き×高さ)/1.2kg
・価格:49,800円
「EeeBox PC EB1501」は、CPUやHDDなどを自由に組み合わせできるBTOには対応しておらず、上記のスペックのみでの販売となる。冒頭で触れたように、チップセットはIONプラットフォーム、CPUはAtom 330プロセッサ、そしてグラフィックスはチップセット内蔵GeForce 9400M Gだ。出力はミニD-Sub15ピンに加え、HDMI出力も搭載。先に紹介したように家庭用液晶TV接続を狙ったものだろう。DVI-I出力は無いが、HDMI→DVI変換コネクタを用意すれば接続は可能である。
メモリはスロットが2つあり、既に1GB×2が装着済みの計2GBとなっている。従ってメモリアクセスはデュアルチャンネルだ。OSは32bit版のWindows 7 Home Premiumがインストール済み。メモリ2GBで使うなら32bitでも64bitでもある意味同じ。このコンビネーションに不満は無い。
ただし、2GB×2に増設して計4GBとした時は、32bit版の制限から1GBは使えないエリアとなるが、同社のHPには「プリインストールされているOS以外はサポート対象外となります」、「メインメモリ交換・増設は行なえません。また、サポートセンターにおいての交換・アップグレードサービスは行なっておりません」と書かれている。コンテンツプレーヤーとして考えた場合、2GBあればまず十分なので、購入時の状態のまま使うのがベターだと思われる。
キーボードとマウスは、Bluetoothではなく、2.4GHzを使うワイヤレスシステムとなっている(Bluetoothは非搭載)。レシーバは本体内蔵ではなく、6つあるUSBポートの1つを占有する。同じ無線でもBluetoothとの違いは、ハードウェア上、USBポートへ接続したキーボード/マウスと同じとなり、Windowsを起動しなくても、例えばBIOSの設定にも利用できる。
そして最大の特徴は「スロットイン形式DVDスーパーマルチドライブ」内蔵だ。仕様的には、読み出しがDVD±R/R DL/DVD±RW/-ROMが最大8倍速、CD-R/-RW/-ROMが最大24倍速。書き込みがDVD±R/+RWが最大8倍速、DVD±R DL/-RWが最大6倍速、CD-R/-RWが最大24倍速となる。光学ドライブを内蔵した事により若干厚みはあるものの、それでも39mmとは結構スリムだ。ちなみに「AspireRevo ASR3610-A44」は30mm。9mmの違いとなる。
さらにWindows Media Centerなどで使える赤外線リモコンも付属する。これで、価格は49,800円。「AspireRevo ASR3610-A44」は実売39,800円なので、ちょうど1万円高だ。この1万円で、スロットイン形式DVDスーパーマルチドライブ、赤外線リモコン、+90GBのHDD容量と考えると、OSこそ32bitと64bitの違いこそあるものの、リーズナブルではないだろうか。
冒頭に書いたように、ほぼスペックが同じで光学ドライブの有無だけが異なるネットトップ「AspireRevo ASR3610-A44」を所有していることもあり、比較しながらの使用感などを書いてみたい。
まず、梱包から本体を取り出した時思ったのは、「意外と分厚い」だった。仕様上は「AspireRevo ASR3610-A44」と比較して9mmしか違わないのに不思議なものだ。加えて重さもズッシリ重く感じる。1.2kgと1kgを超えているのがその理由だろう。ただ厚いそして重いと言っても比較するものが他社のネットトップ。一般的なデスクトップPCと比較すると、十分コンパクトで軽量だ。また、ちょっと重く厚いと言うのは悪いことばかりではなく、机の上などに設置した時は安定し、厚みがある分、電源ボタンはフロントパネルにある。このため、電源ON/OFFする度にボディを押さえなければならない「AspireRevo ASR3610-A44」より操作性は向上する。
発熱や振動、ノイズに関しては、どちらも同レベルで全く気にならない。特に液晶TVに接続した場合は、数m離れて観ることになる。これだけ距離があれば、事実上ノイズや振動に関しては皆無と言ってもいいだろう。
ボディが斜めに向く独特のルックスは、あまりPCとしては見掛けないデザインだ。しかも無線LANのアンテナが出ているので、パッと見た感じはラジオや無線ルーターかと思ってしまう。全体的にこれまでにない雰囲気だ。ただ、発表時の写真を見ると、ボディは金属のように見えるが、実際はフロントパネルも含め全てプラスチック。リビングに置くことを考えると、個人的にはもう少し高級感が欲しいところ。この辺りはコストとのトレードオフなので、仕方ない部分でもある。また左右の側面にはゴム足のようなものはない。ただし、横置きは可能になっている。
【お詫びと訂正】初出時に、横置きはできないようだとしておりましたが、横置きにも対応しております。お詫びして訂正させて頂きます。
付属の無線式キーボードとマウスは、クオリティ的にこのクラスのPCに付属するものと大差ない。キーボードは10キー付きのフルサイズだ。ファンクションキーの上に、再生や停止ボタンがあるなど、コンテンツプレーヤーを意識したレイアウトになっている。
細かいところで良いと思ったのは、リアパネルにもS/PDIFと併用の音声出力があること。HDMI接続の場合必要ないが、ミニD-Sub15ピン出力や変換コネクタ経由でDVIを使う場合、どうしても音声出力は別途接続しなければならない。それがフロントパネルだけだと、ケーブルが手前に来てしまうので美しくない。「AspireRevo ASR3610-A44」はフロントパネルのみにコネクタがあるため、気に入らない部分だったりする。
逆にこれはもう少し工夫が欲しいと思ったのは、無線レシーバのサイズだ。大きさ的には小型タイプのUSBメモリほどもある。これが何処かのUSBポートに常に刺さっているのはちょっと気になる。「AspireRevo ASR3610-A44」付属の無線レシーバは、非常に小さくデザイン的にも物理的にも邪魔にならない。これと同じものが欲しいところだ。
なお、内部を見たいと思い調べたところ、リアパネルのネジを6本、フットスタンドを固定するネジ穴の周囲にあるネジ2本を外してリアパネルを撤去、向かって左側の側面を後ろへスライドさせると開きそうだったのだが、ボディ底にあるシールを剥がす必要があり(これを剥がさないとスライドしない)、今回は見送っている。
●多くのプレイヤー的ツールが付属液晶TVに接続してリビングでのコンテンツプレーヤー用途を意識してか、オンラインで音楽、ゲーム、eBookなどが楽しめる「ASUS @Vibe」、多彩なフォーマットに対応したメディアプレイヤー「TotalMediaTM Center」、オンライン動画が楽しめる「Tremendous! TV」など、メディア系のアプリケーションが主にインストールされている。TVでの使用を前提にしているらしくフルスクリーンUIだ。また、これらは「Eee Bar」と呼ばれるプログラムランチャーに登録されているので、手軽に起動することができる。
この他にも「ウイルスバスター 2010 60日間対応版」、「i-フィルター5.0 30日間対応版」、「ASUS WebStorage 60日間体験版」なども入っている。
250GBのHDDは、Cドライブに80GB、Dドライブに約142GB割当てられている。出荷時Dドライブは何も入っていないので、My DocumentsをDドライブへ割り当てデータを管理した方が効率的だ。
Windows エクスペリエンス インデックスは総合3.3(3.3)。CPU 3.3(3.3)、メモリ 4.5(4.5)、グラフィックス 4.4(4.3)、ゲーム用グラフィックス 5.3(5.3)、プライマリハードディスク 5.9(5.3)。カッコ内は「AspireRevo ASR3610-A44」の値だ。32bitと64bitとの違いだろうか。ほぼ同じスペックでも若干違いがある。
CrystalMarkもMEMが6,979、GDIが2,504、D2Dが2,681、OGLが5,090と良好だ。さすがIONプラットフォームと言ったところだろう。「AspireRevo ASR3610-A44」と比較しても多少凸凹があるものの、良く似た値になっている。また前回デュアルチャンネルアクセスを試せなかったマウスコンピューター「LUV MACHINES(Lm-mini)シリーズ」のMEMと比べると約1.5倍向上している。しかし、メモリコントローラ内蔵の新型Atomプロセッサの方がシングルチャンネルアクセスにも関わらず値は上回っている(Windows エクスペリエンス インデックス メモリ4.6、CrystalMark MEM 8,009)。CPUにメモリコントローラを内蔵するアーキテクチャはかなり効果があるようだ。
YouTubeのHD動画は、720p/1080pとも、CPUのみだと結構厳しい。動画支援機構があるFlashPlayer 10.1β2か、HTML5のvideoタグを使っての再生はCPU使用率がグンと下がって快適な再生環境となる。もともとチップセット内蔵グラフィックスのGeForce 9400M Gは、ドライブさえあればBlu-rayも再生可能な能力を持っている。従って動画支援機構が使える環境であれば、難なく高解像度の動画コンテンツも扱える。
以上のように「EeeBox PC EB1501」は、家庭用の液晶TVに接続し、コンテンツプレーヤーとして十分楽しめるスペックとなっている。もちろんホビー用としてデスクトップPC替わりに使うのも何の問題も無い。また2GBのメモリ、そして32bit版Windows 7も用途を考えれば十分だろう。いっそDVDスーパーマルチドライブではなく、Blu-rayドライブを搭載しても良かったかも知れない。
唯一気になる点があるとすれば、ボディそしてキーボードなどの質感だろうか。コスト的に厳しい部分だろうが、リビングなどに置くならもう一頑張り欲しいところ。とは言え、光学ドライブを内蔵した、オールインワン・ネットトップを探しているユーザーにはお勧めだ。