■西川和久の不定期コラム■
「マウスコンピューター Lm-mini20」
マウスコンピューター「Lm-mini」 |
旧型AtomプロセッサとGMA950との組み合わせはもちろん、GPUを内蔵した新型AtomプロセッサのGMA3150もGPUとしては非力で、そのままではHD動画でさえコマ落ちする。Intelが意図的に制限しているとは言え、ユーザーとしては残念な部分だ。それを解消すべく登場したのが、NVIDIAのIONプラットフォームだ。今回はそのIONを搭載し、OSを選べるネットトップをご紹介したい。
●ION+Atom 230プロセッサ
メモリコントローラそして、GPUを内蔵した新型Atomプロセッサが発表されてから、旧型Atomプロセッサである230、330、N270、そしてN280搭載機の露出度がめっきり減ってしまったが、現在のNVIDIA IONプラットフォームでは、新型Atomプロセッサには対応していない。従って、IONを搭載しているマシンは、Atom 230~N280プロセッサのいずれかを搭載していることになる。Intelもあと少しの間これらのCPUを製造するらしいので、IONプラットフォームを搭載するマシン自体は生産可能だ。
新型Atomプロセッサ+Intel NM10 Expressチップセットと、IONプラットフォームを簡単に比較すると、メモリは最大4GBでどちらも同じとなった。しかし、DDR2(しかもシングルチャンネルアクセス)と、DDR2/DDR3(デュアルチャンネルアクセス)の違いがあるので、理論上はIONが有利なのだが、新型Atomプロセッサは、CPUにメモリコントローラーを内蔵している関係から、アクセスがやや速くなり、差は小さくなった。
一方、GPUに関しては、相変わらずIONプラットフォームが圧倒的に有利だ。新型Atomでは内蔵グラフィックスは名前がGMA950からGMA3150に変わったが、仕様的にはほとんど同じで、DirectX 9.0c、シェーダモデル3.0(ソフトウェア対応)、動画支援機構無しで、そもそもHD動画が完全に再生できない。従ってGeForce 9400M Gと比較するまでもないだろう。
このような中、今回レビューするのは、マウスコンピューターの「Lm-mini20」シリーズだ。IONプラットフォームを採用し、CPUにはAtom 230プロセッサ(512KB L2 キャッシュ/1.60GHz/533MHz FSB)を搭載し、本体サイズは20.0×153.5×172.5mm(幅×奥行き×高さ)と非常にコンパクト。さらにディスプレイにVESA取り付けキットの取り付け穴がある場合、ディスプレイの後ろにマウントできるネットトップだ。仕様は以下の通り。
LUV MACHINES(Lm-mini20)シリーズ
・CPU:Atom 230プロセッサ(512KB L2キャッシュ/1.60GHz/533MHz FSB)
・チップセット:NVIDIA ION
・メモリ:1GBオンボード/PC2-5300 DDR2 SO-DIMM×0(1スロット/空き1/最大3GB)
・HDD:160GB
・OS:Windows 7 Home Premium/Professional(32bit)、Windows XP Professional SP3(ダウングレード)
・ディスプレイ:チップセット内蔵GeForce 9400M G、DVI-I×1
・ネットワーク:Gigabit Ethernet(1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T)
・その他:USB 2.0 全面×2/背面×4、音声入出力、VESA取り付けキット、フットスタンド、アクティブスピーカー、キーボード&マウス付き
・サイズ/重量:20.0×153.5×172.5mm(幅×奥行き×高さ)/590g(スタンド無し)
特徴としては、チップセットがIONプラットフォームになっていることはもちろん、ディスプレイ出力にアナログ出力ではなく、DVI-Iを搭載しているところだろう。高解像度環境においては、デジタル出力のほうが画質的に有利だ。GeForce 9400M Gの性能も発揮できる。また有線LANはGigabit Ethernet対応。新旧に限らず、多くのAtomプロセッサ搭載機の泣き所を、きっちりフォローしている。
本体のサイズはそのまま使っても非常に小さく場所を選ばないが、更にVESAマウント対応の液晶ディスプレイだと、ディスプレイの裏に設置できるので、スペースファクター抜群だ。VESAマウンタは標準装備。マウス&キーボードに加えて、アクティブスピーカーが付属しているのも嬉しいポイントだろう。
BTOで選べるOSは、Windows 7 Home Premium(32bit)、Windows 7 Professional(32bit)、Windows 7のダウングレード権を使ったWindows XP Professional SP3、加えてOS無しも選択できる。先のハードウェア構成で価格は順に、34,860円、40,110円、39,900円、24,990円(税込)。今でもWindows XPを選べるのはマシンパワーやビジネス用途を考えると重要。そしてOS無しも、筆者のようにいろいろなOSを入れて遊びたいユーザーにとってはコストを抑えることができる。余談になるが、OS無しの価格は、メモリ1GB、HDD 160GB、そしてキーボードなども含まれる。市販のパーツを集めて組み立てるよりも安上がりかも知れない。
その他BTOでは、Microsoft Officeの有無、メモリ1+1GBまたは1+2GB、HDDもしくはSSD、外付けオプティカルディスク、ワイヤレスマウス&キーボード、USB無線LANなどが選択できる。
さらに、21.5型ワイド液晶(iiyama PLE2208HDS-B)や27型ワイド液晶(iiyama PLE2710HDS-B1)も一緒に購入可能だ。どちらも1,920×1,080ドットのフルHD、HDCP、そしてVESAマウント対応となる。
今回手元に届いた構成は、メモリ1GB、OSはWinodws XP Professional、そして液晶モニタ「iiyama PLE2008HDS-B1」だ。液晶は20型の1,600×900(HD+)対応。VESAマウントに対応しているので、後で裏に設置してみたい。
以前、ネットトップの「Endeavor NP12-V」の時にも書いたが、本体サイズを考えると、梱包がとても大きく長細い。理由は、フルサイズのキーボード、マウス、アクティブスピーカーまでもが入っているからだ。標準添付品としてそれなりのクオリティなので問題無いのだが、ちょっとボディとのギャップがあり過ぎる感じがする。例えばキーボードは「AspireRevo ASR3610-A44」に付属しているような、テンキー無しでもいいかも知れない。
梱包から外し取り出したボディは非常に薄くコンパクトだ。色がブラックなので、余計そう見えてしまうのだろう。フロント/リア共に、サブパネルのような何かを隠す仕掛けはなく、USBや各コネクタは見えっ放しになっている。とは言え、幅20mmとスリムなので、逆にパネルなどがあると扱い辛くなりそうだ。
フットスタンドは、手前を本体の溝へ差し込み、後ろはネジ止めとなる。高さが高くなるので一見不安定そうであるが、4箇所にあるゴム足でしっかし止まっている。ただ本機に限らず、この形状のボディは、流石に横から少し突っつくとあっさり転んでしまう。VESAマウントを使わないなら、横置きにするか、何らかの固定方法は必要だ。
熱やノイズに関しては、ボディがほんのり暖かくなる程度。ノイズはファンの音だろうか少し聞こえ、無音ではないものの、気にならないレベルに収まっている。
デザイン的にもスッキリしており、ハードウェアとして気になる部分も無く、全体的にうまくまとまってると言うのが第一印象となる。
●32bit版Windows XP Professionalここのところ、Windows 7ばかりを触っているので、久々にWindows XPで操作した感じであるが「やはり動きが軽い!」の一言に尽きる。考えて見れば、Windos XPが出た当初、平均的なCPUクロックは1.0GHz以下でもちろんシングルコア/シングルスレッド、メモリは256MB程度、HDDはIDEで数十GBだった。従ってAtom 230とは言え、それよりはるかに高性能、しかもメモリは1GB、HDDはSATAと転送も高速。GPUもSP16基と明らかに数ランク上のハードウェア環境だ。Windows 7ではギリギリのスペックも、Windows XPなら余裕で動いている雰囲気となる。
CPUはHyper-ThreadingがONで2CPU相当。1GBのメモリは、GPUがメインメモリと共有するタイプなので、実質768MB使用可能だ。160GBのHDDは日立GST「HTS545016B」。リカバリパーティションなどは無く、ワンパーティションでCドライブのみとなっている。プリインストールされているアプリケーションは「McAfee Security Center」と「Adobe Reader 9」のみと、非常にシンプルな構成だ。
CrystalMark。GPU関連の項目のスコアはさすがに高いが、新型Atomプロセッサと比較するとメモリはほぼ半分になっている | FlashPlayer 10.1β2を使い1080p動画再生時のCPU使用率。CPU使用率は通常だと100%となってしまうが、60%前後で再生できている |
CrystalMarkの結果を見ると、GPU関連の項目が、Intelのチップセットを使った時より圧倒的に向上しているのが分かる。さすがGeForce 9400M Gと言ったところだ。ただメモリに関しては、新型Atomのメモリコントローラ内蔵タイプと比較した場合、半分近く値が落ち込んでいる(Atom D510+NM10 ExpressだとMEM8009)。これは今回1GB/シングルチャンネルでのテストなので、1+1GBの計2GB/デュアルチャンネルにするとスコアは上がるものと予想される。ただ残念ながら筆者の手持ちでDDR2-667/1GBのメモリが無かったので試せなかった。仮にデュアルチャンネルアクセスで倍の値になったとしても、メモリコントローラを内蔵した新型Atomプロセッサシステムとあまり差が出ない。
YouTubeでHD1080p動画の再生チェックを行なったところ、通常の状態だとCPU使用率100%でコマ落ちと言うより画面が固まってしまった。Atomプロセッサのみの処理では負荷がかかり過ぎる。動画支援機構に対応したFlashPlayer 10.1(現在β2)を使用すれば、60%前後のCPU使用率でコマ落ち無く再生できることを確認した。
しかし、以前の記事で紹介したテスト公開中のHTML5のvideoタグを使用する方法は、アクセラレーションが効かず結果コマ落ちする。これはIONプラットフォームの問題ではなく、Windows側の問題で、Windows 7は標準でH.264をサポート、Windows XPは非サポート、再生するロジックが異なるものと思われる。この点だけは少なくともWindows 7の方が有利のようだ。
●VESAマウント対応で液晶ディスプレイと一体化パッケージにはVESAマウンタが標準装備なので他に何も用意する必要が無く、VESAマウント対応の液晶モニタさえあればボディと一体化できる。手順としては、先にフレームを液晶モニタへネジ4本で取り付け、フットスタンドと同様、本体の溝に手前を引っ掛けネジで止めれば固定できる。後は配線すれば作業完了だ。今回試用したモニタは、スピーカー内蔵タイプで、音声入力もあるため、本体の音声出力からそのまま音声信号を渡すことも可能。ただ音質/音量共にほどほど。気になる場合は、外部にアンプやスピーカーを接続することになる。
Gigabit Ethernet、そしてUSB接続タイプのマウスとキーボードの場合は、ケーブルで若干裏側が煩雑になるものの、普段は見えない場所なので許容範囲。別途USB接続の無線LANアダプタや、ワイヤレスのマウス&キーボードを用意すればかなりスッキリするので、後に変更するのもありだろう。
1つだけ難があるとすれば、SDメモリーカードやUSBメモリなど、USB経由でストレージ系のメディアを扱いたい時に、USBポートがモニタの裏にあるの厄介だ。USB Hubなどをどこかかに設置するなどの工夫が必要となる。また電源スイッチも手が届きにくくなるのでアクセスしづらくなる。
VESAマウンタ。ネジ4本とフレーム。手前側が調度フットスタンドと同じ構成になっている | ディスプレイに設置中。先にフレームをネジ4本で液晶パネルと固定する | 設置後。フットスタンド同様、手前を本体の溝に差込、後ろをネジで固定する。後は配線すれば作業完了 |
以上のように、IONプラットフォームとAtom 230プロセッサの組み合わせは、CPU側で重い処理をしない限り、ごく普通に使える環境だ。またGPUがGeForce 9400M Gと言うこともあり、フルHD動画も再生可能。軽めのエンコードならCUDAが使えるアプリケーションでCPUに負担をかけずに行なうことができる。
もともとIONプラットフォームを採用したマシンは、TVサイドに置くような、コンシューマ向けの製品が多いのだが、この製品は、Windows XP ProfessonalもBTOで選択できることもあり、ビジネス用途にも対応できるのが特徴だ。VESAマウントで液晶ディスプレイの裏に設置すれば、机の上のスペースをとらず、PCはサブで手元が広いスペースが欲しい様な用途にマッチする。加えてDVI-I出力なので、高解像度でも画質が保たれ長時間の作業にも向いている。
そのままでも省スペース、更にVESAマウントで液晶モニタに設置すれば事実上のフットプリントはゼロ。BTOでカスタマイズできる幅も広く、ホビーでもビジネスでもライトに使える1台と言えよう。