Acer「AspireRevo ASR3610-A44」 ~コンパクトでちょっとパワフルなネットトップ |
品名 | エイサー「AspireRevo ASR3610-A44」 | |
購入価格 | 39,800円 | |
購入日 | 11月24日 | |
使用期間 | 約5日間 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
1年ほど前から、ネットブックやネットトップの記事を書いてきた。Intelチップセットの内蔵GPUやメモリ2GBの制限など、Atomプロセッサはその性能の割りに、周辺がイマイチなのが気になっていた。もし、それに見合ったチップセットと組み合わせられたら、といつも思っていた。そこにNVIDIAが「IONプラットフォーム」を発表。実機が登場するのを楽しみにしていた。
このIONプラットフォームは、最大4GBのメモリと、フルHDやHDMI出力に対応したGPU「GeForce 9400M G」を搭載する。これまでIntelのチップセットでは弱いと言われていた部分を強化したチップセットである。これを採用したPCなら、Atomプロセッサの力を余すところ無く引き出せそうだと考えていたのだ。
そして、搭載第一号「AspireRevo」のお披露目会が4月21日に行なわれたので、会場へも馳せ参じたほどだ。
発表会でのコンセプト機とAspireRevo | AspireRevoの主なスペック |
AspireRevoは、IONプラットフォームを採用したネットトップで、SPを16基搭載したGPU、メモリ最大4GB、HDMI出力、eSATAなど、これまでIntelのチップセットでは見られなかったスペックが山盛りながら、とてもキュートなボディとなっている。
お披露目の会場も熱気でアツかった。その後、ASR3600と言う型番で3モデル発売されたものの、CPUがAtom 230でWindows Vista搭載だったので、購入にはいたらなかった。せっかく買うなら、デュアルコアのAtom 330、そしてWindows 7搭載にしたかったからだ。
以来待ちわびていたが、やっとこの2つの条件を満たすIONプラットフォーム機「AspireRevo ASR3610」がWindows 7の出荷と合わせて先月末に出荷開始となった。旧モデルとの比較は以下の様になる。
【表】仕様の比較
ASR3600-A34 | ASR3610-A44 | |
CPU | Atom 230 | Atom 330 |
メモリ | 2GB(最大4GB) | |
HDD | 160GB | |
OS | Windows Vista Home | Windows 7 Home |
参考価格 | 34,500円 | 39,800円 |
価格はオープンプライスなのでショップによるが、新旧モデルを比較して平均して約5千円プラスとなる。なお、フロントに光デジタル出力を搭載するなど、若干の仕様変更もされている。このほか、4GBメモリを標準搭載した「ASR3610-A45」モデルもラインナップされている。
●AspireRevo ASR3610の使い道実は今回購入するに当たって、少し悩んだことがある。それは、これまでインクジェットプリンタなどの記事を書くときに主に使っていたPCについてである。Atom 230プロセッサを搭載したIntel D945GCLFマザーボードの自作機にWindows XPをインストールしたものだったが、同じIONプラットフォームにするなら、これのマザーボードを入れ替えればそれで済むからだ。ただ、流石に今後記事を書く際に、OSがWindows XPのままでは問題がある。従ってWindows 7も一緒に買うと、結果的に結構な金額になってしまうのだ。ならば新品の「AspireRevo ASR3610」を購入しようと決めたわけだ。スペック的には先の主要部分に加えて、
- カードリーダー:MMC/SD/xD-Picture Card/メモリースティック
- ネットワーク:IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Gigabit Ethernet
- その他:USB 2.0×5、eSATA、HDMI、アナログRGB、光デジタル出力、音声入出力、ワイヤレスキーボード/マウス付属、ACアダプタ駆動
- サイズ:30×180×180mm(幅×奥行き×高さ)
- 重量:0.83kg
とこんな感じで、Bluetooth以外は全て標準搭載である。しかも非常に軽量・コンパクトなネットトップで、付属のキーボードとマウスもワイヤレスと、物欲を刺激する逸品だ。これまで使っていた自作PCにあって、ASR3610に無いものは、光学ドライブだけ。これは必要に応じて手持ちのUSBドライブを接続すればいいので特に問題は無い。
ただ現在、ASR3610はどこの量販店へ行っても品薄だ。店員曰く、「ION機でAtom 330、しかも安価なので、発売当初からかなり人気がある」。予約すれば1週間ほどで入荷するとの話だったので、発注し、8日後に連絡が入った。
早速受け取りに行ったところ、意外とパッケージの箱は大きく重い。キーボードなども含まれるので仕方ないが、もう少しコンパクトにして欲しかったところだ。
また2GBのメモリであるが、1GB×2で構成され、デュアルチャンネルになっている。HDDも含め十分な容量なので、分解の必要は無いものの、やはり中が見たくて分解した。
方法はスタンド取り付け部にある保証シールの下にネジが一本あり、それを外す(ただし、メーカー保証はなくなる)。後は、電源ボタンが無い方のパネルの溝に沿って細いマイナスドライバーなどを入れ、徐々に内部で引っかかっている爪を外していけば良い。
実際内部を見てみると、いろいろなパーツが乗っているが意外と余裕のあるレイアウトだ。ファン+ヒートシンクの下にCPUとチップセットがあると思われるが、今回はそこまで分解しなかった。いずれにしても、これならメモリ増設やSSD化も容易だ。
カバーを外したところ。カバー側に爪があるので、細いマイナスドライバーなどを使い根気強く外して行く | 本体内部。思っていたより、ゆったりとした配置だ。2GBモデルも1GB×2でデュアルチャネルアクセスになっている | カバーされている上部のUSBポート。この位置のUSBポートもカバーされているだけで機能する |
本体のセットアップ自体はACアダプタとディスプレイを接続し、ワイヤレスキーボードとマウスに付属の単4形乾電池を2本ずつ入れるだけ。非常に単純だが、電源ONにしてもキーボードとマウスを認識しない。よくよく見るとマウスの電池を入れる部分の上に、小さいUSBレシーバが入っていて、それを本体のUSBポートへセットしなければならなかった。この件は一応マニュアルにも書かれているが、ちょっと気が付き難いので、マウスの裏にでもシールか何かを張って欲しいところだ。
無事、キーボードとマウスを認識したら、後はWindows 7のユーザー登録などを行なえばデスクトップが現れる。これで準備完了だ。あっという間に、Atom 330プロセッサ+IONプラットフォーム+Windows 7の環境を使う準備が整った。Windows Vistaでは似た様な構成のマシンを触ったことがあるものの、Windows 7との組み合わせは未体験。どんな感触なのかと興味が高まる。
●使用感本体は非常に静かだ。ボディ上のスリットへ耳を近づけるとファンの音がするものの、少し離れてしまえば全く聞こえないレベルだった。このスリット部分を中心に若干温かくなる程度だ。
ワイヤレスキーボードとマウスは、ケーブルが無い分、机の上が非常にシンプルになる。キーボードはアイソレーションタイプ。キータッチはほどほどで悪くないものの、マウスも含めちょっとチープな感じ。価格的に仕方ない部分だろう。
本体にステレオスピーカーを内蔵していないので、フロントのヘッドフォン出力へ、アクティブスピーカーを接続するか、HDMI出力からディスプレイ側にあるスピーカーを使うことになる。後者の場合はいいのだが、前者の場合、ケーブルがフロント側にくるため、ちょっと不恰好だ。フロントにある光デジタル出力やeSATAに何かを接続する時も同様だろう。
また上部のUSBポートは、USBメモリなどを挿すと、何かが刺さったような見た目となり、これもスマートではない。ここにはワイヤレス用のドングルを付けるのがいいのかも知れない。いずれにしてもリアにUSBポートが4つあるので、これを有効活用した方が良さそうだ。この辺りは、ボディの形状が形状なので、ある程度納得済みでいろいろ使いたいところだ。
フロントのヘッドフォン出力にアクティブスピーカーのプラグ。フロントへケーブル類が接続されると一気に見た目の雰囲気が崩れる | 上のUSBポートにUSBメモリを挿すとこんな感じになる。上にあるUSBポートは、便利は便利だが、ちょっとこれはルックス的に良くない | 上のUSBポートにはワイヤレスのドングルが調度合う。これならあまり目立たないため、ワイヤレス用ドングルの指定席となりそうだ |
ソフトウェアに関しては、冒頭の仕様の部分で触れているが、Windows 7 Home Premiumは64bit版がインストールされている。この価格帯では珍しい構成だ。今回購入したASR3610-A44は2GBモデルだが、ASR3610-A45は4GBモデルなので、最大メモリ容量を配慮したのだろう。
ディスプレイの都合上、1,024×768ドットで試用したが、思っていたより動作が重い。プリインストールされているアプリケーションを眺めてみると「McAfee Security Center」があったので多分これが原因だ。CPUパワーの無いマシンでは外した方が動きが軽くなる。アンインストール後、この手のソフトウェアが何も入ってないと不安なので、「Microsoft Security Essentials」をインストールした。無料で利用でき軽いため、このクラスのマシンには好適だと思われる。
デスクトップのショートカットや、スタートメニューにはいろいろなアプリケーションやツールが入っている。中でもIONプラットフォームのパワーを引き出す「Acer Arcade Deluxe」が良い。動画支援機構、DLNAそしてH.264やBlu-rayにまで対応したソフトウェアだ。
筆者はBlu-ray Discドライブを持っていないので、試しに「TMPGEnc Movie Plug-in SpursEngine」でエンコードした動画(H.264形式・1,920×1,080ドット)を再生したところ、ディスプレイの解像度上、縮小表示になったものの、見事にコマ落ち無く表示された。この時のCPU使用率は約16%と低かった。動画支援機構が無いハードウェアだとずっと100%でもパラパラ漫画的にしか再生できない映像ソースだ。
もともとAtom 330プロセッサはパワーがあるCPUではなく、ウィンドウのアニメーション系のエフェクトを全てOFFにした上で、Microsoft Office 2010βなど実用的なアプリケーションなどもインストールして、再度いろいろ触ってみたところ、スムーズに動くようになった。もちろんAeroもOKだ。起動直後のメモリ使用量は約800MB。Windows 7の場合、メモリ2GB搭載機だと、おおよそこの使用量に落ち着くように設計されていると思われる。
さて、Windows エクスペリエンス インデックスのチェックと軽いベンチマークテストを行なったところ、Windows エクスペリエンス インデックスは3.3。内訳はCPUが3.3、メモリが4.5、グラフィックスが4.3、ゲーム用グラフィックスが5.3、プライマリハードディスクが5.3と言う結果になった。
こうして見ると、デュアルコアのAtom 330と言えどもアンバランスで、IONに見合う性能ではないようだ。IONプラットフォームは、Windows エクスペリエンス インデックスのCPU値が4.0以上、例えばCULV(超低電圧版)CPUと組み合わせると丁度良さそうだ。余談になるが、少し前にAOpenがPenryn対応(Socket P)の超小型IONベアボーンを発表しているので、こちらにも興味を惹かれている。
CrystalMarkは、一般的なIntel 945GC Express+Atom 330プロセッサの構成と比較して、ALU、FPU、MEM、HDD、GDIは変わらないものの、D2Dで約2.5倍、OGLで10倍以上の開きがある。GeForce 9400M Gのパワーが確実に効いている。TMPGEnc 4.0 XPressをインストールしたところCUDAの項目もONになった。
Windows エクスペリエンス インデックス。Atom 330だとCPUは3.3。バランス的には4~5程度のCPUが欲しいところだ | CrystalMark。ALUからGDIまではIntelのチップセットでもほぼ互角。D2DとOGLは圧倒的だ | CUDA対応アプリケーションもOK。「TMPGEnc 4.0 XPress」を動かしたところ、CUDA「ION」で認識した |
以上のように、Atom 330とIONプラットフォームの組み合わせは、これまでIntelのチップセットでは不満だった部分が大幅に解消されたものの、CPUパワーが今ひとつ不足すると言う結果になった。
とは言え、このマシンの用途は、来客時にウェブを見ながら打合せや、インクジェットプリンタなどドライバやアプリケーションが必要な機器の評価などがメイン。もともとAtom 230+Intel 945GC Expressでもそれなりに動いていたマシンのリプレイスなので、IONプラットフォーム+Atom 330プロセッサでちょっとだけパワーアップ。さらに、Windows XPからWindows 7へ、そしてコンパクトで場所をとらないボディに加え、キーボードやマウスがワイヤレスで机の上がスッキリと、対費用効果は十分にあり、大満足の逸品である。今後は、HDMI対応の液晶ディスプレイを購入し、高解像度化や音周りの整理をしたいと思っている。
(2009年 12月 2日)
[Text by 西川 和久]