西川和久の不定期コラム

HP「Stream 11-r000」

~税別直販価格で3万円を切る11.6型ノートPC

Stream 11-r000

 株式会社日本HPは10月20日、税別直販価格で3万円を切る11.6型ノートPCを発売した。発表のタイミングで編集部に貸出をお願いしていた実機がやっと送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。搭載しているプロセッサなどでパフォーマンスはおおよそ見当が付くものの、パネルやキーボードの品質が気になるところだ。

Windows 10とIEEE 802.11ac対応を追加したStream 11の後継機

 2014年末、199ドルという価格で世間を驚かせた同社「Stream 11-d000」の国内販売が始まった。当時はWindows 8.1 Update with Bing(64bit)搭載で税別直販価格は25,800円。タブレットの技術をクラムシェルに転用し、ファンレスや長時間駆動など、安価ながら魅力的なマシンであった。

 その後継機に相当するのが、今回紹介する「Stream 11-r000」だ。プロセッサやメモリ、ストレージなど、主要部分はそのままに、OSをWindows 10 Homeに乗せ換え、若干の仕様変更を加えたモデルで、少し価格は上がったものの、より製品としての磨きがかかっている。主な仕様は以下のとおり。

仕様日本HP「Stream 11-r000」
プロセッサCeleron N2840(2コア2スレッド、クロック 2.16GHz/2.58GHz、キャッシュ 1MB、TDP/SDP 7.5W/4.5W)
メモリDDR3L-1333 2GB
ストレージeMMC 32GB
OSWindows 10 Home
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、HDMI出力
ディスプレイ11.6型1,366×768ドット、タッチ非対応
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0
インターフェイス約92万画素Webカメラ、USB 3.0×1、USB 2.0×1、microSDカードスロット、音声入出力、デュアルスピーカー、デュアルマイク
サイズ/重量300×206×18.4mm(幅×奥行×高さ)/約1.18kg
バッテリ駆動時間約10時間30分
その他OneDrive 100GBの2年間利用権、公衆無線LANの国際ローミングサービス「iPass」1年間利用権
税別直販価格27,700円

 プロセッサはCeleron N2840。最新のBraswellではなく、Bay Trail世代だ。2コア2スレッドでクロックは2.16~2.58GHz。キャッシュは1MBで、TDP/SDPはそれぞれ7.5W/4.5Wとなる。タブレットなどで一般的なAtom Z3735Fと比較すると、シングルスレッド性能などは少し高いものの、マルチスレッド性能は2スレッドのため劣るという微妙な住み分けだ。超小型PCなどで使われているケースも多い。

 メモリはDDR3L-1333 2GB。ストレージはeMMCの32GB。microSDカードスロットもあるので、データなどはそちらへ逃がすことが可能だ。メモリ2GBなので、32bit版でもいいと思うが、OSは64bit版のWindows 10 Homeとなっている。

 ディスプレイは、11.6型の1,366×768ドット液晶。タッチには非対応で、本体には外部映像出力用としてHDMIを装備している。

 ネットワークは、有線LANはなく、IEEE 802.11a/b/g/n/ac対応無線LANとBluetooth 4.0に対応。前モデルと比較してIEEE 802.11acが追加されておりポイントが高い。

 そのほかのインターフェイスは、約92万画素Webカメラ、USB 3.0、USB 2.0、音声入出力、デュアルスピーカー、デュアルマイク。USB 3.0が1つあるので、必要であれば、高速な外部ストレージや有線のGigabit Ethernetアダプタなどを追加することもできる。

 サイズは約300×206×18.4mm(幅×奥行×高さ)で、重量は約1.18kg。バッテリ駆動時間は最大約10時間30分。サイズ約300×207×19~21mm、重量約1.26kgの前モデル比較すると、若干ながら薄型/軽量化を実現している。

 税別直販価格は、「OneDrive」100GBの2年間利用権と、公衆無線LANの国際ローミングサービス「iPass」1年間利用権が付属して27,700円。大手メーカー製としては、現時点では最安値のWindows搭載ノートPCとなるだろう。一般的な8型のAtomタブレットを考えると、十分妥当な価格だ。Microsoft Officeがないのもある意味扱いやすい。

 冒頭に書いたように、マシンとしての性能は、プロセッサやメモリ、ストレージでおおよその見当は付くため、気になるのは筐体やパネル、キーボードの品質といったところだ。筆者もそれを確認すべく、編集部に貸出の連絡をした次第だ。

前面。パネル上中央に約92万画素Webカメラ。正面側面は鋭角になっており何もない
斜め後ろから。中央にロゴのみ。バッテリ内蔵で着脱できないのでスッキリしている
背面。前の左右にスピーカー。メモリなどにアクセスできる小さいパネルはない
左側面。ロックポート、USB2.0、音声入出力
キーボード。10キー無しのアイソレーションタイプ。ファンクションキーはそのまま押すと機能キーとなる。[BS]キーのピッチが狭いのが気になる
右側面。電源入力、microSDカードスロット、USB 3.0、HDMI
キーピッチ。実測で約19mm。仕様上はキーピッチ18.7mm/ストローク1.5mm
付属のACアダプタ。サイズは約90×38×25mm/重量183g。コネクタはミッキータイプ
重量。実測で1,122g

 筐体はご覧のように裏も含め全てメタリック(コバルト?)ブルーだ。金属ではないので、そう言った意味での高級感はないものの、安っぽい感じでもなく、これはこれで悪くない。11.6型で重量1,122gの筐体は、持った時に軽過ぎず、重過ぎずといった具合で(もちろん軽い方がいいのだが)、バランスは良い。

 前面はパネル上中央に約92万画素Webカメラ、背面は前の左右にスピーカー。左側面にロックポート、USB 2.0、音声入出力、右側面に電源入力、microSDカードスロット、USB 3.0、HDMI出力を配置。バッテリは内蔵式で着脱は非対応。手前にHDMIポートがあるので、外部出力時はケーブルが邪魔になるかも知れない。付属のACアダプタは、サイズは約90×38×25mm(同)/重量183g。

 ディスプレイは11.6型。安価なマシンだけにその品質が気になっている方も多いだろう。明るさは程々、コントラストは少し浅め、IPSパネルではないため、視野角は角度が付くと色とコントラストも変化する。発色は色温度が高めで(青っぽい)、また色域が狭いのか、赤など原色系が少しくすむ。とはいえ、昔の安価なノートPCや出始めのChromebookほど酷くはなく、総合的にはギリギリ合格ラインと言ったところか。個人的にもこの価格でこれなら「まぁいいか!」という印象だ。

 キーボードの周囲はパームレストも含め、同社の「HP Imprint」技術により、木目調のパターン(粗目のヘアライン仕上げにも見える)がプリントされている。キーボードはアイソレーションタイプで、仕様上のキーピッチは18.7mm、ストロークは1.5mm。打鍵時には気持ちたわむが、配置やピッチも含め無難にまとめられており入力しやすい。ただ筆者は[BS]キーを多用するので、ここのピッチが狭いのは残念だ。

 ファンクションキーはそのまま押すと、音量や輝度調整の機能キーとなる。タッチパッドはボタンのない1枚プレートタイプ。ストロークが少しあり、押すとゴトゴト音がする。滑りは良くスムーズに扱える。

 発熱や振動、ノイズに関しては試用した範囲では全く問題なかった。ファンレスだが熱はうまく処理できているようだ。サウンドは筐体下手前にスピーカーがあるため、机など反射する素材によってかなり印象が変わるものの、程々の出力で無難に鳴る。

 このように、3万円を切る価格を考えると、各使用パーツ、不満が出るギリギリ手前で踏みとどまり、うまくまとめられている。なかなか絶妙なさじ加減だ。

Bay Trail搭載機としては平均的なパフォーマンス

 OSは64bit版のWindows 10 Home。TH2(Build 10586)にはなっていない。Bay Trailでメモリ2GB、ストレージはeMMCなので、作動速度はAtom搭載タブレットとほぼ同じ。気持ち反応が遅れる感じとなる。

 スタート画面(タブレットモード)は、Windows 10 Home標準に加え、右側の「TripAdvisor」からのブロックがプリインストールされたアプリケーション。ただし、「Photoshop express」や「Flipboard」は実際にはインストールされておらず、アプリストアへのショートカットだ。

 デスクトップは、壁紙の変更とショートカットを3つ追加と比較的シンプルだ。「Wi-Fiオファーの取得」は、「iPass」サイトへのショートカットとなる。またタスクバー右に[?]マークのアイコンが常駐しているが、これは「HP Support Assistant」のアイコンだ。

 ストレージは、eMMC/32GBのSanDiskの「SDW32G」。Cドライブのみの1パーティションで28GB割り当てられ、空きは17.4GB。無線LANモジュールは「Intel Dual Band Wireless-AC3165」で、BluetoothもIntel製だ。同じくIntelのUSB 3.0ホストコントローラもデバイスマネージャ上に見える。

スタート画面(タブレットモード)
起動時のデスクトップ。壁紙の変更とショートカットを3つ追加とシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス
ストレージのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで28GB割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、ストアアプリは「TripAdvisor」と「Weather」の2つ。

 デスクトップアプリは、「HP Help and Support」フォルダに、「HP AC Power Control」、「HP Documentation(htmlとPDF)」、「HP Recovery Manager」、「HP Support Assistant」と、同社お馴染みのツール系だ。若干UIが変わっているものもある。

 そのほかは、「DTS Audio Control Panel」、「Evernote」、「マカフィーリブセーフ・インターネットセキュリティ」。メーカーのツール系を除けばほぼ最小限の構成で、ストレージの容量も少ないのであまり詰め込んでいないのだろう。

HP AC Power Control
HP Recovery Manager
HP Support Assistant

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)、BBenchの結果を見たい。CrystalMark(2コア2スレッドで条件的には問題ない)のスコアも掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 4。プロセッサ 5.1、メモリ 5.5、グラフィックス 4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7。

 PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1226。CrystalMarkは、ALU 17457、FPU 14290、MEM 16482、HDD 21425、GDI 5494、D2D 3664、OGL 3855。参考までにGoogle Octane 2.0は6,844(Edge)となった。

 Bay Trail世代としては平均的な結果だろうか。Google Octaneの数値が前モデルと比較して若干高くなってはいるものの、EgdeとIEでブラウザエンジンが異なるため、Windows 8.xとは純粋に比較できない。ただし、Atom搭載タブレットと同様に、もう少しWebレンダリングが速ければ(特にソーシャルボタンや広告が多いページは遅い)、と思う程度で、サクサクとは言わないまでも普通に操作可能だ。

 BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残3%で36,165秒/10時間、残5%で35,565秒/9.9時間。仕様上の10時間半とほぼ同じで、11.6型としては比較的長い方だ。ただし、バックライト最小はかなり画面が暗く、実使用環境ではもう少し短くなると思われる。

PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)/詳細。プロセッサの温度は48~56程度と低め。クロックは瞬間500MHz程度まで下がっているが、ほぼ最大の2.58GHz
BBench
winsat formalコマンドの実行結果
CrystalMark

 以上のように、日本HP「Stream 11-r000」は、税別直販価格で3万円を切る11.6型ノートPCだ。Bay TrailのCeleron、2GB、eMMCなので、Atom搭載のタブレットにキーボードが付いた感じの作動速度と操作感だが、筐体やパネル、そしてキーボードと言った主要パーツの品質をコストギリギリのさじ加減で、不満が出ないレベルにまとめているのはさすがといえる。USB 3.0やHDMIもあるので簡易デスクトップ化もできる。

 価格を考慮した上で、仕様上の範囲で気になる部分もなく、入門機、セカンド(またはサード)マシンなど、Windows 10を気楽に試したいユーザーにお勧めできる逸品と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/