西川和久の不定期コラム

マウスコンピューター「MousePro A210V」

~バッテリ内蔵の21.5型マルチタッチ液晶一体型PC

 2012年12月20日、マウスコンピューターは、Windows 8を搭載し、バッテリを内蔵した一体型PCを発表した。もちろん液晶ディスプレイは10点マルチタッチ対応だ。プロセッサやHDDの容量などにより何種類かモデルがあるものの、今回はCore i7を搭載した上位モデルが編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けする。

何処にでも簡単に設置できる一体型PC

 Windows 8の登場により、スレートPCだけでなく、一体型PCもマルチタッチに対応となり、色々な機種が出てきそうな雰囲気だ。ある意味、スレートPCの大型版とも言えるため、技術的には難しくなく、各コンポーネントを流用、もしくはさらに幅広く選べるため、設計上は自由度も高い。基本的に据置型なのでバッテリ駆動の必要は無いものの、予期せぬ停電などに備え、短時間であれば十分バッテリ駆動も可能だ。

 今回ご紹介する「MousePro A210V」は、まさにこれに当てはまるコンセプトで作られたWindows 8向けの一体型PCとなる。主な仕様は以下の通り。

マウスコンピューター「MousePro A210V」の仕様
プロセッサCore i7-3632QM(4コア/8スレッド、2.2GHz/TB 3.2GHz、キャッシュ6MB、TDP 35W)
メモリ8GB×1(PC3-12800 DDR3)/スロット数2(空き1)最大16GB
チップセットIntel HM76 Express
HDD500GB(5,400rpm)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 8 Pro(64bit)
ディスプレイ21.5型フルHD液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット、10点タッチ対応
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0+LE
その他USB 2.0×3、USB 3.0×1、マルチカードリーダ、音声入出力
サイズ/重量536×26×363(幅×奥行き×高さ)/約4.8kg
バッテリ駆動時間約1.8時間
価格99,960円

 プロセッサはCore i7-3632QM。4コア8スレッド、クロック2.2GHzでTurbo Boost時3.2GHzまで上昇する。TDPは35W。チップセットはIntel HM76 Express。メモリスロットは2つあり、8GB×1のみ装着済みで1スロットが空きとなっている。OSは64bit版Windows 8 Pro。HDDは5400rpmの500GB、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブを搭載している。

 ディスプレイは光沢タイプの21.5型フルHD(1,920×1,080ドット)液晶パネルで10点マルチタッチに対応。グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000だ。外部出力が無いのはマルチディスプレイ化を考えると残念なところか。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet(GbE)、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 4.0+LEにも対応する。そのほかのインターフェイスは、USB 2.0×3、USB 3.0×1、マルチカードリーダ、音声入出力。ある意味必要最小限だが、GbEとUSB 3.0に対応しているので、特に困ることは無いだろう。100mm規格のVESAマウントホールも背面に用意されている。

 サイズは536×26×363(幅×奥行き×高さ)、重量約4.8kg。興味深い点として、停電時など非常用にバッテリを搭載し、約1.8時間駆動できることだ。実際はどの程度か後半のベンチマークテストで検証したいが、いずれにしても長時間の操作は無理にしても、一旦仕事を中断し、シャットダウンするには十分過ぎる時間と言えよう。

 価格は今回の構成で99,960円。同じA210VモデルでもWeb限定版として、プロセッサはそのまま、SSD 128/256GB、メモリ 8/16GBなども用意され、カスタマイズも可能だ。なお、主な仕様はそのまま、プロセッサがCeleron B830のA210E(64,890円~)、Core i3-3110MのA210B(79,800円~)、Core i5-3210MのA210S(84,840円)もあり、用途や予算に応じてチョイスしてカスタマイズできるのが魅力だ。

フロント。下中央にWindowsボタンがある
リア。2枚のパネルは簡単に外れ、メモリやHDDにアクセスできる。メッシュの部分にスピーカーが後ろ向きに入っている
少し分かりにくいが、手前の凹みに電源入力とGbE。奥の凹みにUSB 2.0×1。中央の凹みはバッテリ用
左側面。DVDスーパーマルチドライブ、USB 2.0×2、マルチカードリーダー
右側面。電源スイッチ、USB 3.0×1
ACアダプタ。11.7×5.8×1.7cmと割と小型だ。コネクタはミッキータイプ
バッテリは14.4V/2,200mAh/31.7Wh。これで約1.8時間駆動可能
付属のキーボードとマウス。どちらもUSB接続。キーボードから音量調整はできるが、明るさはWindows 8のUIを使う

 奥行きが26mmと言うこともあり、一見ちょっとした液晶ディスプレイに見える一体型PCだ。フロント・リア共に黒が基調となっており、オフィスだけなく、ホビーで使っても問題無いデザインになっている。

 フロントはWindowsボタンが中下にあるのみと非常にシンプル。左サイドにDVDスーパーマルチドライブ、USB 2.0×2、マルチカードリーダ。右サイドに電源スイッチ、USB 3.0×1を配置している。リアは、ちょっと分かりにくいが、左側の凹みに電源入力とGbE、右側の凹みにUSB2.0×1がある。その内側のメッシュになっている部分はスピーカー。中央の凹みはバッテリ用となっている。パネルは簡単に外れ、メモリとHDDに容易にアクセス可能だ。

 付属のキーボードとマウスはUSB接続。左側にUSB 2.0ポートが2つあるので、そちらへ接続してもいいが、背面のUSB 2.0ポートへ簡単なUSB Hubを接続し、裏から手前にケーブルを配線した方が見た目はスッキリする(下面とテーブル面はあまり隙間は無いが、細いケーブル程度は通せる)。

 21.5型のフルHD液晶パネルはIPS式ではないものの、比較的視野角も広く良好。発色・輝度共に十分なレベルだ。10点マルチタッチもスムーズにWindows 8を操作でき、特に不満点は無い。

 試用した範囲では、ノイズ、振動、そして発熱も十分許容内で快適に操作できる。サウンドに関しては、音質・出力共に平均的で、可もなく不可もなくなのだが、1点気になるのは、スピーカーが後ろに向いていること。できれば後ろは壁などにして、音を反射させる方がいいだろう。

Core i7でパワフルだが、バランスを考えるとSSDがベスト

 OSは64bit版Windows 8 Proを搭載。初期起動時のスタート画面はほぼ標準構成でNAVITIMEだけが追加されている。デスクトップも若干ショートカットがあるのみとシンプルだ。Windows 8からDVDビデオを標準では対応しなくなったこともあり、CyberLink Media Suiteがインストールされている。

 HDDは500GB/5,400rpmの「HTS545050B9SA08」を搭載。C:ドライブに約454GB割当てられ、426GBの空きがある。ベンチマークテストからも分かるように、バランスを考えると、若干遅いため、もし余裕があればSSDを使いたいところ。DVDスーパーマルチドライブには「TSSTcorp CDDVDW SN-208BB」が使われていた。Wi-FiモジュールはQualcomm製、GbEはRealtek製だ。

スタート画面。解像度がフルHDなので1画面で全て収まる。NAVITIMEだけがシステム非標準
起動時のデスクトップ。左側にショートカット4つと、結構シンプル
デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはHTS545050B9SA08、DVDスーパーマルチドライブはTSSTcorp CDDVDW SN-208BB、Wi-FiはQualcomm製、GbEはRealtek製
HDDのパーティション。実質C:ドライブのみの1パーティション。約454GB割当てられている

 スタート画面やアプリ画面は、解像度が1,920×1,080ドットと言うこともあり、どちらも1画面で収まり一覧性が高い。

 プリインストールされているアプリケーションは、先に書いた通り、Windowsストアアプリに関してはNAVITIMEのみ。何かもうひと捻り欲しいところだが、今後に期待と言ったところ。

アプリ画面1
NAVITIME

 デスクトップアプリケーションは、LabelPrint、MediaShow、PowerDVD、ISOビューアー、Power2Go、PowerBackup、PowerDDirectorなどを含んだCyberLink Media Suiteと、CyberLink PhotoDirector 3、マカフィーインターネットセキュリティ、Adobe Reader、SkyDrive、Intelのツール系など。特筆すべき点は無いものの、手堅い感じだ。

CyberLink Media Suite
CyberLink PhotoDirector
Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回は4コア/8スレッドのため条件的に問題があり参考まで)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.9。プロセッサ 7.7、メモリ 7.7、グラフィックス 4.9、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は2827 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 65908、FPU 59602、MEM 34644、HDD 8696、GDI 14584、D2D 1960、OGL 6509。

 比較的プロセッサとメモリが速い分、グラフィックス系とストレージのバランスの悪さが目立ってしまう格好だ。グラフィックスは交換できないので、ストレージに関してはSSDを使いたいところ。容量不足の場合は、USB 3.0があるので、大容量のデータはこちらに外付けのHDDを接続すれば逃がす事ができる。

 BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力オン、Web巡回オン、Wi-Fiオン、Bluetoothオンでの結果だ。バッテリの残5%で6,605秒(1.8時間)。仕様通りの結果となった。先に書いたように、長時間の操作は無理でも、停電などの予期せぬアクシデントに対応するには十分以上の時間だ。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)。総合 4.9。プロセッサ 7.7、メモリ 7.7、グラフィックス 4.9、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7。2827 PCMarks
BBench。省電力、バックライト最小、キーストローク出力オン、Web巡回オン、Wi-Fiオン、Bluetoothオンでの結果だ。バッテリの残5%で6,605秒/1.8時間
CrystalMark。aLU 65908、FPU 59602、MEM 34644、HDD 8696、GDI 14584、D2D 1960、OGL 6509

 以上のようにマウスコンピューター「MousePro A210V」は、停電など非常時用のバッテリを備えた21.5型フルHDの一体型PCだ。できればセカンドディスプレイ用にHDMI出力が欲しかったものの、GbEやUSB 3.0もひと通り搭載し、インターフェイス系に特に不満は無い。

 バッテリ内蔵は簡易UPSとしても利用でき、企業内の導入コスト面でもメリットになる。Windows 8を搭載し、マルチタッチ対応の一体型PCを探しているユーザーにお勧めの1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/