■西川和久の不定期コラム■
編集部からSAPPHIRE製の未発表の小型PCが送られてきた。厚さわずか22mmの薄型PCだ。同社は、主にビデオカードを製造しているが、マザーボードなどのほか、本製品のようなPCも扱っている。国内ではアスクが代理店となっている。個人的に小さいPCは好みと言うこともあり興味津々で試用レポートをお届けする。
●AMD APU E-450搭載の全部入り同社の日本語サイトには無いものの、米国のサイトには現在、「SAPPHIRE EDGE-HD Mini PC」シリーズとして2種類の製品がある。1つはAtom D510/2GB/HDD 250GB/NVIDIA ION2(512MB)を搭載した「EDGE-HD」。もう1つはIntel Atom D525/2GB/HDD 320GB/ION2(同)を搭載した「EDGE-HD2」だ。
どちらもネットワークはGigabit EthernetとIEEE 802.11b/g/nに対応し、USB 2.0が2ポート、ディスプレイ出力として、HDMI出力とミニD-Sub15ピンが用意されている。このほか、5.1chオーディオ、HDMIに対応し、22Wの省エネマシンだ。
そして今回ご紹介するのは「EDGE-HD3 Mini PC」。名前からも分かるように、これらの次期モデルに相当する。主な仕様は以下の通り。
CPU | AMD APU E-450(2コア/2スレッド、1.65GHz、キャッシュ512KB×2、TDP 18W) |
チップセット | AMD A50M FCH |
メモリ | 4GB DDR3 |
HDD | 2.5インチ320GB(5,400rpm) |
OS | Free DOS |
グラフィックス | 内蔵AMD Radeon HD 6320、HDMI出力(DVI-D変換ケーブル付属)、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力 |
サイズ/重量 | 193×148×22mm(幅×奥行き×高さ)/530g |
価格 | 4万円前後 |
プロセッサはAMDのグラフィックス統合型E-450。クロック1.65GHz、2コア/2スレッド、キャッシュ512KB×2で、TDPは18WというE-350の強化版だ。チップセットはAMD A50M FCH。メモリは4GB搭載。HDDは5,400rpmの2.5インチ320GB。普段使いのPCとしては十分なメモリとストレージを備えている。
グラフィックスは、DirectX 11に対応したAPU内蔵のRadeon HD 6320。プロセッサ統合タイプとしては強力なものだ。出力はHDMIとミニD-Sub15ピン。HDMI→DVD-I変換ケーブルが付属する。
EDGE-HDとEDGE-HD2は、AtomプロセッサとION2の構成だったので、CPUとグラフィックに関してはプラットフォームが全く異なる構成となる。またメモリが2GB増の4GBになっているためWindows 7の作動も軽くなる。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは非搭載だ。その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。カードリーダが無いのは惜しいものの、EDGE-HDとEDGE-HD2には無かったUSB 3.0を2ポート備えているのはポイントが高い。
サイズは193×148×22mm(幅×奥行き×高さ)、重量530g。厚みが22mmとかなり薄い筐体で、世界最小クラスを謳っている。なお、キーボードとマウスは付属しない。
そしてOSだが、驚くことに「Free DOS」がインストールされている。この点についてはいろいろ意見はあるだろうが、Windowsのライセンスが手元に余ってる人には好都合だろうし、Linuxなど他のOSで使いたい人にも向いている。
価格はこの原稿を書いている段階で4万円前後の予定となっている。同じAPUを搭載した日本HPの11.6型ノートPC「Pavilion dm1-4000(AMDモデル)」(4GB/600GB/Windows 7 Home Premium)がで39,900円となっており、これと比較すると3万円前後になって欲しいところだ。
筐体は小さく薄い。Acer「AspireRevo ASR3610-A44」との比較写真を見ても分かるように、従来の小型PCよりさらに一回り以上小さい。色はマットブラックだ。内部写真を撮ろうと、カバーを開けようとしたものの、なかなか難しく壊しそうだったので今回は見送った。ただ初めからメモリ4GBとHDD 320GBを搭載しているので、特に内部にアクセスする必要も無いと思われる。
USB 3.0×2が前面、USB 2.0×2が背面にあるが、USB 3.0の方が転送速度が速いため、据え置き型のHDDを常時接続する場合は、背面にあった方がケーブルが邪魔にならない。この点は残念な部分だ。他のポートは全て背面にある。無線LANを内蔵し、HDMI出力があるので、別途無線のキーボードとマウスを用意して液晶TVに接続すると良さそうだ。
BIOSは古典的なAMI系だ。Main/Advanced/Chipset/Boot/Securityの項目がある。全て一般的なものでオーバークロックに関する項目は無い。
なお、評価機の電源ACプラグは変換プラグ式になっていたが、製品版では一般的なものになるそうだ。
●普段使いには十分なパフォーマンスOSがFree DOSだと何もできないので、64bit版Windows 7 Home Premium SP1をインストールした。メモリは4GBだが、内蔵グラフィックスと共有のため、実質3.61GBになっている。
HDDは5,400rpm/キャッシュ8MBのHM321HI。Windowsを新規インストールしたので当然だが、この状態でC:ドライブは1パーティションで約297GB。空きは282GBとなる。USB 3.0のコントローラはASMedia製、Wi-FiモジュールはRealtekのRTL8191USだ。
起動時のデスクトップ。内蔵グラフィックスと共有のため実質3.61GB。2コア/2スレッドだ | デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは5,400rpm/キャッシュ8MBのHM321HI。USB 3.0のコントローラはASMedia、Wi-FiモジュールはRTL8191US | HDDのパーティション。320GBのHDDへWindowsを新規インストールしたので、C:ドライブ約297GB |
もともとのOSがFree DOSなのでもちろんプリインストールされたアプリケーションなどは無い。付属のドライバCDには「チップセットドライバ」、「LANドライバ」、「USB 3.0ドライバ」、「IEEE 802.11b/g/nドライバ」、「オーディオドライバ」などが含まれている。
一度にまとめてインストール出来ず、1つ1つ個別にインストールする必要があり、少し手間がかかる。また途中何度かリブートが必要だった。とは言え、特殊なドライバもなく、トラブルが発生することは無いだろう。
CD-ROMに入っているドライバなど | USB 3.0のコントローラはASM104x | AMD VISION Engine Control Center |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.9。プロセッサ 3.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.5、ゲーム用グラフィックス 5.9、プライマリハードディスク 5.9。過去、何台かE-450のマシンの評価を行なったが、構成がほぼ同じこともありスコアはほとんど同じとなる。これでプロセッサが4を超えているとバランスが良くなるのだが。
CrystalMarkは、ALU 10963、FPU 10148、MEM 8594、HDD 9043、GDI 4843、D2D 2500、OGL 11430。中でもOGLの1万代は強力。Intel HD Graphics 3000より遥かに高性能と言えよう。ただしCore i5などと比較するとALU、FPU、MEMは1/2.5~1/3ほどになるので、トータル的なパフォーマンスに関して過度の期待は禁物だ。
Windows エクスペリエンス インデックス。エクスペリエンス インデックスは、総合 3.9。プロセッサ 3.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.5、ゲーム用グラフィックス 5.9、プライマリハードディスク 5.9 |
CrystalMark。ALU 10963、FPU 10148、MEM 8594、HDD 9043、GDI 4843、D2D 2500、OGL 11430 |
以上のように、EDGE-HD3 Mini PCは、AMD E-450 APUを搭載し、厚さたった22mmの薄型PCだ。メモリ4GB、そして320GBのHDDを搭載し、USB 3.0やWi-Fiも標準装備しているので実用性は高い。ただプリインストールのOSがFree DOSと言うのは、評価が別れるところだろう。
とは言え、パワー的には普段使いに十分。リビングの液晶TVに接続するのがピッタリなPCだ。そんな使い方を検討してる人に勧めたい。