■西川和久の不定期コラム■
ASUSTeKは10月26日、同社初のUltrabookとなる「ZENBOOK」2機種4モデルを発表した。各モデルの主な違いはパネルサイズとSSDの容量。今回その中から、11.6型でSSD 128GBのモデルが編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けする。
●ASUS初のUltrabookまず「Ultrabookの定義」であるが、Intelのサイトから引用すると、「高い応答性と洗練されたデザインを備えた……」のコピーがあり、「超高速の応答性/電力効率の高い第2世代Intel Coreプロセッサー搭載のUltrabookシステムで瞬時にウェイクアップ」、「薄型で洗練されたデザイン/厚さ1インチ(21mm)未満の超薄型で洗練されたデザイン」、「驚異的なビジュアル機能を内蔵/ビルトイン・ビジュアルとスマートなマルチタスク処理により、高い性能と臨場感あふれるビジュアル体験を提供します」と、書かれている。
最後の驚異的なビジュアル機能は何を指しているのか分からないが、要約すると低TDPの第2世代Coreプロセッサを使い、厚さは21mm未満、そして瞬時に起動する、新しいカテゴリのノートPCとなる。
10月26日にASUSTeKから発表されたのは、液晶パネルが11.6型/1,366×768ドットの「ZENBOOK UX21E」。SSDの容量は64GBと128GBの2モデル。そしてもう1つが、13.3型/1,600×900ドットの「ZENBOOK UX31E」。こちらはSSDの容量がそれぞれ倍となり128GBと256GB。Intel Core i7-2677Mを搭載し、厚みは最厚部でも17mmなど、どちらも基本仕様は同じであるが、13.3型の方だけ筐体に余裕があるためか、SDカードリーダも内蔵している。価格は順に84,800円、99,800円、109,800円、129,800円。今回手元に届いたのは、11.6型の128GBモデル。主な仕様は以下の通りだ。
CPU | Intel Core i7-2677M(2コア/4スレッド、1.8GHz/TB2.9GHz、キャッシュ4MB、TDP17W) |
チップセット | Intel QS67 Express |
メモリ | 4GB |
SSD | 128GB |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 3000、microHDMI、ミニVGA出力 |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 2.0×1、USB 3.0×1、音声入出力、Webカメラ、ミニVGA出力→ミニD-Sub15ピン変換アダプタ、USB→Ethernetアダプタ |
サイズ/重量 | 299×196×3~17mm/約1.1kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約5.5時間 |
価格 | 99,800円(SSD 64GBモデルは84,800円) |
プロセッサはIntel Core i7-2677M。2コア、4スレッド、クロック1.8GHzでTurbo Boost時2.9GHzまで上昇する。Core i7と聞くと4コアを想像するが、2コア/4スレッドと、Core i3やCore i5と同じで、TurboBoost時の上昇率が高く、L3キャッシュも4MBと多い。
チップセットはIntel QS67 Express。メモリは4GBで増設はできない。ストレージはSSDで128GB。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 3000。液晶パネルは光沢タイプの11.6型1,366×768ドットを搭載する。外部出力は、microHDMIとミニVGA。後者は汎用的なポートではなく、専用のコネクタで、ミニD-Sub15ピンへの変換アダプタが付属している。
ネットワークは有線LANは、USB→Ethernetアダプタ(ASIX AX88772B USB2.0 to Fast Ethernet Adapter)で実現。無線LANはIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 4.0も内蔵している。インターフェイスがUSBということで、Gigabit Ethernet非対応なのは残念なところだ。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×1、USB 3.0×1、音声入出力、Webカメラ。USB3.0が1つあるので、SSDが容量不足になりそうな場合、屋内などでは外部にHDDを接続し、USB 2.0よりも高速にアクセスでき、ポイントが高い。また、冒頭に書いたように13.3型の「UX31E」はSDカードリーダも内蔵している。
サイズは299×196×3~17mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.1kgと、モバイルノートとしては抜群の機動力だ。バッテリ駆動時間は最大約5.5時間。
価格は99,800円。余談になるが、64GBモデルの84,800円という価格は、実はMacBook Airを意識しているようで、11.6型フラッシュストレージ64GBモデルと同じだ。更にこの上の3つのモデルは、該当するMacBook Airより若干安目に設定されている。Ultrabookの定義から考えても、ライバルとみなしているのだろう。
何と言っても特徴的なのはその筐体だ。厚さ3~17mmは、驚異的に薄い。裏面も含めヘアライン仕上げで、質感も良い。重量はモバイルノートとしても軽量級の1kgちょっと。ただ実際持った時は、ズッシリ重たく感じる。そのメタリック感からくる錯覚かも知れない。
発色は全体的にゴールドとシルバーの中間的な色で、天板と液晶パネルのフチは少し暗め、その他の部分は明るめの配色になっている。キーピッチの写真から分かるように、光によってはシルバーっぽく見えることもある。個人的にはゴールドっぽい色よりシルバーの方が好みだが、この辺りは個人差もあるだろう。
11.6型液晶パネル採用機だと、どうしてもパームレスト部分が狭くなるが、この「UX21E」は、うまくキーボードを上部へまとめ、タッチパッドは大きく十分な広さがある。タッチパッドのボタンは、物理的に分離しておらず、タッチパッドの先端を左右に押し分ける。パッと見た感じは硬そうだが、実際操作すると適度な重みとクリック感があり使い易い。マルチタッチにも対応し、指2本によるスクロールや、ピンチズームなども可能だ。
キーボードはアイソレーションタイプで、キーピッチは実測約19mm。押した時のフィーリングも悪くなく、極端なレイアウトも無い。ただ中央を強く押すと全体が若干たわむのと、キートップに今一つ高級感が無いのは残念なところ。全体の質感は好みもあるだろうが、キーボードに関しては、質感、クリック感、バックライトも含めMacBook Airに軍配が上がる。この辺りは是非改善して欲しい部分と言えよう。
液晶パネルの発色は、明るく、コントラストも高く、発色もメリハリがある。ただし、ノーマルの状態だと結構色温度が高く青っぽい。筆者が試した範囲だと、色を調整する付属ユーティリティ「Splendid Utility」の「シアター」モードが一番sRGBに近い感じだ。視野角は左右より上下が狭く、パネルの角度によって結構見え方が変わる。
ノイズや振動に関しては、CPUファン以外、物理的に動く部分が無いため、非常に静音。熱に関しては部分的にほんのり暖かくなる程度と優秀だ。
サウンドは「Bang & Olufsen ICEpower」監修で、非常に上品な音質。特に中高域の澄んだ感じが印象的だ。最大出力も十分あり、このクラスとしてはトップクラスのサウンドだろう。
●十分以上のパフォーマンスOSは、64bit版Windows 7 Home Premium SP1。Intel HD Graphics 3000とメモリを共有するため、4GBより実際使用可能なメモリは少し減るが、モバイルノートとして使う限り、特にメモリ不足にはならないと思われる。
特筆すべきはスリープと復帰が瞬時なこと。パッとトップカバーを開けて即作業が出来、終了後、パタッとトップカバーを閉めればスリープする。なかなか快適な環境だ。OSの起動/終了も20秒とかからない。ただ、MacBook Airと比較した場合は、スリープと復帰に関してはほぼ同じだが、OSの起動や終了、そしてアプリケーションの起動などは、MacBook Airの方がメモリが2GBの最下位モデルでも、もっとキビキビ動いていた。OSがWindowsかMac OS Xかの違いもあるため、直接比較は意味が無いものの、まだ改善の余地はありそうだ。
SSDのパーティションは、実質C:ドライブのみの約103GB。初期起動時で空きは約82GBだった。ドライブは「ADATA XM11 128GB」を使用。その他のインターフェイスは、Bluetoothが「Atheros AR3012 Bluetooth 4.0 + HS」、ネットワークは「Atheros AR9485WB-EG Wireless Network Adapter」が使われている。
プリインストールのソフトウェアは、「Kingsoft Office」、「Trend Micro Titanium Security」、「Windows Live Essentials 2011」、「Nuance PDF Reader」、そして同社のユーティリティ類など。
これまで同社のユーティリティ系は、独立してデスクトップへショートカットを配置していたが、今回「AsusTools」として1つのフォルダにまとめられた。フォルダを開くと、「エンターテイメント」、「システムツール」、「セキュリティと保護」、「ネットワーク」、「バックアップと復元」、「ワープロ」とカテゴリ毎にフォルダがあり、その下に該当するユーティリティのショートカットがある。
割り当てられているユーティリティはそれぞれ、「LifeFrame」、「e-Driver」/「Splendid Utility」、「ASUS Secure Delete」、「ASUS WebStorage」、「AI Recoverey Burner」、「Nuance PDF Reader」となる。2階層目のショートカットが1つもしくは2つしかないので、まとめ過ぎの感じもするが、デスクトップに散らかっていないだけ、個人的には好みだ。
右側にある時計のようなウィジェットは「ASUS Power Wiz」。周囲の分割された部分をクリックすると、1ページ目には「スタンバイ時間」、「充電時間」、「バッテリ残量」、2ページ目には「ゲーム」、「オフィス」、「ビデオ再生」、「インターネット」と、利用状況に応じたバッテリ駆動時間の目安が表示される。
AsusTools | AsusTools/システムツール | ASUS Power Wiz |
ASUS Tutor | Kingsoft Office/表計算 | ASUS USB Chager+ |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.6。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 5.6、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 7.9。参考までにIntel Core i5-2467M(2コア/4スレッド、1.6GHz/2.3GHz、キャッシュ 3MB) を搭載した11.6型のMacBook AirをBoot Campした結果は、総合5.7。6.3/5.9/5.7/6.2/6.9。プロセッサ+0.6、プライマリハードディスク+1.0となるものの、他はほぼ同じ。
CrystalMarkは、ALU 13282、FPU 14530、MEM 18441、HDD 41141、GDI 5439、D2D 1000、OGL 1348。このスコアで特筆すべきはHDD。長らくこのベンチマークテストを使って、ノートPCに限らずデスクトップPCも見ているが、HDDが4万越えと言うのは非常に珍しく、超高速と言って良い。
BBenchは、Power4Gear/Battery Savingモード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでの結果。バッテリの残5%で13,425秒/3.7時間。MacBook Airで同テストを行なった時は約3.5時間とほぼ互角だ。バッテリ交換が出来ないこともあり、駆動時間を優先するなら最大約8.1時間の13.3型「UX31E」を選ぶ方がいいだろう。
この結果からも分かる様に、同社が発表会の時に触れていた(明言はしていないが)MacBook Airと同じ価格でCPUパワーとSSDの速度は上回っていると言う点は、事実のようだ。
以上のようにZENBOOK UX21Eは、薄くて軽い筐体でありながら、Core i7プロセッサのパワーを持つ。USB 3.0搭載により、容量不足になりがちなSSDを補うため、高速な外部ストレージを接続することも可能だ。
ライバル機として比較されるであろうMacBook Airには、今一歩キーボードなどの質感はかなわないものの、CPUとSSDは速度の面で上回る。Ultrabookとしては十分魅力的な1台と言えよう。