西川和久の不定期コラム

Apple「iPad Wi-Fi/32GB」速攻レビュー
〜家庭では、もうPCは不要!?



iPad

 5月28日に待望のiPadが国内でも発売開始。予約注文ができるようになった5月10日の早朝、ネットのApple StoreでWi-Fi/32GBモデルを予約し、実機が届いたので速攻レビューをお届けしたい。


●Wi-Fi/32GBモデルにした理由

 iPadは、ストレージ16GB/32GB/64GB+Wi-Fi、そして+3G/GPS搭載と、計6モデル存在する。まず悩むのがストレージの容量、そして3Gの有無となるだろうか。筆者のケースでは、所有するiPhone 3GS/32GBで残り約18GB。使い方にもよるだろうが、16GB(48,800円)だと多分容量不足になる。もちろん最大の64GBを購入すれば大丈夫と思われるもものの、価格が68,800円になってしまうため、お買い得感が薄れてしまう。間をとって無難な32GB(58,800円)の選択をした。

 次に3G/GPSの有無は、これは筆者のライフスタイルにも関係し「外出時、できるだけカバンは持ちたくない派」なのだ。従って普段はジーンズのポケットに入るiPhone 3GSで十分。現状で何も困っていない。iPadは持ち歩かず室内のみの使用となる。対象となる室内は、事務所、自宅、そして近所のカフェ。これらは全て無線LANが使える環境だ。このような理由からWi-Fiモデルを選択している。移動中使わないのならGPSの有無も気にならないし、Wi-Fiモデルでも精度は落ちるがWi-Fiを使って位置情報を得ることができる。

 すでに携帯と名の付く契約を、ドコモ携帯電話、iPhone 3GS、そしてイー・モバイルと、3つしていることもあり、これ以上増やしたくないと言う本音もある。

 国内は非対応となっているiPhoneのデザリング機能がONになれば、イー・モバイルが必要無くなりスッキリするのだが、PCで使うと3G回線のトラフィックが増えると言う理由からソフトバンクはNGとしている。ある意味仕方ない部分でもあるが、これを「接続先がiPadに限りデザリングON」というのは技術的にできないのだろうか。iPadは3Gモデルもあるのだからトラフィックうんぬんと言う理由は該当しない。iPhone+iPadユーザーの場合、まず同時に2回線は使わないし、同じキャリアと2回線契約する必要も無くなり、便利になるのだが……。

●使用感/ハードウェア編

 箱から取り出した第一印象は「薄い!けど意外と重い」だった。Wi-Fiモデルの場合、重量は680g。ノートPCと比較すれば半分以下だ。従って重いと思うのは不思議な感覚なのだが、両手もしくは片手で持ち上げた状態だと、数分ならいいものの、それ以上は腕がだるくなる。もちろんボディのどこかが接地している状態だと全く問題無い。そしてペラペラの簡単なマニュルが入っているのもiPhoneと同じだ。ただiPhoneには付属していたクリーニングクロスはiPadには無かった。

 Wi-Fiモデルの仕様は以下の通り。

□iPad Wi-Fiモデルの仕様
・サイズ/重量:242.8×189.7×13.4mm(幅×奥行き×高さ)/680g
・ディスプレイ:LEDバックライト、IPS液晶9.7インチワイドスクリーンマルチタッチディスプレイ、1,024×768ピクセル、耐指紋性撥油コーティング
・ワイヤレス通信方式:Wi-Fi (IEEE 802.11 a/b/g/n)、Bluetooth 2.1+EDR
・容量:16GB、32GB、64GBのフラッシュドライブ
・プロセッサ:1GHz Apple A4カスタムデザイン、省電力SoC(System on a Chip)
・センサー:加速度センサー、環境光センサー
・バッテリ:内蔵25Whリチャージャブルリチウムイオンバッテリー/Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生で最長10時間
・インターフェイス:30ピンDockコネクタ、3.5mmステレオヘッドフォンジャック、内蔵スピーカー、マイク

 まず何より厚みが13.4mmというのは、この手の機器としては、これまで体感したことのない薄さだ。例えば「DOS/V Power Report」などの、ちょっとした月刊誌より薄い。全体的なデザインはiPhoneがそのままスケールアップした雰囲気だ。ただiPhoneの場合ボリュームが左側にあるのに対して、iPadは右側になっている。また消音ボタンに相当する位置にあるボタンはスクリーン回転ロックボタン。電源スイッチやステレオヘッドフォンジャックは間隔は広くなるものの配置は同じだ。各ボタンはiPhoneと比較すると、クリック感はあるものの、少しソフト。サイズ的には大き過ぎず小さすぎず絶妙なバランスになっている。

 ネットワーク関連は、IEEE 802.11a/b/g/nとBluetooth 2.1+EDR。11aにも対応しているのが珍しいところか。Bluetoothは、キーボード、スピーカー、ヘッドセットなどを接続する事ができる。

 下にある30ピンDockコネクタは、iPhoneなどのDockコネクタと同じになっている。ただし、米国で出荷直後話題になったが、古いPCや通常のUSB機器からの電源供給はパワー不足で行えない場合がある。付属の10W USB電源アダプタか、ハイパワーUSB 2.0ポートを使わなければならない。Macの場合はMacBook (13-inch, Late 2007)以降の対応だ。

 また今回ネットのApple Storeで購入したが、ソフトバンク「SoftBank Wi-Fi スポット」の2年間無料アクセス権が付いてきた。

フロント リア 30ピンDockコネクタ/内蔵スピーカー
3.5mmステレオヘッドフォンジャック/電源スイッチ ボリューム/スクリーン回転ロック 付属の10W USB電源アダプタとケーブル

 パネルはiPhone 3GSと同じ耐指紋性撥油コーティングが施されている。それでもちょっと触ると指紋跡がかなり目立つ。光沢パネルなので、特に電源OFFで暗くなっている場合には鏡の様に周囲が映り込む。今後、いろいろなメーカーからフィルムが出ると思うので、気になる人は貼った方がいいだろう。

 サイズは比較写真をご覧頂きたいが、ちょうど8.9型の液晶パネルと搭載したEee PC 901-Xと、12型の液晶パネルを搭載したThinkPad X201iの間程度の大きさとなる。ただし厚みだけは圧倒的に薄い。また逆にiPhoneがかなり小さく見える。

iPhone 3GSとの比較 ThinkPad X201iとの比較 Eee PC 901-Xとの比較

 セットアップは、購入直後、一度PCもしくはMacのiTunesでアクティベートしなければならない。従ってPCが必要になるのだが、Apple Storeなどでアクティベートしてもらえるので、コンテンツをiTunesで管理しない限り、PCが必須と言うわけではない。実際、後述する理由から現在iPadはiTunesで管理していない。

アクティベートを促す画面 iTunesを使いアクティベート iPadが起動した

 1つ注意する点としては、Mac版のiTunesと同期する時には、iTunesは9.1以降、そしてMac OS Xのバージョンが10.5.8以降でなければならないことだ。筆者が普段iPhoneの同期に使っているPowerPC版のMac miniは10.4のままだったので同期できなかった。10.5のライセンスは余っているのだが、メモリが512MBと少なくアップグレードしなかったのが仇となってしまった。1GBに増やして10.5にしようかと検討中だ。この関係もあり、この後のビデオ、iPod、連絡先の画面キャプチャはデータの無い状態になっている。予めご了承いただきたい。

 Windowsの場合は、Windows 7、Windows Vista、Windows XP HomeまたはProfessional Service Pack 3以降、iTunes 9.1以降なので特に問題ないだろう。

 アクティベート時、付属のUSBケーブルを使ってiMacへ接続しているので、iPhoneなどでは充電が始まるのだが、画面キャプチャ左上に「充電中ではありません」の文字が見える。筆者の所有するMacはハイパワーUSB 2.0に対応していないことになる。

 
●使用感/ソフトウェア編

 ハードウェアの特徴だけ見ていると、正に「iPhone/iPod touchの大きく速くなった版」。iPod touchやiPhoneを既に持っているのなら不要なのでは、もしくはノートPCがあれば十分、と言う意見になるのも頷ける。ただこれはiPadを起動、触った瞬間、根底から覆る。

 起動すると、iPhoneなどと同様、電源のON/OFFはPCで言うスリープの状態だ(ただし実際は動いているのでメールの受信などはできる)。スリープからの復帰に数秒かかるPCと比較して、瞬時に復帰するためイライラ感はゼロ。またAppの起動も瞬時だ。Safariのレンダリングは、Core iプロセッサ搭載クラスのハイパワーマシンには劣るものの、ネットブックやCULVノートPCクラスと比べると速い。画面サイズがXGAなので縦表示でも横表示でも普通に見ることができる。もちろん縦横回転はスムーズだ。そして冷却ファンなどは一切無いので完全に無音。

 Appは9.8インチのディスプレイ全面に表示され、まるで週刊誌やノートを見ているかの様に手元で動く。これはPCでは味わえない感覚だ。画面が切り替わる時などのアニメーションなども見事。普段Windowsではエフェクトを全てOFFにしている筆者でさえ違和感が無い。

【動画】ロック解除、Safariを起動し、PC Watchを検索して表示

 IPS液晶パネルは視野角が広く、写真を見ても動画を観ても発色は非常に綺麗だ。特に原色系の色はとても映える。かなり明るいので、輝度を落として使っている。マルチタッチも引っかかるような感触は皆無で何をしてもスムーズ。とにかくiPhone/iPod touchの大きくなった版には違いないのだが、それ以上に見え方やユーザビリティがまるで違う。少しSFチックでさえある。

 スピーカーの音に関しては、本体だけで聞くのなら無難な音量。音質は結構ボディ全体が響き、中低音のボリューム感も増す。iPhoneもそうだったが、予想を超えた音がする。ソフトウェアキーボードは、思っていた以上に入力しやすい。日記やコメント、メールのやり取り程度は全く問題無いレベルと言えよう。ただし、本原稿のように、半角英数漢字交じりの文章を書く時には、日本語モード、英語モード、数字モードの3つのモードを切り替えながら書かなければならないのでちょっと面倒だ。本格的に書く場合は、Bluetooth経由でキーボードが接続できるので使い分けたいところか。

日本語 英語 記号数字
【動画】文字入力中

「お世話になります。原稿をお送りします。宜しくお願いします。」撮影の都合上、斜めから入力しているのでパネルが見辛く、タイピングが遅くなっている。通常は倍程度の速度で入力できる

 iPhone 3GSの標準Appと比較して、SMS/MMS、電話、ボイスメモ、カメラ、株価、天気、時計、計算機、コンパスが無い。前半はもともと電話やカメラとして機能しないので削除された部分だ。後半はiPhoneのAppをそのままiPadへ移植しても画面サイズが大きい関係で収まりが悪かったので省かれたものと思われる。

 この件に関しては、実際筆者もSDKを使ってiPhone用のAppをiPadへ移植しようと試してみたものの、動くには動くがそのままのUIそしてデザインだと画面がスカスカになってしまい格好悪い。全面的に見直す必要がありペンディングになっている。いずれにしても時計や計算機など標準で入っていない分、App Storeでは、これらのカテゴリのAppが乱立していて面白い。

 逆に新しく加わったのはビデオだ。iPhoneではiPodのメニューの中にビデオの項目があるのだが、iPadでは独立したAppになっている。これは、大きく綺麗なディスプレイを考慮し前に出したかったのだろう。

 UIは縦位置使用か横位置使用かで、プルダウン形式のリスティングか、2ペイン表示に切り替わるAppが多い。ただしSafariは縦でも横でも前者だ。これはコンテンツの表示領域を広く確保するためだと思われる。個人的には2ペインの方が扱い易い(キーボードの幅も広くなる)のでiPadを横位置で使っている方が多い。

 また、Safariでの写真を含むファイルのアップロードは対応していない。ブログやSNSなどでは、メールを使った投稿もしくは、専用のアップローダーが必要となる。もともとiPhone OSはPCのようなファイルシステムの概念が無いので、仕方ない部分なのかも知れない。そしてiPodは、iTunesサーバーに接続できない。これらはiPhoneと同じ仕様であり不便な点だ。

Safari メール ビデオ
YouTube iPod iTunes
App Store マップ メモ
連絡先 Spotlight検索 設定

 iPad用として大きく変わったのはカレンダーと写真だろうか。他は画面が広くなった分、2ペイン化したり、情報量を増やしただけなのだが、この2つは全く別物だ。

 まずカレンダーは、日/週/月/リストと、まるで紙のスケジュール表を使っているかのように表示される。余談になるが筆者の場合、スケジュールはGoogle Apps for Your Domainを使いEメールと共に独自ドメインで運営している。この場合、Eメールは[設定]→[アカウントを追加]→[メール/連絡先/カレンダー]→[Gmail]で、ドメイン名を含めたメールアドレスでセットすればメールでアクセスできる。カレンダーはちょっと手順が違い、[アカウントを追加]から[その他]を選び、[CalDAVアカウントを追加]で設定する。この時、サーバーはwww.google.com、ユーザー名/パスワードはメールの設定と同じだ。これでPCからはWebで、iPhoneとiPadはAppからと、双方向に同期できるようになる。どの環境から編集しても全ての環境に反映されるので非常に便利だ。

 写真はまずUIが大きく変わった。どんな写真が入っているかが分かるスタック状のフォルダが表示され、タップするか、そのフォルダをピンチ&ズームすることにより開く。この時、写真、アルバム、イベント、撮影地で分類することが可能だ。スライドショーのトランジションはキューブ、ディゾルブ、波紋、ワイプ、折り紙の5種類。折り紙はなかなか味のあるトランジションだが、人物を含む場合は上半身が切れたりするのであまりお勧めしない。ライブラリの音楽を再生しながら表示もできる。ロック中の画面をピクチャーフレームにする機能もあり、複数のアルバムやイベント単位で写真をスライドショーすることもできる。

 ただiPhone同様、単独ではアルバム間の写真のコピー/移動、新規アルバムの作成、アルバム名の変更などができない。これだけ画面が大きくなったので編集可能にして欲しいところだ。

 

カレンダー/週 カレンダー/月 カレンダー/リスト
写真/イベント 写真/スライドショー設定 ピクチャーフレーム設定
【動画】写真を開きスライドショー(折り紙)

●結局どうなのか?

 こうして到着後、丸2日使った総合的な感想は「特に自宅ではPC(ThinkPad T43)とiPhoneをほとんど使わなくなった」ことがあげられる。昔は仕事を家に持ち帰っていたものの、ここ数年、日中事務所でしっかり仕事し、自宅に戻ってからはメールチェック以外の仕事はやらなくなっていることも関係しているだろう。つまりクリエイティブな作業をPCで行っていないのだ。

 ホビーとしてのPCの用途は大雑把にジャンル別けするとネット(Web、メール、YouTubeなど)、音楽、写真、動画の再生のみ。多くのPCユーザーも自宅でホビーとして使っている多くの時間は同じではないだろうか。そしてこれらは言うまでもなく、iPadが最も得意とするコンテンツ。

 もちろんこれはクライアントとしてと言う意味であり、例えばMac miniはiPhoneの母艦+iTunesサーバー化、操作はVNCを使用し(モニタもキーボードも接続していない)、DLNAサーバーは以前、記事内で紹介したバッファロー「WZR-HP-G300NH」にUSB HDDを接続しているなど、サーバー用途はPCや多機能NASが別途あった方がコンテンツを共有でき、より便利だ。

 このような環境下にiPadが加わると、ThinkPad T43と比較して写真を見るにしても動画を観るにしても画面が綺麗。しかも軽くて、どこにでも持ち運べ、バッテリーの持ちは抜群だ。

【6月2日追記】初出時に現行のノートPCでIPS液晶搭載のものはないという記述がありましたが、誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。

 サクッと瞬時に起動し、ちょっとしたメールの返事やサイトの閲覧などはiPhoneが便利なのだがやはり画面が小さい……と、双方のマイナス面を見事に補完。そうこうしている間にどちらも使わなくなってしまった。

 唯一現在のOSはシングルタスクなので、ネットしながらSkypeが出来ないなどの欠点はあるが、そこは筆者の場合iPhoneをSkype端末にしてしまえば問題無し。もともと電話の形をしているので通話もし易い。騒ぎになっているFlashコンテンツが再生できない件は、昔から個人的にFlashは好きではないので気にならない(GyaOのSilverlightも観れないが……)。

 もう1つ、iPadは日本固有のワンセグや地デジに対応していないことがあげられる。ワンセグに関しては、ソフトバンク「TV&バッテリー」のiPad対応版が出れば何とかなりそうだが、地デジはWi-Fi経由だと転送レート的に厳しい。USB経由で技術的には可能だと思われるものの、iPadにケーブルを接続すると、ポータビリティが薄れてしまう。主に室内で使うのであれば専用機で観る方が無難だろう。

●最強のコンテンツビューア

 以上のようにiPadは、ハードウェア的には「単に大きく速くなったiPhone/iPod touch」なのだが、その大きさが心地よいほどジャストサイズ。またノートのように操作する感覚は、従来のPCでは味わえない独特の世界観だ。クリエイティブな作業をしない限り、普段はこれ1台で済んでしまう人も多いだろう。少なくともコンテンツビューアとして使う限り最強、コストパフォーマンスも抜群だ。

 唯一の弱点であるシングルタスクも既にOS 4.0が発表され、今年中にはマルチタスク対応となる。そうなると、ますますPC離れが加速する可能性も考えられる。

 次回は、キーボードやiPad Camera Connection Kitなど、周辺機を接続するレポートをお届けする。